教授への医局退局の申し出はどうする?経験者が語る円満な医局の辞め方
Dr. Y413(麻酔科医師)
「医局に不満はあるけれど辞めた後のことを考えると不安」
「医局を辞めようと思うけれど具体的な方法がわからない」
など、医師が医局を離れる時は不安やわからないことが多いものです。
当然のことですが、「医局の辞め方」を教えてくれる人は、医局には少ないのも理由の1つでしょう。本記事では、医局を辞めた筆者の経験を踏まえて医局を辞めるタイミングの例や方法をお伝えします。
![](https://epilogi.dr-10.com/wp/wp-content/uploads/2025/02/taikyoku_MV.png)
医局を辞めるタイミングは専門医取得後ー医局内のルールも確認できるとベスト
筆者が医局を辞めたタイミングは、入局10年目でした。専門医を取得し、サブスペシャリティの研修を終え、学位を取得したタイミングです。サブスペシャリティを生かしながら維持することができる仕事を望んでおり、そのような働き方を考えていました。
医局に属するメリットは、専門医や学位の取得、専門施設での研修などが比較的容易だということです。これらの希望や計画がある場合、入局後すぐに辞めるということは難しいので、事前に医局を辞めるタイミングを検討する必要があります。
ただし、学位を取得した直後は医局を辞めにくい、研修の後は数年間決まった施設での勤務を求められる、などの暗黙のルールが存在する医局もあります。退局のルールやパターンに詳しい先生からアドバイスをもらえるとタイミングをより見定めやすくなります。
医局を辞める動機
医局を辞める動機は人によってさまざまですが、似たような例があれば参考になります。ここでは、筆者の経験を踏まえてまとめます。
動機として多いのは家庭の事情、頻繁な異動
筆者が医局を辞めたきっかけは、専門医と学位を取得した後、働き方を考えたことです。プライベートでは産休を経て復帰し、仕事と家庭を両立するリズムをつかんだ頃でした。しかしながら、医局で仕事する中で、プライベートと仕事内容に対し言語化できない何か「モヤモヤ」するものも感じていました。
プライベートでは、育児のために使える時間を増やしたい、という希望がありました。筆者が属していた医局は非常に大きく、規律を重んじる傾向にあったため、働き方の選択の自由度は低い状況でした。
当直は継続する代わりに、出勤時間や退勤時間を子供の送迎に合わせたいと考えたため、臨機応変に勤務時間を調整できる職場を希望していました。私と同様に、家庭に割く時間を捻出するために医局を辞める方は多いです。
また、関連病院の中に自分の望む条件と合う施設があっても、数年ごとに異動があるのが医局人事です。安定した生活がままならないことも、多くの方にとって医局を離れるきっかけとなるでしょう。
キャリア形成も動機の一つ
一方、筆者には仕事の内容に関して、「より専門性の高い病院で経験を積みたい」という希望がありました。医局を辞める前に、仕事内容に関して医局内で希望が叶えられるか、交渉を進めたものの叶いませんでした。そこで、医局外でキャリアを継続する道を選びました。
キャリア形成や専門性の維持、新しいキャリアを開始することも医局を辞める動機になりえます。この場合、医局を辞めた後の転職や開業などのキャリアパスが見えない状況では医局を辞めにくいです。
しっかりと自分の中で医局退局後に優先する事項を見極めて、理想のキャリアパスを描いておきましょう。
辞める動機は転職先の希望に直結
ただ不満がたまっているので医局を辞めるのではなく、辞める時には動機と目的を明確にすることが必要です。辞める動機は、次の施設を探す際の希望や条件に直結するからです。
医局を辞めて転職する際には、求める仕事内容、絶対に譲れない条件、優先事項、家庭の事情(育児や介護など)を明確に整理することから始めましょう。これは、現在の施設で解決可能な問題なのかどうかを見極めるきっかけにもなります。
![医局を辞めるタイミング・動機](https://epilogi.dr-10.com/wp/wp-content/uploads/2025/02/taikyoku_01.png)
医局を辞めるデメリット
医局を辞めるにあたって、希望が叶うというメリットだけでなく、デメリットもしっかりと知り納得したうえで進めましょう。ここでは、医局を辞める際のデメリットを解説します。
専門医や学位の取得が難しくなる
専門医の取得には特定の疾患の経験や勤務期間などの条件を満たす必要があります。組織内で、専門医取得に協力してもらわなければなりません。
また、登録したプログラムを修了することが必要なため、途中でプログラムを変更することは煩雑な手続きを伴います。異動前後の施設の協力がなければスムーズに移行できません。不運が重なれば、専門医取得の条件を満たせなくなってしまう可能性があり、注意が必要です。
学位取得は、大学病院の医局に属していれば比較的簡単ですが、医局に属していない場合には、働きながら学位を取得するのはハードルがかなり上がります。臨床研究を計画したり指導を受けたりするのも医局にいる時と比較すると格段に難しくなるでしょう。
留学や希少な症例を経験しにくくなる
医局に属していると、受動的な姿勢でいたとしても、留学の情報を得ることができたり希少な症例を経験できたりします。一方で、医局を辞めても留学を目指したり専門施設で希少な症例経験を積んだりすることは可能ですが、より積極的な姿勢が求められるようになります。
知識のアップデートを自主的におこなう必要がある
医局に属している場合には、学術的な勉強会やカンファランスが頻繁におこなわれます。受動的な姿勢でも知識をアップデートする機会が自動的に与えられます。しかしながら、いったん医局を離れると、自分で知識をアップデートするための勉強の機会を作らなければなりません。
総じて、医局を辞めてからも希望のキャリアを築きたい場合には、自発的に動き情報を取りに行く姿勢が必要です。医局を辞める前に、辞めた後のキャリアパスも描いたうえで計画的に動くと良いでしょう。
人脈が限定される?
医局では複数の病院の医師と関わることが多く、情報交換の機会も豊富にあります。しかし、医局を辞めて小規模な病院に異動した場合、人間関係が同僚との関わりだけに限定されてしまいます。
ただし、医局を離れて姿勢が変わり、積極的に外部と関わるようになった結果、私のように、逆に人脈が広がる場合もあります。結局は、どの施設に所属していたとしても、積極性は大きな武器となります。
転職先や外勤先が見つからない可能性
医局に属していれば、人事は医局側が管理しているため勤務先がないということは起こり得ません。外勤も斡旋してもらえることが多いです。
しかし、医局という後ろ盾がなくなった時、スケジュール管理は自分で行うようになります。バイトの探し方、組み合わせ方も自分で管理するため、常勤先やバイト先を探すツールを確保する必要があります。
まずはメディウェル社のような医師の転職サイトに登録し、複数の求人情報を比較することから始めましょう。
医局を辞める具体的な方法
医局を辞めると決めたとき、どのような順番で動けばよいでしょうか。医局は特殊な組織で、一般企業とも違うため、相談相手が少ないことが多いです。ここでは医局を辞めるときに、具体的にどのように準備や根回しを進めるかをお教えします。
1.転職活動をはじめる
転職活動と医局への申告のどちらを先に行うかは人によります。因みに、筆者は先に転職活動を開始しました。
先に転職活動を開始するメリットは、自分の市場価値を客観的に知ることができること、転職先を決めることで自信を持って医局と交渉に臨むことができることです。転職先が決まっていれば、交渉を開始する際に、強気で交渉できます。
2.教授にアポイントメントをとる(遅くても半年前)
いよいよ医局側に退局する意志を伝えます。医局によって、教授と医局長のどちらかに伝えるか決めるのが良いです。
注意すべき点は、次のような点です。
- ・ほかの医師に漏れてしまい、うわさで医局側が知ることがないようにする
- ・伝える時期が遅くならないようにする
翌年の人事を検討し始めるタイミングを考慮すると、できれば1年前(春〜夏)、遅くても半年前(秋)には医局側に伝えなければなりません。
実際に、退局の意志を直前に申し出たためにかなり強く慰留されたり、数か月辞めるタイミングを遅らせざるを得なくなったりした例を目の当たりにしたことがあります。法的根拠もありませんが、一般企業と比較するとかなり早く人事を決定するのに時間を要するのが一般的です。医局側に迷惑をかけず円満に退局するためにも、できるだけ早めに申し出ましょう。
3.教授に会う前にまとめておくこと
教授に辞める意志を伝える際、想定される質問と答えるべき事項をまとめておくとよいです。
筆者の経験上、想定される質問は次のようなものです。
- ・辞めたい理由
- ・辞めた後のキャリアの計画はあるか
- ・求める条件
- ・辞める意志は固いか
慰留されることも想定されます。条件に合う施設があれば医局内で調整可能かどうかは重要な争点です。条件次第で交渉の余地があるのか、辞める意志は固いのかを事前に整理しておく必要があります。
辞める意志が固い場合、辞めたい理由が「なんとなく」「仕事がきついので」といった曖昧な理由では緩めの条件を提示されて、結局は医局に引き止められてしまう例も多々あります。医局内では絶対に解決できない理由を話すほうが確実です。
筆者の場合、次の施設を尋ねられ、立地のよりよい医局内の施設を提示されました。しかし、医局の場合は数年で異動を打診される可能性があること、求める分野の症例が少ないことから辞める意志が固いことを伝えました。
私の場合には、「辞めて何をしたいか」が明確であったので、退局の意志が伝わりやすかったと分析しています。
![医局を辞める具体的な方法](https://epilogi.dr-10.com/wp/wp-content/uploads/2025/02/taikyoku_02.png)
早めに退局の目的を整理して円満に医局を辞めよう
医局を辞めた経験のある筆者が、実際の退局経験をもとに、医局を辞める理由、タイミング、方法について解説しました。早めに退局の動機や目的を明確にすることで自信をもって次の理想のキャリアを進められます。読者の先生方も、本記事を参考に、医局を円満に辞めて希望の働き方を実現できることを願っております。
<関連記事>
![](https://epilogi.dr-10.com/wp/wp-content/uploads/2025/02/Dr413-120x120.png)
- Dr. Y413
- 麻酔科指導医として大規模病院に勤務。公立大学医学部卒業後、大学医局に10年間所属後転職し、2023年より現職。サブスペシャルティは産科麻酔。未就学児育児中。
コメントを投稿する