「コミュニケーションの棚」から、おススメの一冊をご紹介! 医師のためのビジネス選書

論理的・分析的思考よりも重要な問題解決法があった。ホワイトハウス、米空軍省で導入の理論。

『「洞察力」があらゆる問題を解決する』 ゲイリー・クライン・著 フォレスト出版
1836円 2015/11/5

他の人がなかなか気づけない「見えない問題」を見抜く「洞察力」に優れた人がいます。その力を磨くにはどうしたらいいのでしょうか? 米空軍勤務経験のある認知心理学の大家が、困難な問題を解決に導く「見えない問題を見抜く力」の正体に迫ります。

内容詳細

120の体験談などをもとに分析

 一般的に、ビジネスにおける問題解決や意思決定は、過去のデータや経験知を分析し、論理的な推論に基づいて行われることが多く、それがもっとも確実な方法と考えられている。しかし、こうした分析的思考には限界があると本書で著者は指摘する。それでは「見えない問題を見抜く」ような創造的な解決には至らないというのだ。
   本書では、他の誰もが思いつかない解決法を見出す「見えない問題を見抜く力(洞察力)」を伸ばすメソッドを解説している。著者が収集した120ほどの体験談など具体的事例を分析し、「見えない問題を見抜く力」を5つに分類。さらにそれを「発見への3つのプロセス」に整理し、実践的な手法を詳しく紹介している。
   本書に描かれた理論を導き出した手法は「現場主義的意思決定(NDM理論)」と呼ばれる。実験室の中で人工的にあつらえられた課題を被験者に考えさせるのではなく、現実の現場でどのように考えるかを探る方法論である。

 

つながりや偶然の一致から見抜く

著者が見出した「見えない問題を見抜く方法」は以下の5つだ。
  (1)出来事のつながりから見抜く方法
  (2)出来事の偶然の一致から見抜く方法
  (3)好奇心から見抜く方法
  (4)出来事の矛盾から見抜く方法
  (5)絶望的な状況における、やけっぱちな推測による方法

 (1)は、目の前の出来事に、過去の経験や他の場所での出来事をつなげて考える、言わばオーソドックスな方法だ。(2)は、因果関係のない複数の出来事が“偶然”に一致した時、そこに何らかの意味を見出すこと。(3)はさまざまなことに好奇心をもつことによって、洞察のきっかけをつくることだ。
 (4)は、二つの出来事が矛盾した時に、その矛盾がなぜ生じたかを考えること。(5)は、八方ふさがりで追い詰められた時に、ある種の閃めきが下りてくることだ。どうしようもなくなった時に人は、これまでの思い込みを捨てざるを得ない。捨てることで新しいアイデアが浮かぶ余地ができるのだという。

 

時間と心の余裕をもつことが大事

 著者は、上記の5つのタイプを分類した後に、「奇妙なこと」に気づく。(4)と(5)は、正反対の力が働いているというのだ。すなわち「おかしなこと」が起きた時に、(4)ではそれに集中する。(5)は逆だ。「おかしなこと」によって窮地に追い込まれたので、それを捨て去る。
   また、残りの(1)(2)(3)は共通する点が多いため、一つのプロセスに統合することができる。そうしてまとめられたのが、下記の「発見への3つのプロセス」だ。
  ・「出来事の矛盾」から発見へのプロセス
  ・「出来事のつながり」「偶然の一致」「好奇心」から発見へのプロセス
  ・「やけっぱちな推測」から発見へのプロセス
   おそらくいずれのプロセスでも、「何かが引っかかる」「なぜか心惹かれる」といった感覚を大事にして「一度立ち止まる」のが前提となるのだろう。時間と心の余裕をもって「立ち止まる」習慣をつけることが、洞察力を得るチャンスを増やすのは間違いない。

 

(文・情報工場

 

情報工場
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目次

  1. 1. 目には見えない問題を見抜くための扉 -問題解決の「引き金」をどう引くのか?
  2. 2. 見えない問題を見抜くための「心の扉」を開ける -私たちを邪魔するものの正体は何か?
  3. 3. 目には見えない問題を見抜く「心の扉」を開け放つ -問題解決法を身につけることができるのか?

◎著者プロフィール

ゲイリー・クライン
米国認知心理学者。1944年ニューヨーク市出身。1969年にピッツバーグ大学で実験心理学の博士号を取得。1989年『現場主義的意思決定(Naturalistic Decision‐Making, NDM)理論』を構築したことで世界的名声を博す。オークランド大学助教授、ウィルバーフォース大学准教授を経て、米空軍省に研究者として勤務。1978年にR&D企業クライン・アソシエイツを創業。2005年に同社を売却。現在、マクロコグニション社の上級研究員。著書に『決断の法則 -人はどのようにして意思決定するのか?』(トッパン)がある。
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