オンライン診療の初診“解禁”で何が変わるのか?

 新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、オンライン診療の初診が実質“解禁”され、2022年初めの「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の改正により、「初診からのオンライン診療」が制度化されました。

 2022年度診療報酬改定では、同指針の考え方を軸とした評価や算定要件/施設基準の見直しが図られています。コロナ禍という“外圧”もあり、オンライン診療は短期間で大幅に規制が緩和されてきましたが、何がどのように変化したのか把握できていない方も多いと思います。

 オンライン初診の解禁に至った経緯や、2022年度診療報酬の見直しのポイントを解説するとともに、医師の診療にどのような影響を与えるのかなどについても考察します。

 

1. 当初は規制の厳しかったオンライン診療

 オンライン診療の規制や評価のベースになっているのは、厚生労働省が2018年3月に策定した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(以下、指針)です。同指針は、情報通信機器に関する技術の飛躍的な進歩に伴うオンライン診療へのニーズの高まりが予測される中、安全性・必要性・有効性の観点から、安心かつ適切なオンライン診療の普及を推進するために策定されました。

 しかし、オンライン診療は対面診療と異なり、得られる情報が視覚や聴覚に限られることから、患者から心身の状態に関する適切な情報を得るために、日頃より直接の対面診療を重ねるなど、医師・患者間の信頼関係を築いておく必要があるといった考え方が示されました。また、「最低限順守する事項」として、初診は原則として対面診療で行うことが明記されました。

当初はオンライン診療の普及を推進するというより、野放図に広がらないよう規制をかける方に軸足が置かれていたと思われます。

 この指針を受けた2018年度診療報酬改定では、オンライン診療料(70点)、オンライン医学管理料(100点)が新設され、保険診療としてのオンライン診療がスタートしましたが、対象となる疾患が限定された上、再診でオンライン診療を実施する前に6カ月の対面診療期間を求められるなど、厳しい要件が課せられました。

消費税率引き上げに対応した2019年10月の診療報酬改定で、オンライン診療料が70点から71点へと増額し、2020年度診療報酬改定で、オンライン医学管理料が廃止となった代わりに、各管理料に「情報通信機器を用いた場合」が新設され、全体的に引き上げられたほか、対面診療期間の6カ月が3カ月に短縮されるなど、いくつかの規制が緩和されたものの、やはり算定数などは伸び悩んでいました。

2. 新型コロナウイルスの感染拡大への対応で始まったオンライン初診

 オンライン診療の規制に関して潮目が変わったのは、この2020年度診療報酬改定の内容が固まりつつあった2020年初めです。新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい始め、慢性疾患患者などの医療機関への受診に支障が出る中、国も感染防止対策の一環としてオンライン診療の規制緩和に舵を切らざるを得なくなったわけです。

その代表的な措置が、厚生労働省により2020年4月10日に発出された事務連絡「電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱い」であり、“0410対応”とも呼ばれています。

 この時限的・特例的な措置により、細かな条件はあるものの、患者から電話等で診療等を求められ、電話診療・オンライン診療により診断や処方が可能と医師が判断した範囲で、同診療による初診が“解禁”されました。

(1) 初診からの電話や情報通信機器を用いた診療の実施について

 患者から電話等により診療等の求めを受けた場合において、診療等の求めを受けた医療機関の医師は、当該医師が電話や情報通信機器を用いた診療により診断や処方が当該医師の責任の下で医学的に可能であると判断した範囲において、初診から電話や情報通信機器を用いた診療により診断や処方をして差し支えないこと。ただし、麻薬及び向精神薬の処方をしてはならないこと。

 診療の際、できる限り、過去の診療録、診療情報提供書、地域医療情報連携ネットワーク(※)又は健康診断の結果等(以下「診療録等」という。)により当該患者の基礎疾患の情報を把握・確認した上で、診断や処方を行うこと。診療録等により当該患者の基礎疾患の情報が把握できない場合は、処方日数は7日間を上限とするとともに、麻薬及び向精神薬に加え、特に安全管理が必要な医薬品(いわゆる「ハイリスク薬」)として、診療報酬における薬剤管理指導料の「1」の対象となる薬剤(抗悪性腫瘍剤、免疫抑制剤等)の処方をしてはならないこと。

(※)患者の同意を得た上で、医療機関間において、診療上必要な医療情報(患者の基本情報、処方データ、検査データ、画像データ等)を電子的に共有・閲覧できる仕組み

出典:厚生労働省医政局医事課、医薬・生活衛生局総務課 事務連絡「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」(令和2年4月10日)

 診療報酬については、A000初診料の注2に規定する214点を算定し、既に診療継続中の患者の新規症状を電話診療・オンライン診療で対応した場合は、電話等再診料として73点を算定することが示されました。

3. 2022年度診療報酬改定のポイント

 0410対応は、新型コロナウイルス収束までの時限的・特例的措置でした。結果的にコロナ禍が収まらず、同措置が延長される中、菅義偉前内閣で初診を含むオンライン診療の原則解禁(恒久化)の方針が固まったことを受け、2022年1月に指針の一部改訂が行われました。

 見直しの最大のポイントは、初診からのオンライン診療を認めている点ですが、これは、オンライン初診の安全性や有効性を担保するために、日頃より直接の対面診療を重ねているなど、患者と直接的な関係が既に存在する「かかりつけの医師」が行うことを原則としています。

 ただし、問診や視診を補完するのに必要な医学的情報を、過去の診療録や診療情報提供書、お薬手帳、PHR(Personal Health Record)などから把握でき、オンライン診療が可能と判断した場合には、「かかりつけの医師」以外の医師でもオンライン初診を行うことができます。

 さらに、「かかりつけの医師」がオンライン診療に対応している専門的な医療等を提供する医療機関に紹介する場合(必要な連携を行っている場合やD to P with Dの場合を含む)や、セカンドオピニオンのために受診する場合の対応も想定されています。

 指針の見直しを踏まえ、2022年度診療報酬改定では、オンライン診療料(71点)が廃止となり、情報通信機器を用いた場合の初診料(251点)、再診料(73点)、外来診療料(73点)が新たに設けられました。

情報通信機器を用いた初診に係る評価の新設

出典:厚生労働省保険局医療課「令和4年度診療報酬改定の概要 個別改定事項II(情報通信機器を用いた診療)」(令和4年3月4日版)

 初診料の251点は、対面診療の初診料288点と時限的・特例的措置214点の中間を取った点数となっており、施設基準を満たして地方厚生(支)局長に届出を行った医療機関で算定します。届出がない場合は、214点を引き続き算定することができますが、診療報酬改定後の施設基準に準じた体制の整備に最大限努めること、とされています。同施設基準は、基本的には指針に沿って診療を行う体制を有する保険医療機関であり、患者の情報を把握している、かかりつけ医が中心になりそうです。

 また、医学管理等においても「情報通信機器を用いた場合」が追加され、対象となる医学管理料が大幅に増加したほか、1カ月当たりのオンライン診療料を全体の1割以下に制限するという実施割合要件も廃止されました。0410対応の時限的・特例的措置で、30分以内から二次医療圏以内へと緩和された距離要件も撤廃され、広域でオンライン診療を展開できる素地がつくられています。

オンライン診療が勤務医の診療に与える影響

 最近の大きな政策の流れとしては、2022年6月7日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」において、「医療のデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を図るため、オンライン診療の活用を促進するとともに、AIホスピタルの推進および実装に向け取り組む」としており、オンライン診療は医療DX推進の要となっています。

 では、こうしたオンライン診療の動きは勤務医の診療にどのような影響を与えるのでしょうか。

 時限的・特例的措置の0410対応でも「患者から電話等により診療等の求めを受けた場合において」と記されていることから、普段から患者との関係性が築かれ、あらかじめ情報を収集しているかかりつけ医が想定されていることは容易に想像できます。今回の指針の見直しでオンライン初診を恒久化するに当たって、その点を明確にしたともいえます。

 とはいえ、オンライン診療はかかりつけ医以外の医師にとっても無関係ではありません。医療者自身の工夫によっては、単なる対面診療の代替ではなく、オンライン診療ならではの付加価値を提供する余地もあります。

 例えば現在、バイタルサインはもちろん、血糖値などを自宅で自動的に測れるウェアラブルデバイスが続々と開発され、医療機関でも、24時間かつリアルタイムで患者の情報が把握できます。オンライン診療に合わせてこうしたデジタルヘルスツールを上手く活用することで、外来診療だけではカバーできない通院していない間の患者の情報も常時モニタリングして、適時に薬の用量を調節したり、緊急受診を促したりといったことも可能になっています。

 このような対応はかかりつけ医というよりも、専門職種によるチーム医療でないと困難でしょう。加えて、指針で想定される患者像とは異なり、重症度は高く急性増悪等のリスクはあるものの、自宅療養を希望する患者などにも対応できると思います。

 また、国は地方の医師の不足・偏在の解消に努めていますが、医学部の地域枠や専攻医のシーリングなどで医師の勤務場所に制限をかける手法には限界があるといえます。発想を転換し、地方と都市部の医師との連携で医療リソースの地域格差を埋めていくという視点も必要です。

 そのための手段の一つであるD to P with D型のオンライン診療では、病院の医師が率先して仕組みづくりを進めていくことも必要と考えられます。特に専門医がいない地域では、希少疾患や難病に対する診断や治療が十分でない可能性もありますので、地域医療の質向上の意味でも、D to P with D型の普及が望まれます。オンライン診療の解禁とデジタルヘルスケアツールの発達は、病院勤務医がより自身の専門性を発揮するチャンスにもなるのです。

 一方で、オンライン診療は、医師の「働き方改革」にもつながります。厚生労働省は、指針で、「情報通信機器を用いた診療は、医師の不足する地域において有用なものと考えられる」との見解を示しており、今後は、オンライン診療を実施する医師と患者、双方の所在や場所も、多様化することが考えられます。

 例えば、通信環境等が整えば、リモートワークとして自宅でオンライン診療を行いつつ育児に取り組む、あるいは過疎地のオンライン診療に取り組む、といった働き方も広がっていくことが期待されます。

 

 新型コロナウイルスの感染拡大によって進んだオンライン診療ですが、これを対面診療の一時的な代替に留めず、現在の医療提供における様々な課題解決の手段として考えていくことが必要なのかもしれません。

(文・エピロギ編集部)

 

<参考文献>

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