医師に試してほしいお薦め最新アプリ

第2回 今すぐ使えるリファレンスアプリ

堀永 弘義(ヘルスハッカー・薬剤師)

堀永 弘義(ヘルスハッカー・薬剤師)
東京薬科大学薬学部卒業後、渡米。2009年 ニューヨークにtlapalli, Inc を設立。医療アプリをメインに制作している。ハワイ、ニューヨーク、日本を中心に、ヘルスケアガジェット・アプリを広めるエバンジェリストとしても活動中。著書に電子書籍「薬剤師とiPad」(toyaku.com、共著)、書籍「絶対使える医療系iPadアプリ300」(エクスナレッジ)など。

最近、病院内でiPhoneを白衣の中に入れている医師が多く、iPad miniを持ち歩いている人もたくさんいます。さらに上級者になると、iPadを白衣に忍ばせている医師も。 訪問診療もさかんな昨今、いつものデスクの環境をそのまま外に持ち出せれば最善ですが、それができなくとも膨大なリファレンスをiPhoneやiPadに入れて持ち出せることはとても意味のあることです。医療情報は常にアップデートされていくものであり、アプリという形で常に最新の情報を使用できることもありがたいことですね。 曖昧な情報の裏付けにもなり、リファレンスツールを常に持ち歩くことで、若い医師も自信を持って診察・診断ができるでしょう。

「医師に試してほしいお薦め最新アプリ」、第2回目の今回は、すぐに役立つ「リファレンス」アプリを紹介します。

 

病名がこれひとつで丸わかり

商品名
病名さん
価格
無料
開発会社
東京大学医学部附属病院企画情報運営部
使用できるデバイス
iPhone、iPad、Android
商品名
病名さん
価格
無料
開発会社
東京大学医学部附属病院企画情報運営部
使用できるデバイス
iPhone、iPad、Android

 

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ICD10コード・交換用コード・傷病名コード・管理番号を一覧で見ることができ、ICD10国際疾病分類の一覧も参照可能です。部分一致・完全一致・前方一致・後方一致など、調べたい病名のキーワードを絞り込むことで、検索結果へたどり着きやすくなります。
東京大学医学部附属病院が制作しているところも注目すべき点。情報の信頼性という意味では、ネームバリューの大きい場所が責任を持って作ってくれているのがすばらしいですね。2012年に制作されたアプリですが、今年1月にもデータのアップデートがされていて、最新の情報を使うことができます。これからも末永く情報を管理・提供されることを期待します。

iTunes App Store

iOS版ダウンロード

Android OS

Android OS版ダウンロード

 

すぐに重要なエビデンスを確認できる

商品名
SmartGuideline
価格
無料
開発会社
Allm Inc.
使用できるデバイス
iPhone、iPad
商品名
SmartGuideline
価格
無料
開発会社
Allm Inc.
使用できるデバイス
iPhone、iPad

 

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学会や、団体などが発行している、疾病や検査などのガイドラインに素早くアクセスできます。pdfの書類として見ることができるものが多く、オリジナルそのままの形で読むことができることも魅力です。
EBM(Evidence-based Medicine、根拠に基づいた医療)において、重要なエビデンスをすぐに確認できるのは心強いことではないでしょうか。英語環境にも展開している点がすばらしく、日本国内だけでなく、英語圏の人々も同じ情報を使用できます。 こちらは、東京慈恵会医科大学との共同開発で、Webサイト版もあるので、Androidを持っている人もブラウザからアクセスできます
http://smartguideline.com/

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iOS版ダウンロード

 

菌の識別と同定に便利なアプリ

商品名
グラム染色アトラス
価格
無料
開発会社
一般財団法人太田綜合病院
使用できるデバイス
iPhone
商品名
グラム染色アトラス
価格
無料
開発会社
一般財団法人太田綜合病院
使用できるデバイス
iPhone

 

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53種類もの菌について、染色後の菌の顕微鏡写真が倍率とともに表示されます。識別ポイントが書いてあり、勉強用途としても使えるアプリです。
そして、もうひとつのポイントは、各菌の名前が音声ファイルとして収録されているため、発音を聞くことができること。難しいラテン語の綴りや発音も、この機能により理解しやすくなります。履歴やお気に入りなどの機能はなく、全体的にシンプルなアプリではありますが、一部の人にとってはとても有効活用できるものです。
こちらは大学病院ではない、福島県・太田綜合病院の附属太田西ノ内病院が制作しています。ぜひ、制作スタッフの発音担当のスピーカーサインを押してみてください。イースターエッグが隠されています。

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自分専用の検査リファレンスツール

商品名
SRL検査項目レファレンス
価格
無料
開発会社
SRL,Inc
使用できるデバイス
iPhone、iPad、Android
商品名
SRL検査項目レファレンス
価格
無料
開発会社
SRL,Inc
使用できるデバイス
iPhone、iPad、Android

 

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臨床で使われている検査を網羅しており、検査の基準値をすぐに参照することができるアプリです。50音順にすべてを見ることも、カテゴリ別に調べる方法もあります。「容器を見る」というリンクでは、どういった容器が実際に使われているかが写真入りで表示されるため、これを見ることで医療過誤などを防止できるでしょう。所要日数や、実施料、判断料などの詳細のほか、検体取り扱い方法が細かく表示されます。
自分のよく使う検査項目をお気に入りに登録しておけば、その人専用の検査リファレンスツールが出来上がります。

iTunes App Store

iOS版ダウンロード

Android OS

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世界中の医療画像が集まる

商品名
Figure 1 - 医療従事者のための医療画像共有
価格
無料
開発会社
Figure 1, Inc.
使用できるデバイス
iPhone、iPad、Android
商品名
Figure 1 - 医療従事者のための医療画像共有
価格
無料
開発会社
Figure 1, Inc.
使用できるデバイス
iPhone、iPad、Android

 

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アプリという形で初めて実現できた、21世紀型のリファレンスツール。医療者が匿名性を保持したまま医療画像を投稿し、まれな症例などを共有します。レントゲン画像や、人体の病気の部位、医療機器まで、医療に関する画像がたくさんアップロードされています。
膨大な情報が寄せられ、それを議論したり、説明したり、医療者の交流の場にもなっています。言ってみれば、wikipediaの医療画像版のようなものですね。
一人ひとりが「未来に向けてリファレンスを作っていく」という感じでしょうか。世界中の人が参加しているため、年齢、人種、性別を問わず、たくさんの画像を見ることができるのは、地球規模の財産でしょう。英語でのやり取りになりますが、参加してみる価値はあり。

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iOS版ダウンロード

Android OS

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今回紹介したものは、無料で使えるという点も大きいです。医学辞書になると数万円するものもたくさんあるなかで、無料で使えるというのはかなりのコストダウンです。個人として使用しても、病院単位で使用しても、かなり大きな金額の違いです。
もうひとつ注目してもらいたい点は開発者。紹介したうち、3つのアプリは病院が制作しています。病院が教育する対象は狭い意味で言うとその病院内にいる人のみでしたが、こういったアプリを発信することにより、その広がりはほぼ全国の医療者が対象になります。これは「すべての医療者の質が良くなればこの国の医療の質が良くなる」ということを意味しています。閉ざされた場所だけではなく、こういったアプリを使えることに感謝したいですね。

感想や取り上げてほしいアプリなど、記事に対する皆さんからのフィードバックをお待ちしています。下のコメント欄より、ぜひ皆さんのご意見をお寄せください。

 

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