ニッポン病院食堂紀行

【第2回】愛知・名古屋市|新鮮多菜 CAFE&RESTAURANT にんじん

野菜たっぷりの創作料理で、健康づくりを応援

病気と闘う患者さんや医療スタッフを陰ながら支える病院食堂。かつて病院の食堂といえば質素で地味なイメージがありました。しかし、現在はインテリアやメニューの彩りにも気を配り、レストランやカフェのように明るい雰囲気の店舗が全国各地に増えています。一流レストラン顔負けの豪華ランチプレートを提供する店や、スタイリッシュなインテリアが注目される食堂もあり、話題に事欠きません。また、生活習慣病に悩む人が増える現代では、病院食堂の健康的なレシピにも注目が集まっています。本シリーズでは、そんなバラエティ豊かな病院食堂の魅力を紹介します。

今回紹介するのは愛知県名古屋市の南生協病院敷地内にある「新鮮多菜(しんせんたさい) CAFE&RESTAURANT にんじん」。病院職員や患者さん、見舞客はもちろん、「このレストランのご飯が食べたいから」と、一般の方も訪れる人気スポットです。

※記事内の価格はすべて消費税込みの価格です。また、掲載している内容はすべて取材当時のものです。その後変更されている可能性もありますので、ご了承ください。

 

1.南生協病院と新鮮多菜 CAFE&RESTAURANT にんじん

restaurant-ninjin251

南生協病院

 

名古屋市にある南生協病院は、地域の人々の出資と協力により、生協(南医療生活協同組合)が運営を行っている総合病院です。市民が協同で作る「健康なまちづくり支援病院」として、地域で病を癒し、生活を支えることを目指しています。コンセプトは「病院らしい病院であり、病院らしくない病院」。緩和医療や24時間365日の救急対応など医療体制を充実させる一方で、図書館やフィットネスクラブ、バリアフリーな旅のプランを扱う旅行代理店などを併設しています。

今回訪問した「新鮮多菜 CAFE&RESTAURANT にんじん」は、その南生協病院の敷地内にあるオーガニックレストラン。名古屋で30年以上、有機野菜の会員宅配をしている「にんじんCLUB」の食材を使用しています。「健康は畑から届く」という考えの下、農家さんから直接届く有機・無・低農薬野菜をたっぷり使い、昔ながらの製法で作った無添加調味料を使用するなど、徹底的に食材にこだわった創作料理を提供しています。「誰でも願う、ステキに、健康に生きること」をキャッチコピーに、文字通り「医食同源」に取り組み、すべての人の健康づくりを応援するレストランです。

 

2.自然素材を生かしたくつろぎの空間

restaurant-ninjin011

新鮮多菜 CAFE&RESTAURANT にんじん入り口

 

店舗入り口には、有機栽培(一部、無農薬・低農薬)の野菜や果物、瓶に入った色とりどりの豆が並んでいます。

 

restaurant-ninjin195

店内入り口

 

扉を開けると、左官職人さんが手掛けたという、鏝(こて)で描かれた大木が出迎えてくれます。山小屋をイメージした店内には、杉をはじめとする木材が多く使われ温かな雰囲気です。温かいのは雰囲気だけではありません。食事スペースの床を、万が一お子さんや患者さんが転倒してもケガをしにくいよう衝撃を和らげる工法で仕上げるなど、うれしい心遣いが随所に見られます。

 

restaurant-ninjin034

店内風景

 

座席は、テーブル22席、カウンター5席、畳14席があります。テーブルや椅子には無垢材や天然素材が使われており、体に優しく、ほっと落ち着くナチュラルな雰囲気です。

 

restaurant-ninjin018

団体でよく利用される畳席。子ども用の椅子も準備されている

 

1日の利用人数は、病院職員や患者さん、一般客を含めて50~100人程度。そのうちランチでの利用は25~40人程度で、中には県外から病院見学にやって来た人や、団体で利用するグループもいて、さまざまなお客さんが訪れます。親子で足を運ぶお客さんも多く、和室には、子ども用の椅子や絵本が置かれていました。

 

restaurant-ninjin046

通年で利用できるショップスペース。チャリティーショップコーナー「Re☆ショップおおだか」も併設しており、市民の方から寄付されたリユース品が並ぶ

 

店内にはショップスペースもあります。「にんじんCLUB」で扱っている食材や調味料、オーガニック・ベジタリアン対応のお弁当などを販売。数量限定のお弁当は化学調味料や合成添加物を一切使っておらず、すべて手作りです。
レストランの料理に使われている野菜や調味料も扱っており、家庭でも同じメニューに挑戦できます。食生活や食材の選び方を見直すきっかけにしてほしい、という願いを込めて販売しているのだそうです。スタッフには食材選びのスペシャリストもいるため、気軽に相談できるのも魅力です。

病院の待ち時間に利用するお客さんもいて、「気分転換になる」「商品の入れ替わりが早いので、行くのが楽しみ」と大変好評とのことです。

 

restaurant-ninjin037

店内の壁に掲げられた「健康は畑から届きます」のプレート

 

また、実際に野菜を栽培している農家さんに会えるイベントを企画するなど、「安全安心」な食材を「楽しくおいしく」食べてもらうための取り組みも盛んです。

 

3.家族みんなで楽しめるバラエティ豊かなメニュー

にんじんでは、モーニングタイムとランチタイムでメニューが分かれています。9時30分からのモーニングでは、ドリンクを注文すると、国産小麦とホシノ天然酵母を使用した食パンに、季節の無・低農薬フルーツと、種子島のきび砂糖を使って作った自家製ジャムがサービスで付いてきます。モーニングで有名な名古屋ならではのサービスですね。

11時からのランチタイムでは、プレートランチやカレーなど、さらにお腹と心が満たされる料理が楽しめます。

 

走る豚ロースの塩麹グリルランチ、米粉のベジカレーランチ

restaurant-ninjin074

ランチメニュー(走る豚ロースの塩麹グリルランチ、米粉のベジカレーランチ)

 

「お肉も食べたい!」という方におすすめなのが、「走る豚ロースの塩麹グリルランチ」(1,650円)。「走る豚」とは熊本県菊池市の生産者さんが放牧で育てた健康な豚のことで、脂身までさっぱりとした甘みがあります。自家製塩麹(自然栽培白米使用)でマリネしてあり、やわらかく食べやすいのが特徴です。

「米粉のベジカレーランチ」(1,100円)は、タマネギ、ニンジンをたっぷり使った動物性食材不使用・グルテンフリーの特製カレー。米粉ベジカレー、ご飯、野菜を中心とした8品のデリのセットで、「単品だけじゃなく、いろいろな味を楽しみたい」という方に喜ばれています。

 

スープランチ

restaurant-ninjin080

ランチメニュー(スープランチ)

 

寒い日に口にしたくなるのが、本日のスープ、ご飯、野菜を中心とした8品のデリが付いた「スープランチ」(1,100円)。季節の野菜が主役のほっこり温かいポタージュスープは、動物性食材は使わず、野菜のうま味・甘みを生かした優しい味わいです。どのメニューも、ご飯は八穀米と玄米の2種類から選べます。

 

おこさまランチプレート

restaurant-ninjin075

ランチメニュー(おこさまランチプレート)

 

「おこさまランチプレート」(720円)もこだわりが詰まったオリジナルメニューです。内容は、お野菜デリ3品、豆バーグ、甘口カレー、お野菜たっぷりお味噌汁、ご飯、旬の果物、ドリンク(りんごorにんじんジュース)。野菜本来の味を子どもたちに楽しんでもらえるように、無添加の調味料を使っています。

驚くのは、オーガニック食材を使った離乳食ランチも用意されていること。離乳食の段階に合わせて調理する「蒸し野菜とおかゆ」(160円)、10カ月以上のお子さんにおすすめの「ベビーきしめん」(160円)、5カ月から8カ月の赤ちゃんにおすすめの「玄米とにんじんのポタージュ」(160円)があります。
大人の食事と同じように、安心安全な食材を選んで手作りで調理しており、アレルギーにも対応しています。

 

4. 実食! 人気No.1の「畑のプレートランチ」

restaurant-ninjin127

畑のプレートランチ

 

今回は看板商品である「畑のプレートランチ」(1,280円)をいただいてきました。

お皿を畑に見立てたプレートランチは、16種類のデリ(おかず)の盛り合わせに、野菜たっぷりのお味噌汁とご飯が付いています。

すべて卵・乳製品・動物性食品不使用で、新鮮な有機・無・低農薬野菜や豆腐、油揚げ、乾物、海藻、在来種の豆などが使われているのが特徴です。もちろん豆腐は国産大豆と天然にがりを使用。味付けの豆乳マヨネーズ、醤油麹なども厨房で手作りしているのだとか。

 

restaurant-ninjin157

見ただけで心が満足するプレートランチ

 

この日のデリの内容は、以下の通りです。

  • ・きゃべつの塩麹蒸し
  • ・大学芋
  • ・じゃがいもフライ
  • ・炊いた大根の大葉くるみ味噌のせ
  • ・イタリア菜花と紫大根のマリネ
  • ・芽ひじきのバルサミコ煮
  • ・にんじんサラダ
  • ・ポテトサラダ 豆乳マヨネーズ
  • ・トマト風味のケークサレ
  • ・積翠こんにゃくの天の生姜紅茶煮
  • ・東白川村もめん豆腐 醤油麹ソース
  • ・お揚げのチャーシュー仕立て
  • ・大豆ミートの生姜焼き
  • ・在来種お豆バーグ トマトソース
  • ・全粒粉車麩のフライ
  • ・お豆のノンエッグキッシュ

(※季節や材料状況によって多少変わることがあります。)

見た目もきれいで、種類も多く、どれから食べようか迷ってしまいます。どの料理も調理に工夫が凝らされ、それぞれの素材の味わいを感じながら楽しむことができます。「一度に何種類も食べることができて満足」「どれもおいしいし見た目もきれい!」「お肉がなくても大満足!」と、お客さんにも大変好評なのだとか。手の込んだお料理一つひとつが、まさに、心を満たしてくれるメニューでした。

 

restaurant-ninjin177

アフタードリンク

 

ランチを注文した人は、食後にお得な料金でドリンクやデザートをオーダーできます。アフタードリンク(200円)は「有機栽培コーヒー」「穀物コーヒー」「天の紅茶」「農家自家製100%りんごジュース」「農家自家製100%にんじんジュース」の5種類から選べます。

 

restaurant-ninjin172

アフターデザート(豆乳ティラミスと甘栗のタルト)

 

アフターデザート(400円)は、素材のおいしさを大切にした、乳製品・卵・白砂糖・小麦(グルテン)不使用の体に優しいナチュラルデザートがラインナップ。「米粉のにんじんケーキ」「季節のフルーツタルト」「豆乳ティラミス」など、日替わりのデザートメニューから2種類を選べます。

いただいた豆乳ティラミスは、米粉のスポンジケーキに穀物コーヒーを染み込ませて作った優しくリッチな味わい。とても乳製品不使用とは思えません。フルーツタルトは季節によってメニューが変更され、この日は甘栗のタルトでした。中には穀物コーヒーのゼリーが入っており、カカオニブがトッピングされていて、小さめサイズでも満足感があります。

 

5.「医師の皆さまにこそ、食に気を付け健康に過ごしていただきたい」

restaurant-ninjin166

健康は食事から

 

最後にスタッフの方から、病院で働く医師の皆さまへメッセージをいただきました。

大切にしているのは「医食同源」という考え方。私たちは、病気になる前に食べるものと食べ方を見直すことで、病気を防ぎ、健康な暮らしをしていただけるようなお料理の提供と、食材の販売をしています。

お客さんから「食べて元気が出た」「これまで苦手だった食材がおいしく食べられた」「野菜がとってもおいしくて感動した」などのお声をいただいたときは、とてもうれしいです。病院にかかるのは時として気が重いものですが、「通院のついでに寄るのが楽しみ」と言っていただける存在であり続けたいですね。

食べ物は自分で選んで決められるもの。病院で働く「健康のスペシャリスト」の皆さまにこそ、食べ物に気を付けていただいて、健康に過ごしてほしいと願っています。テイクアウトのお弁当もあるので、ぜひご利用下さい。

 

6.店舗情報

新鮮多菜 CAFE&RESTAURANT にんじん

住所:
〒459-8016
名古屋市緑区南大高二丁目204番地 南生協病院敷地内

営業時間:
モーニング 9時30分~11時
ランチ 11時~15時 L.O.閉店1時間前
カフェ 9時30分~15時 L.O.閉店30分前
ショップ 9時30分~16時30分(月曜のみ~15時まで)
※営業時間は変更になることがあります。

定休日:
日曜日

 

<参考>
新鮮多菜 CAFE&RESTAURANT にんじん「ホーム」
にんじんCLUB「にんじんCLUB|畑と台所をつなぐにんじんCLUB」
南医療生活共同組合総合病院南生協病院「南生協病院について」

 

【関連記事】
「ニッポン病院食堂紀行【第1回】東京・文京区|オークラカフェ&レストラン メディコ~絶好の眺望と、一流ホテルの味とおもてなし」
「著書紹介『どんな薬よりも効果のある治療法』 健やかに幸せに生きるために~医師として、『健康になる行動』を促したい」岡田 定 氏(聖路加国際病院 血液内科/人間ドック科 部長)
「西洋医学も伝統医療も、『効くもの』は受け容れる~探検家として医師として、その目に映る人間の豊かさとは」野 吉晴 氏(探検家/医師)
「Dr.石原藤樹の『映画に医見!』【第9回】|神様のカルテ~地域医療と医者患者関係の理想を描いた詩的な佳作」
<PR>愛知県の人気医師求人と転職市場動向

 

求人をみる/アンケート会員に申し込む

医師転職ドットコム 医師バイトドットコム 医師アンケート会員登録

コメントを投稿する

コメント
投稿者名(12文字以内)

ページの先頭へ