「コミュニケーションの棚」から、おススメの一冊をご紹介! 医師のためのビジネス選書

「リスク要因の先取り」「部下の育て方」
あらゆるビジネスに応用できる
JAXA(ジャクサ)の仕事術!

『宇宙に挑むJAXAの仕事術』 宇宙航空研究開発機構・著 日本能率協会マネジメントセンター
1620円 2014/3/15

宇宙事業に関わるJAXAでは、ヒューマンエラーは宇宙飛行士の生死に直結します。そうした緊張感のなかでJAXAのメンバーが普段どのように仕事をしているのか、管制員から研究員まで13名に徹底取材し、その仕事術を明らかにします。

内容詳細

リスク要因を洗い出して対策を取る

 宇宙航空研究開発機構(JAXA:ジャクサ)では、リスク要因の洗い出しに「”What if ?” Games」と呼ばれる手法を用いている。新しい装置を開発する際、「もしかしたらこんなことも起きるんじゃないか」(=What if ?)という意見を出し合い、隠れたリスクを「見える化」するのだ。
  例えば「船内保管室」を宇宙に打ち上げたときのこと。船内保管室はスペースシャトルに載せて打ち上げるのだが、宇宙空間で装置内の冷却水が凍結するのを防ぐため、スペースシャトルの電源を利用して保温することになっていた。しかし、開発完了前に「もしシャトルからの電力供給が切れたらどうするのか?」という”What if ?”が出された。最終的にもう一系統の電源を確保し、船内保管室は無事に「きぼう」日本実験棟に取り付けられた。
  どんなに小さなリスクでも事前に対策を立てておくことが、結果的に大事故を防ぐ。できるだけ多くの人の視点で検証し、「想定外のリスク」をつぶしていくことが重要だ。

 

「任せて育てる」が飛躍的成長の近道

 有人宇宙技術センター・開発員の末廣知也氏は入職2年目で、NHKが放映したテレビ番組への技術協力を任され、超高感度4Kカメラを国際宇宙ステーション(ISS)に打ち上げるプロジェクトを成功させた。彼をフォローした入職15年目の中野屋壮吾氏はまず、「どんな細かいことでも言いなさい。言えば、私の責任にもなるから」と「報・連・相」を徹底させた。さらに、末廣氏自身で「何がベストか」を決めて周りを説得させるようにした。
  JAXAでは若手に対し、判断するための道筋は教えるが正解は教えず、責任を持って判断させる方法で、プロジェクトマネージャーが果たすべき役割を学ばせていく。失敗し、トラブルに見舞われながらも、組織を背負って交渉した経験は若手職員の自信となり、飛躍的な成長の機会となる。上司は判断を部下に委ね、危ないところだけを指摘して道筋を示し、フォローしながら「見守る」姿勢が重要なのだ。

 

「深く広く」のゼネラリストを育成

 一人の人材を、広範囲な知識や技術を持つゼネラリストに育てるか、専門分野を深めていくスペシャリストに育てるかは、組織における人材育成の課題である。
  その点JAXAでは、意図的にゼネラリストを育成しており、そのために管理職以外の職員にもプロジェクトのマネージメントを任せる手法をとっている。プロジェクトを一人で動かすには、プロジェクト全体を管理するための知識や技術が必要となる。例えば、電気や機械工学の知識がなければ発注先のメーカーから提出された設計図面を評価することはできない。他方でNASAのタフネゴシエーターと渡り合うための交渉力なども求められる。
  「浅く広く」ではなく、「深く広く」がJAXAのゼネラリストの特徴だ。一人ひとりがゼネラリストならば、各プロジェクトで知恵を出し合い、他のメンバーをフォローすることもできる。「深く広く」のゼネラリスト人材が増えれば、組織としてのパフォーマンスは飛躍的に向上するのである。

 

(文・情報工場

 

情報工場
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目次

  1. 序. 宇宙に挑む仕事
  2. 1. ミスを防ぐ
  3. 2. 人を育てる
  4. 3. 情報を活用する
  5. 4. 組織力を上げる
  6. 5. 一体感を強くする

◎著者プロフィール

宇宙航空研究開発機構(JAXA)
2003年10月、宇宙科学研究所(ISAS)、航空宇宙技術研究所(NAL)、宇宙開発事業団(NASDA)が一つになり、宇宙航空分野の基礎研究から開発・利用に至るまで一貫して行うことのできる機関として誕生。「空へ挑み、宇宙を拓く」というコーポレートメッセージのもと、人類の平和と幸福のために役立てるよう、宇宙・航空が持つ大きな可能性を追求し、さまざまな研究開発に挑んでいる。
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