著書紹介『どんな薬よりも効果のある治療法』

健やかに幸せに生きるために~医師として、「健康になる行動」を促したい

岡田 定 氏(聖路加国際病院 血液内科/人間ドック科 部長)

AIの急速な進歩や未曾有の少子高齢化がもたらす医師の役割の変化について、「未来の医師に求められること~AIの進歩と少子高齢化のインパクト~」と題する寄稿をいただいた、聖路加国際病院・人間ドック科部長の岡田定氏が著書『どんな薬よりも効果のある治療法』を上梓されました。

これまで数多くの医学書を執筆してきた岡田氏。しかし今回は敢えて「一般の方に向けて本を出したかった」と言います。著書に込められた思いを、文章でお寄せいただきました。

 

「どんな薬よりも効果のある治療法」って何?

 本のタイトルの「どんな薬よりも効果のある治療法」って、何だと思われますか。「そんな治療法なんてあるわけないでしょう」と思われますか。いえ、あります。それは、「生活習慣を改善して健やかに生きること」です。

 「健やかに生きること」を実践すれば、そもそも薬を使うべき病気にはなりません。たとえ病気になっても、病気の根本原因の「生活習慣を改善」すれば、どんな薬よりも効果があるでしょう。

 私は1981年に医師の研修を始め、30数年間、血液内科医として白血病やリンパ腫などの患者さんを診療してきました。それこそ、シタラビンからシクロホスファミド、プレドニゾロンまで、多くの薬を使ってきました。しかし長年、血液内科医を続けるなかで、どんな薬よりも効果のある治療法があることに気がつきました。それが、「生活習慣を改善して健やかに生きること」です。それこそが、寛解になった白血病の再発予防にも、患者さんが新たな疾患になるのを防ぐにも、最も効果のある治療法だったのです。

 

健やかに生きるためには、身体的・精神的・社会的・霊的な視点が必要

 そんな経緯もあり、10数年前に「健やかに生きるために」という一枚のプリントを作り、外来の患者さん数百名に配りました。4年前にはその拡大版の30数ページの小冊子を作り、患者さんや身近な医療者にも配りました。とても好評で、何人もの方に「自分でコピーして周りにも配りました」と言われました。
 2016年に血液内科から人間ドック科(宿泊人間ドック担当)に異動しました。病気を治す世界から病気を予防する世界への異動です。血液内科という狭い世界から全科対応の人間ドックの世界に移り、実社会で精力的に活躍されている方との多くの出会いがありました。
 そういうなかで、「身近な患者さんだけでなく、世の中の多くの人に役立つ本を作ろう」という思いが生まれました。
 世間には、「〇〇を食べればよい」的なピンポイント健康法が溢れています。でももっとトータルな視点が必要だと痛感したからです。身体的な視点だけでなく、精神的、社会的、霊的な視点も必要だと考えたのです。

 

伝えたかった「12の生き方」

 人生100年時代を迎え、健やかに生きて健康長寿を達成するにはどうすればよいのか、迫り来る死に対してどう向き合えばよいのか、読者に直接話しかけるようなつもりで執筆しました。

 本の中で、12の生き方を提示しています。「1.健やかな生活習慣を身につける」、「2.病気を予防する」、「3.健やかで幸せに生きる」、「4.自然治癒力を引き出す」、「5.健やかな食生活を身につける」、「6.タバコをやめてお酒と上手に付き合う」、「7.運動習慣を身につける」、「8.健やかな睡眠を身につける」、「9.ストレスと上手に付き合う」、「10.精神的・社会的にも健やかに生きる」、「11.精神的に豊かに生きる」「12.死を忘れない」。

 これらのエッセンスをまとめれば、①腹八分目で、糖質・肉・脂質・塩分を減らし、野菜を増やす食習慣を身につけること、②毎日の運動習慣を身につけること、③年をとることを肯定的に考えること、④人生の最期まで社会的な関わりを持ち続けること、になります。

 

“本当の主治医”は自分

 現代医療は病気を治すことに汲々としています。でも、病気を治すことにこれ以上の資源(時間、エネルギー、お金)を投入しても、みんながもっと健やかで幸せになるのは難しいのではないでしょうか。

 もし病気を発症する前に、たとえ病気を発症してからも、みんなが生活習慣の改善に取り組み、健やかな生き方を身につければどうなるでしょうか。
病気になる人は目に見えて減るはずです。健康長寿を楽しみ、ピンピンコロリを達成する人がもっともっと増えるでしょう。結果的に、病気発症後の診断・治療に必要とされる資源は半減するのではないでしょうか。

 行政や医療の体制が変わるのを待っていては、間に合いそうもありません。誰にとっても自分の本当の主治医は自分のはずです。本当に健康になるためには、本人が行動を起こす必要があります。そこで、医療者向けの医学書ではなく、一般の方向けの一般書で呼びかけよう、と思い至りました。

 これまで、医学書は30数冊を上梓しています。いつもは企画を練り、出版社に掛け合って、出版社のゴーサインが出てから執筆を開始します。でも本書は出版社も何も決めずに、問題意識に突き動かされるままに執筆しました。
 脱稿してから初めて出版社をどうしようかと悩むことになりましたが、幸いにも「主婦の友社」に出版を請け負っていただき、出版にこぎつけました。

 未来の医療には、患者の病気を診断して治療するだけでなく、人が健やかに幸せに生きるのをサポートすることが求められます。この未来の医療に共感される先生方に役立てていただければ幸甚です。

 

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岡田 定(おかだ・さだむ)
聖路加国際病院 人間ドック科部長
1954年兵庫県小野市生まれ。1981年大阪医科大学卒業、聖路加国際病院内科レジデント、1984年昭和大学藤が丘病院血液内科、1993年聖路加国際病院血液内科、2007年血液内科部長、2011年~2013年内科統括部長、2016年人間ドック科部長。一般血液内科の臨床、レジデント教育、終末期医療に携わる。一般内科、血液診療の編著書が30数冊ある。
どんな薬よりも効果のある治療法
著者:岡田定
出版社:主婦の友社
発行日:2019年2月28日

内容:
健康長寿への近道&王道を聖路加国際病院の現役医師が伝授。病気の人も健康な人も、薬を飲むよりも先に実践したい12の方法とは。

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