日本は安すぎる!? こんなに違う世界の治療費

日本の医療費は年々増加を続け、厚生労働省は2015年9月に医療費が40兆円を突破したと発表しました。GDPに占める医療支出割合も、OECD諸国中8位と平均を上回り、医療費の削減は今後の課題です。
しかしながら、日本の自己負担の割合は14%と、OECD平均の19.5%を大きく下回りました。日本は「医療支出は多いけれど、国民の自己負担は少ない国」のようです。

日本国民の医療費負担が少ないのは、公平・平等に医療を提供するという国民皆保険制度のおかげです。一方、海外では日本より自由診療の分野が広く、混合診療が禁止されていない国も数多くあります。では、そんな海外の医療費はどうなっているのでしょうか。救急車の利用、盲腸(手術)、一日あたりの入院費で見ていきましょう。
世界の医療費_図 (2)_02

 

救急車は有料が基本、処置内容でも料金が変更

日本では救急車の利用は無料。そのせいか、近年は緊急性のない不要不急の出動が問題となっています。東京消防庁によると、平成27年度に救急搬送された人のうち、医師が軽症と判断したケースは54.1%。半数以上が入院を要さない状態でした。一回あたりの出動には実は約4万5000円のコストがかかっており、財務省では救急車の有料化が検討されています。

諸外国の救急車は有料が一般的で、「車内での処置内容」や「呼んだ理由」によっても料金が変わることがあるそう。少し変わったところだと、タイには公営の救急車がなく、すべての私立病院に救急車が整備されています。必要な場合は病院に直接電話して出場を要請するそうで、そのため病院によって3,700~7,300円と料金に開きがあります。
概ね、どこの国でも民営の場合は公営より料金は高いですが、到着までの時間が短い、搬送先が選択できるなどの利点があります。

アメリカを例に見ると、州によって多少の違いはありますが、基本料金の他に距離加算があり、1回の出動で5.5万円程度が相場のよう。救急車には「Basic Support Ambulance」と「Advanced Life Support Ambulance」の2種類があり、Advancedの場合は車内に高度な治療ができる設備が整っています。ただし、どちらが出動するかは救急車側の判断。
高額のためか、急病人が出て周囲が救急車を呼ぼうとすると、「お願いだからタクシーを呼んでくれ!」と急病人自身が懇願したなどという例もあるそう。ちなみに、付き添いの同乗者にも料金がかかります。

1990年代、欧米でも日本のように救急車のタクシー利用や救急外来の通常利用が問題になったことがあります。議論は需要があるのに受け入れられない体制という結論に達しました。
軽症患者の受け入れを拒否する、救急車の適正利用を促すといった方法よりは、忙しい時間帯のスタッフ数を増やしたり常に入院のベッド数に余裕をもたせたりといった対策が、医師の負担を軽減し、医療機関の経営改善にもつながると考えられているようです。

 

高すぎる手術費と短すぎる入院日数

ご存知の方も多いでしょうが、急性虫垂炎は急性の腹痛で受診する人のなかで最も多い病気とされています。日本では15人に1人が急性虫垂炎を経験するといわれ、10~20代の患者が多く、6歳以下の子どもの発症も多い病気です。

手術治療については、日本の40万円に対し、表の各国とも高額な傾向があります。中国は比較的安いようですが、実際には医師のレベル加算があり、「紅包」と呼ばれる医師への賄賂が常態化しているという現実もあるため、実際に負担する額はより高額な可能性が否定できません。
同じく安価なタイでも、私立病院だと通常の3倍、通称「5スター病院」と呼ばれる富裕層向けの病院では5倍にのぼることも。

欧米では100万円以上の国が多く、アメリカではなんと日本の5倍の200万円以上。オバマケアが成立したとはいえ、国民皆保険ではないアメリカで200万円以上となると、民間の医療保険に加入していなければとてつもない支払いが待っています。苦しんでいる患者に支払い能力を確認しなくてはならないのは、医師としても心苦しいことではないでしょうか。
多くの人が経験する病気なだけに、治療費が高額なのは困りものですね。

表を見ると、日本では虫垂切除術の場合、腹腔鏡手術だとして最低でも4日程度、開腹の場合は7日程度の入院が必要となっていますが、世界では2~3日が平均のよう。
入院費にもかなりばらつきがあります。1日入院しただけで個室でなくても5万円以上かかる国もあり、なかには10万円以上も請求される国も。

「病院は急性期を過ごすもの」という考えが念頭にあるようで、病院でしかできない治療が終われば即退院、というのが一般的です。世界で見ると、日本のように術後ケアまで同じ病院で行う国の方が少数派のようです。退院後の生活に不安があれば、リハビリ施設や福祉施設のようなところに入所したり、介護士や看護師を派遣してもらって在宅ケアを受けたりします。

 

日本の高度医療は医療者の負担で成り立っている!?

日本の医療費は提供する医療レベルや高齢化率を考えれば非常に安価。同じ治療でも、先進国と比較して1/2以下の金額で受けることができます。 先進国では国民皆保険制度が整っている国が多いため、大体は自己負担額はまったくないかほとんどなく、旅行者でなければ高額な医療費を恐れる必要はないようです。ただし、予約から受診までに1カ月近く待たされるなどという国も少なくなく、日本と同じように自己負担が少ないといっても、同様の治療を受けられるわけではありません。

日本の医療保険制度の特徴は国民皆保険とフリーアクセスです。これによって全国民がいつでもどこでも、所得に見合う費用で良質な医療を受けることができます。健康指標も上位を占め、2000年にはWHOから総合点で世界一と評価されました。

しかし、世界一と評された日本の医療も、「コンビニ診療」をはじめ、平均受診回数の多さや入院日数の長さなど、さまざまな課題があります。日本の人口千人あたりの医師数は、OECDの対象34カ国中で28位と少ない部類。看護師数は11位とまずまずの数字ですが、高齢化率がトップなことを考えればやはり少ない印象です。
それでも国民が世界一の医療を享受できるのは、少ない人員でハイレベルな医療を担う、医療従事者の皆さんのおかげと言わざるを得ません。高額な医療費のために患者が気軽に受診できない国と、気軽に受診できるがために医療者の負担が大きい国。今後、日本を含め世界の医療制度がどう変わっていくのかが気にかかります。

(文・エピロギ編集部)

<参考>
厚生労働省「医療保障制度に関する国際関係資料について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken11/
OECD「OECD Health Statistics 2015」
http://www.oecd.org/health/health-systems/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E-Country-Note-JAPAN-OECD-Health-Statistics-2015-in-Japanese.pdf
岡山県地域医療支援センター「OECD諸国 医師数・看護師数の国際比較」
http://chiikiiryouokayama.wix.com/centerokayama#!links/c1yng
外務省「世界の医療事情」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/
東京消防庁「平成27年度中の救急出場件数が過去最多を更新」
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-kouhouka/pdf/280127.pdf
トリップアドバイザー「世界の救急医療事情」
http://tg.tripadvisor.jp/119/
i保険「世界の医療事情」
http://www.i-hoken.jp/travel/wmedical/
価格.com保険「海外の医療費」
http://hoken.kakaku.com/insurance/travel/select/cost/

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