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世界最大規模の国際ヘルステック・カンファレンス
「Health 2.0 Asia – Japan」開催!
<後編/2日目>

医療・ヘルスケア分野の最新テクノロジーと
それを活用した最新事例を紹介する
世界最大規模の国際カンファレンス、「Health 2.0」。
初日は現在の医療・ヘルスケア分野に求められる
「共有」というテーマが明らかになりました。
では2日目はどのような提言が行われるのか。
2015年11月5日、「Health 2.0 Asia - Japan」2日目の様子をレポートします。

スマート・プラチナ社会と医療情報連携

「Health 2.0 Asia - Japan」2日目。最初のセッションは日本にとって不可避の課題にどう向き合うかという内容でした。
その課題とは、超高齢社会。
人類が経験したことのないこの未来に対応するため、日本は「スマート・プラチナ社会」という概念を定義しました。誰も見たことがない世界に向けて、これまでとは全く違う発想とテクノロジーでより安心・元気な社会を実現しようというものです。
その実現方法のひとつとして取り組みが進んでいるのが「医療地域連携」。ICTによる電子カルテとそこに記載された診療情報の共有です。
初日にも提起されたとおり①環境やアプリ等プラットフォームの整備、②個人情報の取り扱い方法等権利と安全性の課題が残されています。しかし、これらを独自の方法で乗り越え、運用までこぎ着けている地域があります。それは房総半島。中核になっているのは、亀田メディカルセンターなどを運営する亀田グループです。
亀田グループは1999年から独自開発の電子カルテを導入。以降、内部で改善を繰り返し、ノウハウを蓄積してきました。この取組はオリジナルの医療情報連携システム「AoLaniネットワーク」として結実。グループを構成する全施設、連携する他の医療・介護施設、非連携施設、そして行政を結ぶ一大ネットワークを形成するに至りました。
驚くべきはその実績です。このシステムの構築・運用にあたり、これまで提起されてきたような大きな問題は発生していないというのです。もちろんこの実績は亀田グループの規模と地域密着姿勢があってこそのもの。他地域にそのまま適用するのは難しいかもしれません。しかし、グループの歩みの中で課題をひとつずつ解決し、地域との信頼関係を築きながら連携を実現させた事実は大きく評価されるべきものです。
この取組を報告した亀田メディカルセンターCEO、中後淳氏が語る「連携のためにどのような地域協定を結ぶかが鍵になる」という言葉。これが今後の日本に対する提言であることは間違いありません。

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拡大する医療・ヘルスケアサービス

日本が目指すスマート・プラチナ社会では、多彩なサービスが展開されていくと予測されます。「スマート・プラチナ社会」のセッションではこうしたサービスを提供する企業がデモンストレーションを行ないました。
たとえば、「Bird's View Inc.」が提供する「病院と救急隊を直結するサービス」。iPadを活用し、救急隊から送られる患者の状態情報はもちろん、搬送後にどのような措置が行われたかまで記録することができるシステムです。このサービスの成果は「救急患者のたらいまわし」という課題の解決だけではなく、救急活動のビッグデータ構築や、そこから得られる救急システムの改善計画立案といった今後に向けての改善根拠提案ができる点。社会システムの構築という点からも高く評価できるサービスだと考えられます。
もうひとつ報告されたサービスがあります。それは「IRONYUN INC.(Taiwan)」が提供する動画解析を活用したサービスです。これまで、ヘルスケアの分野ではあまり使われてこなかった映像解析技術。これを活用すれば映像から患者の呼吸や心拍をはじめとするバイタル情報も検出することが可能。たとえ被写体の顔が見えていなくても個人把握と行動分析が可能なこの技術。たとえば認知症患者の見守り介護や高齢者の服薬チェックなど、今後の高齢化社会にも大きく貢献できるサービスといえます。
世界は高齢化傾向の中にあり、その中でも最も顕著な傾向を示す日本は世界で最初に超高齢社会を経験する国家になります。この稀有な機会は医療・ヘルスケア領域と異業種の融合をさらに加速させることになる。これはすでに既定路線であるということを強く感じさせるセッションでした。

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Do It Yourself

これからの医療・ヘルスケア領域でのサービスは、医療情報の共有という点で行政との連携を視野に入れなければならない。これは1日目から継続して示されているテーマの一つです。2日目でも前出の「Bird's View Inc.」や「DeepDive by SONY」で紹介された「harmo」など、社会システムとしての連携の形が提示されました。
しかし、2日目のセッションで強く強調されていたのは、医療・ヘルスケア領域が患者個々人に対してより個別化されたサービスを提供するようになる、という見通しです。
その基盤となっているテクノロジーはスマートフォンとそのアプリ。BtoCのビジネスとして、またスマートフォンを情報収集機として活用して行われるビッグデータの獲得方法として、モバイル・デバイスとアプリケーションはさらに進化を遂げると予測されます。
セッション「“Do-it-yourself”ヘルスケア」をはじめ、2日のセッションではこうした医療・ヘルスケアの個別的サービスが拡大することが十分見通せるものでした。特に患者(あるいは患者になりたくない一般生活者)がスマホアプリを通して自分でヘルスケアを行うためのサービスは今後数多く企画され、実働に移されることでしょう。 これらが医療の現場、特に医師に与える影響とはどのようなものでしょうか。

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医師の新しい職域

医療・ヘルスケアサービスを行うビジネス・プレイヤーが増えると医師の現場、特に働き方はどのように変化するのでしょうか。
まず、確実に増えると考えられるのがテクノロジー開発に関わる「医療コンサル」としての働き方です。異業種である開発者あるいはビジネス・プレイヤーに対し、医療の中心を担うプロとしての見地からコンサルティングを行う働き方です。今後新規の開発は加速度的に増えていくと予測されます。セッション「Doctors2.0」に登場した池野文昭氏、内田毅彦氏はそれぞれメディカルオフィサーとして、また医療コンサルタントとしてテクノロジー開発や新しいビジネスのスタートアップに関わっています。
もう一つの働き方はサービスを支える医師となる働き方。いわば「中の人」として働くスタイルです。今後、患者あるいはその家族から送られてくる情報に対して診断・アドバイスを行ったり、質問に答えたりするサービスが急増することは明らかです。こうしたサービスが増えれば、サービス従事者としての医師を必要とする声は大きくなるはずです。
そしてもう一つが起業者になる、という働き方です。「Doctors2.0」に登場した武蔵国弘医療法人創夢会理事長は自身も眼科専門医・医学博士・開業医でありながら医療系SNSの創設や手術器具開発に参画。京都大学ではバイオベンチャーを創業するなどビジネス・プレイヤーとして積極的に挑戦を続けています。またデモンストレーションで登場した株式会社エクスメディオの物部慎一郎氏、加藤浩晃氏をはじめ、多くの医師たちがプレイヤーとして、あるいは経営者として市場にサービスを発信しようとしています。このように、多くの医師が新しい働き方を獲得し、今後の医療・ヘルスケア領域にビジネスチャンスを見出そうとしています。
こうした働き方は今後多くの医師にとって身近なものになるのではないでしょうか。
新しいテクノロジーが切り開く、新しい医療・ヘルスケアサービスの世界。そこには今後医師が検討すべき新たなワークスタイルが広がっているのです。

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新しい選択肢に必要な「知識イノベーション」

医療・ヘルスケア分野で開発される新しいテクノロジー、そしてサービスの舞台。それは日本だけにとどまりません。特に、そのサービスがWebを活用するものならば、開発されるテクノロジーの権利や利益を守るすべを持たなければなりません。
「The Future is Now〜未来のテクノロジー〜」や「Robotics2.0」といったセッションでは、最新のヘルステックが紹介されました。たとえば、「The Future is Now」でAdam Odessky氏が披露したスピーク・エンジンを活用した医療相談システム。たとえば富士通株式会社の門岡良昌氏が紹介した力学的・電気的解析による心臓シミュレータ。そして本田技研工業株式会社が紹介したパワード・プロダクツ。これらは最新のテクノロジーによって生み出され、これから世界中の医療・ヘルスケア市場に投入されていきます。
医師が医療の現場だけでなく「医療・ヘルスケア市場」を目指すなら、こうした開発に関わる際に必要となる法的知識・準備など「周辺環境」を整えておかなければなりません。
「Health 2.0 Asia - Japan」ではこうした「周辺環境」に関する情報提起も行われました。
「IP Trend」と題したセッションで特許事務所白坂パテントパートナーズ代表、白坂一氏から行われたのは、海外における特許事情や訴訟事情についての情報提供。たとえば日本では手術方法に特許はおりません。しかし、海外では特許を取り、利益を得ることも可能です。白坂氏は「特許とは個人の発明意欲などを守るために独占的な権利を保証する制度」だといいます。そうならば、やはり各国の特許環境は把握して置かなければなりません。
一方、特許とともに知っておくべきことが訴訟について。欧米では訴訟を起したり、起こされたりする「権利の活用」が当たり前になっているとのこと。こうした風潮に対応するためにはeディスカバリーなど欧米の訴訟制度に関する知識もしっかりと学んでおかなければなりません。新しい環境、新しいビジネス。これらに触れることで始まる医師の「知識イノベーション」。医師が向き合うべき「仕事」の在り方や求められる知識も大きく変わり始めているのです。

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より良い未来へのジャーニー

医療・ヘルスケア分野の最新テクノロジー、ヘルステック。行政、医療、患者を結ぶ新しい取り組み。ビッグデータと人工知能から生み出される、まったく新しいサービス。たった二日間。時間にして、わずか二十時間ほど。この短い時間の中で嵐のように吹き抜けていく圧倒的情報たち。そのすべてが、今この瞬間も、誰かの希望となり続けているのです。
世界は、そして私たちの社会は、完全ではありません。「Health 2.0」共同創設者Matthew Holt氏および日本側の主催者であるメドピア株式会社・代表で医師の石見陽氏は、スピーカーの一人であるRishi Bhalerao氏の言葉を借り、我々の現状を「まだジャーニーの途中にいる」と評しました。新しいテクノロジーとサービスを必要としている人々がいます。そして、待ち望んでいる患者や家族、そして社会があります。これらのニーズに応えるため、プレイヤーはこれからも新たなヘルステックの開発に挑み、革新的なサービスを生み出していくことでしょう。果てしなくも、偉大なるジャーニー。それぞれのプレイヤーが、より良い未来と信じる方向に向かって。
システム開発者。通信技術エンジニア。工学エンジニア。起業家。政治家。そして医師をはじめとする医療従事者。さまざまな業界の人々がこの領域に集い、プレイヤーとして世界を変えていくことでしょう。
次回、「Health 2.0 Asia - Japan」が開催されるときには、さらに発展的で刺激的なカンファレンスが繰り広げられるに違いありません。その一つひとつの発想が、また多くの笑顔を咲かせていく。「Health 2.0 Asia - Japan」はこうした連環的発展を感じさせるイベントでした。

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(文・佐々木 裕)

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佐々木 裕(ささき・ゆう)
TV番組制作会社、広告制作プロダクション、Web制作会社を経て広告代理店に入社。コピーライター、ディレクターとして研鑽を積む。東日本大震災後、Web制作会社に移籍。クリエイティブディレクター、ライターとしても業務にあたる。医療分野は専門分野として長年かかわる分野のひとつ。医療・ヘルスケア分野の今後の動向を読みながら原稿制作を行っている。
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