「未来の高齢者」は在宅医療についてどう考えている?
健康な50~60代の在宅医療についての意識調査
現在ですら、日本は総人口の約4人に1人が65歳以上という高齢化社会。ですがこの先の高齢化率はどんどん進んでいき、2025年には3人に1人、さらに2055年には2.5人に1人が65歳以上となることが予想されています。
(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」より)。厚生労働省はこれから進んでいく高齢化対策の一つとして「在宅医療」の推進を図っています。
そこで今回は、将来、在宅医療を受ける側となり得る50代60代、いわば「未来の高齢者」にアンケートを実施。「在宅医療への関心や認知」「自身は在宅治療を受けたいか」「家族の看取りについて」の3項目について、お聞きしました。
※アンケート対象:50~60代の男女105名、有効回答数:89(男性:30、女性:59)
- 目次
在宅医療に対する関心や認知度は?
「耳にしたことはあるが説明できない」が大半
そもそも、どのくらいの方が「在宅医療」という言葉を知っているのでしょうか。
伺ってみると、9割以上の方が「在宅医療という言葉自体は知っている」と回答しました。しかし、実際にそれが何を指すかを説明できる人は全体の1割程度にとどまります。
「医師」や「病院」から医療の情報を収集する人はゼロ
医療についての情報収集は、半分以上の方がテレビからと答え、次にインターネットから収集するという回答が続きます。医師との会話や病院で医療の情報を収集しているという方はいらっしゃいませんでした。
在宅医療について「知りたい人」と「興味がない人」の割合は半々
もし在宅医療について詳しい説明会などがあれば参加したいかという問に対しては、「出来れば参加したい」と「どちらでもよい・興味がない」との回答が半々という結果となりました。
「参加したくない」「どちらでもよい・興味がない」と答えた方の中には、「どうせ病院で死ぬから」「健康なうちは忙しくて先のことを考えている余裕はない」という意見も聞かれました。
在宅医療という言葉自体の認知度は高い反面、具体的な内容について把握していない方が多いようです。国は在宅医療を積極的に推進していますが、まだまだ理解度が足りないという現状が浮き彫りとなりました。
在宅医療に求めることとは?
「自宅」よりも「病院」で診療を受けたい人が多数
続いて、日常的な診療を病院と自宅のどちらで受けたいか伺いました。
「自宅で診療を受けたい」と答えた回答者の倍以上に当たる、58%の方が「病院で診療を受けたい」と回答。理由として「最新設備が充実している」「何かあったときにすぐに対応してくれる」といった声があげられ、自宅よりも病院での診療に安心を感じ、その安心感が「病院での診察」を選ぶ決め手となっているようです。
ただし、「病気の程度などによって大きく変わるので、今の段階で病院と自宅の2択では答えられない」と、実際の病気の内容によって決めたいという方も多くいらっしゃいました。
在宅医療への最大の懸念は「家族への負担」
では、ご自身が在宅医療を受ける側になった場合、最も望むことは何でしょう。
「患者家族の負担を減らすための施策の充実」が最も多く全体の約7割に達しました。具体的な回答として「点滴の交換や床ずれの防止対策などは医師や看護師にやってほしい」など、家族の時間を縛ったり、力のいる作業をさせたくないという意見が多くあがりました。
さらに、「家族が高齢だから病院へ連れて行ってもらうのは厳しい」「子どもたちが別住まいなのですぐに対応してくれない」という状況から、「24時間365日、呼び出しに対応してもらえる体制」や「すぐに入院可能な体制」を求める意見も約3割ありました。
一方で、「自宅に愛着があるから」「入院するとお金がかかるから」といった理由で、25%の方が「ご自宅での診療を希望」されています。ただし、詳しい回答を見ていくと、そのうちの多くが“家族に負担をかけてしまうなら病院で診療を受けたい”と答えています。
在宅医療と家族との関係について
自分が最期を迎えるなら?「自宅」と「病院」がほぼ同率
最期を迎えるにあたって、自身と家族、それぞれの看取りについてどのように考えているか、伺ってみました。
まず自身の最期をどこで迎えたいかについては、自宅と病院とがほぼ同数という結果となりました。また、「信頼する家族や医師が選んでくれた場所ならどこでもいい」という意見も多く寄せられました。
ちなみに、有料老人ホームなどの介護施設で最期を迎えたいという方は一人もいらっしゃいません。
「家族へ負担をかけるとしても、自宅で死にたい」が6割以上
さらに自宅で最期を迎えたいと答えた方に、家族の負担増も厭わないか尋ねたところ、6割以上の方が家族に負担をかけても「できれば自宅で最期を迎えたい」と回答しています。
また、「住み慣れた場所で死にたい」「何より家が落ち着く」「最期くらいは自分の家がいい」と自分の希望を通したいという意見も多く寄せられました。
その一方で、自宅で最期を迎えたいと回答した人の約4割は、「絶対に家族に負担をかけたくない」「本当は家がいいが、家族に負担をかけるなら病院でも仕方ない」と、家族や周りの方に負担をかけるくらいなら病院で最期を迎えるしかないと回答しています。
家族の最期はどこで迎えさせたい?「病院」が4割、「自宅」が3割
家族の最期をどこで迎えさせてあげたいか、についてはどうでしょう。
約4割の方が「病院」、3割強の方が「自宅」と回答しました。自身と同様、介護施設で最期を迎えさせてあげたいという方は一人もいませんでしたが、「本人が希望するところで」というご意見も約3割にのぼりました。
「家族の希望をかなえたい」一方で「自宅では不安」という声も
さらに家族が自宅での最期を希望した場合については、「希望通り(できれば)自宅で看取ってあげたい」という回答が7割という結果になっています。
「本人の意思を尊重したい」「本人の最後の希望をかなえたい」といった理由で自宅での看取りを考えている方が多い一方で、仮に家族が自宅での最期を希望しても、できれば病院で看取りたいという意見も多く集まりました。理由としては「負担が増えてしまうから」「万が一の際に対応する自信がないから」「病院のほうが医療機器が充実していて安心だから」などの声が聞かれました。
まとめ
今回の意識調査を通して見えてきた在宅医療の課題は、「家族や周りの人への負担」と「診療に対する不安感」でした。
「自宅で療養したいが家族に迷惑をかけたくないから在宅医療を選択できない」という思いは当然と言えるかもしれません。
在宅医療を普及させていくためには、「家族や周りの人の負担」と「治療に対する不安感」をクリアにするサービスの提供や体制の構築をしっかり行っていく必要がありそうです。
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- 合同会社エルコ
- 2015年設立。60歳以上の方向けに、後悔なく楽しい最期を迎えるための支援サイト「そうだ!相談しよう大阪の○○」を運営している。お金についてのセミナーや葬儀の事前相談、健康増進のためのヨガ教室等を大阪府各地で開催中。
https://soudan-osaka.com/
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