「コミュニケーションの棚」から、おススメの一冊をご紹介! 医師のためのビジネス選書

仕事がわかる。野球がわかる。そして人生がわかる。

『師弟』 野村 克也・著 講談社
1404円 2016/4/12

独自のID野球でヤクルトスワローズを4度のリーグ優勝、3度の日本一に導いた野村克也元監督。そして同球団で入団から4年間指導を受け、2013年に現役引退をした宮本慎也元内野手。元名監督と元名選手が、他職種の仕事のヒントにもなる野球論、人生論を語ります。

内容詳細

「野村メモ」を必死で書き留める

 長い日本のプロ野球の歴史の中で「名監督」と認められる人は何人かいるが、おそらく野村克也氏の名前が外れることはないだろう。南海ホークス選手兼任監督から始まり、ヤクルト、阪神、楽天の監督を務めた。とくに9シーズンを戦ったヤクルト時代には4度のリーグ優勝、3度の日本一と同球団の黄金時代を築いている。
 2013年に惜しくも現役引退した宮本慎也氏は、1995年にヤクルトに入団し、4年間野村監督の薫陶を受けた。宮本元選手はショート(遊撃手)の“名手”として知られ、2000本安打を達成し野球の殿堂入りを果たしている。
 宮本氏によれば、当時の野村監督はミーティングを重視し、その際に自ら書き溜めていた「野村メモ」の内容を選手に伝えていった。ホワイトボードに書かれるその内容を宮本氏は必死にノートに書き留めていた。本書は、そのノートをもとに宮本氏、野村氏の両名がそれぞれの野球論、人生論を語ったものだ。

 

監督の言葉が「頭のストレッチ」に

 野村監督のミーティングでは、野球以外の話が多かったという。哲学者ニーチェの言葉、心理学者マズローの「欲求五段階説」、小説家・吉川英治の名言など、さまざまな知識と「言葉」を伝えた。
 当時の宮本選手は、野村監督に「野球とは?」と問われ、「頭のスポーツです」と答えたそうだ。確かに野球は一球、一打席ごとに「考える」ことが要求される。監督やコーチも考えるが、選手自身も考える。プロのレベルになると、技術の差よりも、各々が「いかに適切に考えるか」で勝敗が決まるのではないだろうか。宮本氏は、ミーティングでの監督の言葉が「頭のストレッチ」になったと語っている。
 また両氏とも「マイナス思考」の重要性を強調する。彼らの言うマイナス思考は、危機管理の思考を指す。「野村メモ」には「投手はプラス思考、捕手はマイナス思考」とある。捕手は投手が困ったら助ける立場ということだ。プラスとマイナスだから「バッテリー」なのだという。

 

野村野球はプロセスと根拠を重視

 野村監督は「プロセス」と「根拠」を重視した。「野村メモ」には「失敗する恐ろしさより、いい加減にやって成功することの方が、もっと恐ろしいのだ」とあるそうだ。また、宮本選手に「根拠があれば、俺は見逃し三振をしても怒らない」と言ったという。スポーツは「結果がすべて」と言われることが多いが、野村監督はあえてその結果に行き着く過程を見ながら選手を育てたのだ。
 また、野村監督は「ID野球(データ重視の野球)」で知られるが、選手を数字でがんじがらめにするようなことはなかった。むしろ逆で、大事なポイントだけを示して、あとは選手に自由にやらせてくれたそうだ。監督が伝えるのは、具体的な作戦ではなく「方向性」や「考え方」だったという。ビジネスリーダーが事細かに戦術を指示するのではなく、「ビジョン」を与えるのと一緒だ。それに加え、各々が考える材料としてID(Important Data)を示したのだろう。

 

 

(文・情報工場

 

情報工場
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目次

  1. 1. プロセス重視
  2. 2. 頭脳は無限
  3. 3. 鈍感は最大の罪
  4. 4. 適材適所
  5. 5. 弱者の兵法
  6. 6. 組織
  7. 7. 人心掌握術
  8. 8. 一流とは

◎著者プロフィール

野村 克也
1935年、京都府生まれ。南海ホークス(現・福岡ソフトバンクホークス)に入団後、65年に戦後初の三冠王に輝く。70年から選手兼任監督。80年に45歳で現役を引退。90年にヤクルトスワローズの監督に就任。阪神、楽天の監督などを歴任。
宮本 慎也
1970年、大阪府生まれ。PL学園から同志社大、プリンスホテルを経て、95年、ヤクルトスワローズに入団。アテネ五輪、北京五輪日本代表主将。13年に42歳で現役を引退。

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