「コミュニケーションの棚」から、おススメの一冊をご紹介! 医師のためのビジネス選書

「オリンピックに行きたいか?」。中学2年生の北島康介にかけた、この一言から全ては始まった。

『見抜く力』-夢を叶えるコーチング 平井 伯昌・著 幻冬舎
778円 2008/11/1

北島康介、中村礼子というまったくタイプの違う二人の選手を、2大会連続のオリンピック・メダリストに育て上げた平井伯昌コーチ。選手の「才能」を見抜くのではなく、それぞれの「特性」を見抜くことの重要性を説く「成功への指導法」について語ります。

内容詳細

見抜くのは「才能」ではなく「特性」

 平井伯昌コーチといえば、北島康介選手を指導し世界のトップ・アスリートに育て上げた「名伯楽」としてよく知られている。周知のように北島選手はアテネ、北京オリンピックの2大会連続・2種目の金メダルを獲得。同じく中村礼子選手も同コーチの指導のもとで、2大会連続の銅メダルに輝いた。
 本書は、その名伯楽が、どのように北島康介はじめ中村礼子、上田春佳といった選手を、世界と互角に戦えるまでに育て上げたか、その「成功への指導法」を、エピソードを交えながら平井氏自身が語ったものである。
 「名伯楽」とは一般に、隠れた才能を見抜く人のことを言う。だが平井コーチの場合、見抜くのは「才能」ではなく、その選手の持つ「特性」、とりわけ「精神的特性」だという。企業など組織のリーダーが学ぶべきはこの点だろう。与えられた部下は必ずしも「有能」ではなく、個性はさまざま。その部下たちを「有用」な人材に育てるのがリーダーの責務だからだ。

 

北島康介の「目力」に賭ける

 2000年のシドニー・オリンピックに向けた育成選手を選考するにあたり、平井コーチが強く推したのが、当時中学2年生の北島康介だった。「なんで北島なんだ?」という声が他のコーチ陣から上がる。痩せていて、水泳選手としては身体が硬く、記録も特に目立つものではなかったからだ。
 だが、平井コーチが見ていたのは身体や記録ではなく、彼の「目」だった。試合になるとガラリと変わる目。コーチの話をじっと聞く時の真剣な目。目標を決めたらクリアするまで諦めない精神力の強さを、その目の輝きに見た平井コーチは、彼の「目力」に賭けてみたい、と思ったという。
 北島選手は、瞬発力で一気に爆発的な力を出す。そのため練習ではあえてセーブさせることもある。一方、常に叱咤激励されないと頑張れないタイプの中村選手の場合は、制限記録を設定し、クリアできるまで何度もやり直させる。大切なのは各選手の「精神的特性」を見抜き、それに合わせた指導なのだ。

常識や固定観念を突き崩す勇気

 平井コーチが常に北島選手に要求していたのは、「ふつうの人間と同じ価値観ではないものを、勇気をもってやる」ということ。たとえば当時の北島選手は、レース前半が得意で後半が苦手だった。常識では後半の失速を避けるために前半をセーブすることを考える。だが平井コーチは、短所にはまず目をつぶり「後半はどうなってもいい、100の前半を29秒で入ろう」と、当時の世界記録レベルの目標を掲げ、実際に29秒で泳げるようになると、次は28秒、27秒と目標を上げていった。前半を飛ばすのは、闘争心むき出しの北島選手の特性にぴったりなのだ。そして「いいか、おまえは前半がいいときは、後半もいい」。だから前半のいい泳ぎを後半も続けよう、と励まし続けたのである。
 常識や固定観念を突き崩すには勇気が求められる。選手(部下)がその勇気を持つには、コーチ(リーダー)に対する絶対的な信頼が不可欠である。そしてコーチが信頼されるためには、コーチ自身が選手を信頼する必要があることを本書は教えている。

 

 

(文・情報工場

 

情報工場
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目次

  1. 1. 五輪の栄光
  2. 2. 選手から指導者の道へ
  3. 3. 見抜く力
  4. 4. 人を育てる
  5. 5. 水を極める
  6. 6. 夢を叶える

◎著者プロフィール

平井 伯昌
日本水泳連盟理事、競泳日本代表ヘッドコーチ。1963年東京都生まれ。小学校1年から水泳を始める。早稲田大学社会科学部に入学し、水泳部に所属するが、部の事情で選手からマネージャーに転向、コーチングの妙味を知る。卒業後、東京スイミングセンター入社。96年から北島康介選手の指導にあたる。2004年アテネ、08年北京オリンピックで北島選手に2大会連続の2種目金メダル、中村礼子選手に2大会連続の銅メダルをもたらす。

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