「コミュニケーションの棚」から、おススメの一冊をご紹介! 医師のためのビジネス選書

リーダーの仕事は「正しく見る」ことから始まる。
キヤノン電子のカリスマ社長が教える、組織を強くする原則

『見抜く力 -リーダーは本質を見極めよ』 酒巻 久・著 朝日新聞出版
1512円 2015/9/18

故スティーブ・ジョブズ氏や孫正義氏とも親交があり、長年赤字体質に甘んじていたキヤノン電子を、売上高経常利益率10%超の高収益企業に変貌させたカリスマ社長が、リーダーのための「本質の見抜き方」を、自身の経験に基づく豊富な事例をもとに解き明かします。

内容詳細

リーダーに求められる「見抜く力」

 リーダーシップに言及した本は数知れないが、本書は、リーダーに求められる様々な能力を、一貫して「見抜く力」という切り口で論じている点で、新しいリーダーシップ論となっている。
  リーダーは何を見抜かなければならないか。赤字の会社なら、なぜ利益が出ないか、「問題の本質」を見抜かねばならない。組織は人で動く。であれば強い組織を作るには、「人間の本質」を見抜く必要がある。時代の変化に適応できなければ生き残れないが、動くべき時と動いてはいけない時を見抜けないリーダーが、どうして正しい舵取りができるだろうか……。本書は、こうした「見抜く力」をどのように身につけるか、著者自身の経験を軸に解説している。
  著者の酒巻氏は、キヤノン本社の生産本部長から、経営再建のために子会社のキヤノン電子社長に就任、長年赤字体質に甘んじていたキヤノン電子を、数年で売上高経常利益率10%超の高収益企業に成長させた手腕で知られる。

 

知識と経験の積み重ねで身につく洞察力

 著者によれば、「見抜く力」とは洞察力や見識であり、それを身につけるには深い知識(知恵)と正しい経験の積み重ねが求められる。したがってリーダーたるもの、多忙でも勉強を怠ってはならない。著者自身、熱心な読書家だが、読書の際は大事な箇所に線を引き、それをスマートフォンで撮影、あとでノートに手書きでメモするという作業を勤勉に行っている。
  こうして身についた洞察力は、たとえば財務体質悪化の真の原因は「人」にあることを見抜く。そこで経営再建にあたって著者はまず、社員の心を動かすことから着手する。さらには業績不振の会社の経営陣の多くは、変化を嫌い、保身に熱心であることも著者は経験から知っている。それゆえ、著者はキヤノン電子に着任するにあたって、親会社の社長に一つの条件を出している。それは、社長宛に匿名の投書が来たら、開封せずにそのまま著者に渡すというものだ。案の定、著者の追い落としを狙った中傷の手紙が次々と親会社の社長のもとに届いたという。見事な洞察力といえよう。

 

先を読むための謙遜で勤勉な努力

 時代の変化に柔軟に対応する上で、成功体験は障害となりやすい。したがって、新製品を開発したら、まず最初に「どういう製品が登場したら、この製品は売れなくなるか」を考えるべきである。自社製品に取って代わる製品を事前に予測しておくなら、成功による「慢心」を避けることができる。
  ではどうすれば予測できるか。自社製品に取って代わるような製品を過去に開発しようとしたケースがなかったかを、10年前、20年前に遡り、業界紙や特許情報などに当たって調べることだ。過去に同様のコンセプトを持ちながら実現できなかった事例に99%の確率で出会うという。当時は幾つかの条件が揃わずに失敗に終わったが、現在、あるいは数年後にはそれが揃うなら、早晩、自社製品は市場から淘汰されると予測できるわけだ。
  リーダーのカリスマ性は、天賦のものと思いがちだが、謙遜さと勤勉な努力の賜物なのだと、本書を読んで改めて教えられる。

 

(文・情報工場

 

情報工場
厳選した書籍のハイライトを3000字にまとめて配信する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP(セレンディップ)」を提供。日本語未翻訳の海外の話題の書籍も日本語ダイジェストで紹介。上場企業の経営層・管理職を中心にビジネスパーソン約6万人が利用中。

 

目次

  1. 1. 利益が出ない原因を見抜く
  2. 2. 人間の本質を見抜く
  3. 3. 自分と会社の強み、弱みを見抜く
  4. 4. 時代の変化を見抜く

◎著者プロフィール

酒巻 久
キヤノン電子株式会社代表取締役社長。1967年キヤノン株式会社入社、VTRの基礎研究をはじめ複写機、ワープロの開発、総合企画等に携わり96年常務取締役生産本部長。99年に現職に就任、財務体質の悪化に苦しむキヤノン電子を数年で高収益の優良企業へと変貌させる。『椅子とパソコンをなくせば会社は伸びる!』(祥伝社)『リーダーにとって大切なことは、すべて課長時代に学べる』(朝日新聞出版)など著書多数。
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