企業と人の狭間で <前編>

~病院の外で働く医師「産業医」~

大室正志 氏(同友会春日クリニック産業保健部門 産業医)

病院という現場で、患者の病気と向き合う。
医師にとって当たり前とも言うべきこの毎日とは
まったく異なった日々を送る医師がいます。
彼らが立つ現場は、企業経営の場。
メスの代わりにペンを持ち、企業と労働者の間に立つ医師。
産業医。
複雑化する経済社会に生きる「もう一つの医師の生き方」についてご紹介します。

 

——「産業医」というと、企業の医務室で健康相談に乗っているというイメージがありますが、実際の「産業医」とはどんな職業なのでしょうか。

そうですね。「産業医」は事業者との契約にもとづいて、労働者の健康管理や労働環境の向上・最適化を行う医師のこと。「産業医」には大きくわけて二つの種別が存在します。
ひとつは「専属産業医」。労働者が事業所に常時1000人を越える大企業に選任が義務付けられている産業医です。
これはある意味会社員ですから、毎日会社に出勤して企業のスケジュールをこなすことになります。
仕事の内容は健診の判定とか、社員の面談とか、衛生員会とか管理職向けのメンタルヘルス研修などの労働衛生教育。それから会社で新しくやろうと思っている健康施策の会議とか。実はやることがかなり多くて、スケジュールがかなりガッチリ組まれています。
もうひとつが「嘱託産業医」というもの。
勤務する労働者が50人以上999人以下の事業所は産業医の選任義務はありますが専属義務はありません。だから産業医と契約をし月1度から数回の訪問という形をとります。僕自身も現在は同友会さん(同友会グループ)のような「労働衛生機関」に勤めながら「嘱託産業医」として仕事をしています。
だから僕は毎日労働者数1000人以下の事業所に行くということになる。回数は1社あたり月に大体1〜3回程度。1日あたり2社程度行くので、直行直帰が多い。午前中にA社に行き、午後B社に行くといった形。就労形態としては勤務医や開業医よりむしろ顧問先を訪問する弁護士や税理士の方が近いかもしれません。
嘱託を受ける会社は色んな所にあって、午前中千葉の会社に行き、午後東京の会社に行くといった具合。一般の医師と大きく違っているのは、まず「自分が行く」というところでしょうか。臨床医の先生だとランチを外で食べるって難しいと思うんですよ。でも僕はいま二十数社担当していますから、今日は乗換駅周辺でランチを済ませようか、それとも現地近くでランチをしながら資料を作ろうかなどと考える。そういった裁量権(?)はある働き方だと思います。まあ一般的な営業職では当たり前のことですが、医師の場合訪問診療を専門にしている以外は勤務医でも開業医でも日中に外に出る事自体が珍しいので、ここは「違い」でしょうか。

 

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——そんなに飛び回る仕事なんですね。二十数社ご担当とのことですが、「産業医」の業務はマニュアルのようなものに沿って進んでいくものなのでしょうか。

会社によってそれぞれ、ですね。私が担当しているのは主に二次産業と三次産業。製造業、特に建築系の会社などでは各社かなり「安全」に力を入れている。あたりまえですよね。大きな事故につながる可能性のある作業ですし、管理を怠ると業務停止に追い込まれてしまいますので。だから安全衛生委員会ではかなり緊張感をもった会議を行っている場合が多いんです。
たとえば解体工事をしていたらアスベストが出てしまったとします。会社側は「地域住民と社員が少し吸ってしまったかもしれない」と言ってきた。こうなると労働基準監督署に報告文書を書かなければならないんですよ。専門用語の理解不足から報告書の表現を間違ってしまうと後々問題になる可能性もある。だから「先生ちょっと見てください」と添削(?)を頼まれたりもします。二次産業に関しては産業医はメンタルヘルス以外にも色々な要望を受けます。

 

——毎回提起される問題も違ってくるんでしょうね。

そういうことです。いろんなことが起こるんですよ。
ちょっと整理しましょう。「産業医」の業務は主に三つ。
まず「作業環境管理」、次に「作業管理」、そして「健康管理」。
一般的に産業医としてイメージされるのが最後の「健康管理」について。
健康診断の結果について「血糖値が高いですね」とか。「抗ガン剤を使いながらの勤務の相談」とか。こういう「一人一人の個別の問題」にアドバイスを行うのも産業医の努めです。
でも実際問題、製造業などで多いのは「この特定化学物質を使っているんだけど、これに暴露しないためにはどうしたらいいか」とか。あるいは「作業環境自体をどうしたら改善できるか」とか。こういった「社員の健康を維持する環境作り」に関わる課題について具体的に相談される割合が結構高いんです。
一方、人の生死に関わる危険作業が少ない一般のサービス業などでは「健康管理」の割合が増えてきます。特に、終身雇用制度が定着していて、なおかつ社内に診療所を持っているような大企業、例えば大手銀行のようなところだと診療業務も社内で行っています。業種によってはこの「企業内診療所の先生」というのが「産業医」のイメージになっている場合があるかもしれません。
でも、実は保健室や企業内診療所での臨床業務というのは、産業医の労働安全衛生法には記されていないんです。あれは福利厚生の一環で、産業医としての「空いた時間」に臨床業務をしているだけなんですよ。だから、企業内診療所の臨床行為は産業医でなくともできるんです。実際、産業医とは別に企業内診療所を維持するために近くの大学病院から医師を派遣してもらっている企業もありますし。産業医の仕事は、あくまで環境を考えることと、社員の健康リスク低減に務めるアドバイザーってことなんですよ。そのなかで「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」を行っていくんです。
(これに「総括管理」、「労働衛生教育」を加え5管理ということもあります)
製造業系だと作業環境管理や職場巡視だとかの割合が増えて、三次産業になるとメンタル不調者のケアを中心とした健康管理の部分に時間を使うといった感じです。また法的な一線は遵守しつつも、それ以上の部分に関しては会社ごとに「会社の問題」として対応する部分と、「社員個別の問題」として対応する部分の濃淡が変わるイメージですね。

 

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——社員一人ひとりと向き合うイメージが先行していますが、それだけではないんですね。

そうですよ。前職でジョンソン・エンド・ジョンソンの統括産業医をしていたんですけど、この会社の流通では福島県に商品が集積されていました。そこで地震が起こった。東日本大震災です。そこは震度6強で地割れなんかも起こった。しかもそこは原発から約55キロ。もちろん会社からは「放射線の問題はどうしたらいいんですか」と声がきます。社員からも「工場は操業停止になるんですか」と。あちこちから様々な声が飛んでくる。これにはそこでまず、会社に判断を仰ぐための根拠となる情報の材料を出さなければなりません。放射線に関しては「安衛法の基準、アメリカの法律、原子力機構が出した指針、J&Jがグローバルの安全基準などで、1番厳しい値はこれですとか、退避勧告距離については米国で言及がありますが、これはスリーマイル島の事故の際に便宜的に定められたもので科学的根拠はありません」といった感じです。

 

——選択肢を提示する感じですね。

それぞれの選択肢に関するアドバイスも含めてですね。
そのときはボードメンバー(経営層)と法務部(弁護士)を中心としたメンバーとで話し合って「じゃあコレコレこういう指針を作りましょう」と進めていきました。ほとんど二ヶ月くらいこんな感じでした。
さっき「産業医は顧問弁護士のような仕事」と言ったのは、ある種顧問弁護士や税理士のようなアドバイザー的役割もあるという意味なんです。
「MERSが流行っているけど韓国出張して大丈夫ですか」とか。J&J時代には「今年麻しんが流行ってるんですが、ある病院ではワクチン接種をしてないMRは出入り禁止となりました。抗体検査とワクチン接種についてどう対応しましょうか? 該当病院のMRだけ会社負担にしますか? それとも全MR? 希望者のみ?」とか。「震災で東北地方の社員が不安を訴え心療内科に通院中で、引っ越しを希望しています。転勤させるべきですか?引越し費用は会社持ちですか?」とか。企業にはイレギュラーなものも含めて様々な判断課題があります。こうしたものに会社が判断するためのアドバイスを行っていくわけです。
たとえば「AEDを入れたいけど、何台買えばいいですか」なんていうのもあります。要は何台買うかを考える基準がほしいわけです。それを医学的知識で理論立てていくわけです。
心停止を起こした人間は、1分間に10%の確率で致死率が上がります。10分経過すれば助かる見込みはほぼゼロです。だったら各地点から5分以内で取ってこられるところに設置してはどうですかと、考えたり判断したりするための基準をアドバイスするわけです。そうすれば台数や予算が割り出せます。産業医はそういうアドバイスをすることが多い仕事なんです。
だから企業内診療所に朝やって来て、夕方に鍵閉めて帰ればいいという企業内診療所で完結している「閉じた医師」や、「産休後や定年退職後の片手間勤務」というような感覚で産業医を捉えているような方では、多分契約してもらえないと思います。最近は企業も産業医に求めるものが大きくなってきていますので。(もちろん産休後や定年後でも素晴らしい先生も沢山います。「片手間に産業医」という「メンタリティ」の話です。)

 

——なるほど。企業判断に関わるアドバイスをするわけですから、ちゃんと知識や意識を持っていないと難しいということですね。

もうひとつ大事なのが「単位が違うものを同じテーブルで議論する」という意識。
基本的に医者は「5年生存率」のようにある単位を揃えて、そのなかで「オペがいいのか、違う治療が良いのか」と分析します。でも、産業医が扱うのは単位がまったく違うもの同士。たとえばある労働者の健康状態について考えるなら、「この方の健康」にとって何がいいのかという視点と、「会社の利益」にとって何がいいのかという視点では、中長期的には統合できる概念でも、短期的には相反する場合も少なくありません。「労働と健康」は単位がメートルとキログラムくらい違うんです。でも適切な落とし所をさがさなければならない。
その時に普通の医者だったら「俺は知らん」と言いたくなっちゃう。「そっちでやってくれ」と。「私と仕事どっちが大事なの?」と聞かれる感じというか。

でも、たとえ答えが出ない問題でも、産業医にとっては「向き合うためのテーブルに付く」という姿勢が必要なんです。一応僕らの方が情報を持っているわけだから。「このプランだったらこんなリスクがある」という形で、僕はいつもABCパターンくらいは出すんだけれど。人事とか頼ってくれる方たちに対して「俺は知らん」「専門外だ」と言ってしまうのは産業医の姿勢ではないですね。もし専門外のことでも医療に関してなら僕らが調べたほうが早いことが多いので。
中には営業部長を決めるときに「AさんとBさんどっちが向いていると思いますか」なんてことを相談されちゃうこともあるんですけどね。
もちろんそんなことは僕には決められない。ただ役員の方との個人的な付き合いの中で聞かれたんだと思いますけど。まあそれくらい信用していただけていたのかもしれませんね。

 

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——そうすると、「産業医」には臨床の医師とはまた違った資質や姿勢が大事といえそうですね。では、先生はなぜこの「一般の医師とは異なる医者」になったんですか?

僕はもともと編集者とか、商社マンのようなものになりたかったんですよ。中学校くらいまでは特に編集者になりたいと思ったんですけど、調べたら倍率がやたら高いんですよ。当時は集英社とか小学館とかしか知らないから。倍率聞いて絶対ムリだと。「AKBオーディションか!」って話ですよ。しかもオーディションで落とされるってすげーイヤだなと思ったんですよ。そんなことされるなら、「何点足りない」って言われる医学部受験のがまだマシだと思いました。
あと、当時バブルが崩壊して、商社不要論なんていう論調が席巻していた時期でもあるんです。「もう中抜きはいらん」「これからは専門職だ!」と言われて、思いついたのが医者と弁護士と板前だったんですね。板前は体育会系過ぎて多分向いてないし、弁護士は父の友人が10浪してたんで、それも厳しそうだなと。で、医者を目指しました。

 

——すごい理由ですね。

産業医大についは、たまたま親の知り合いの子供が進学したとかで聞いたことがありました。で、大学入試の関係でセンター試験の傾斜配点というのがあって。僕の得点と産業医大の傾斜配点の組み合わせがよくてA判定が出て、まあここにしとこうと。「医学部志望」であって「○○大志望」って訳でもなかったですし。
産業医という職業自体は、ある種「媒介者」的な部分があり気に入っています。専門職の医師の中では珍しい感覚かもしれませんが。
たとえば商社マンでチーズの取引きをやっている人間でも、チーズ生産者よりかはチーズ製法に詳しくはないわけですよね。でも、チーズ取引きの生産から流通まで一気通貫してすべての流れを見ることができる。それが商社マンの醍醐味だと思うんですが、そういうポジションが好きなんですね。
たとえば「整形外科医になって大腿骨を専門的に極める」というのは尊敬するけど僕には多分できない。僕はソッチじゃない方が向いてるだろうと。
商社マンや編集者のように物事を色々な立場の方に分かりやすく伝える必要がある産業医の仕事は結構「あり」だったんですね。
企業における健康管理にいくら「あるべき論」を言ったとしても、産業医は企業の人が行動に移してくれて初めて成果なんですね。「正しいこと」を無闇に言い続けて「誰も動いてくれない」というのは、産業医としてはちょっとよろしくない。「政治とは妥協の芸術」という言葉がありますが産業医にも似たところがあります。総務や人事の方と打ち合わせすることが多いんですが、まずは交渉のテーブルについていただくことが大事。で、こちらの業界の、僕らの論理で話すことを分かってもらう分、むこうの論理にも耳を傾ける。単位や価値観が違う立場同士がひとつのテーブルでちゃんと話をする。そういう意味では編集者・商社マンをやりたかったっていう気持ちと、いま産業医をやっているということは、「媒介者」という意味で自分の中で「それなりに整合性が取れている」と思います。医師という分野の中では似たところにあるポジションなので。

 

——産業医になってみて、どんなところにやりがいを感じていますか?

「自分のアドバイスで社員の健診数値が改善した時」と答えたら教科書的には一番良いんでしょうけれど、正直産業医はそういう現場がそこまで多くはないんです。もちろんそれはそれで確かにやりがいなのですが、そこだけに安住してしまうのは少し違和感があります。まず現実問題として「ちょっとコレステロールが高い」とか「血圧が高い」とか。社員を一人ずつ呼び出して産業医が逐一説明していたら現在の企業の健康管理予算ではコスト的に合わないんです。だから今は、ある程度の部分はアウトソースをするとか、保健師さんを活用するなどの企業が多いです。
また現在の産業医に対する企業からのニーズは、どちらかというとその仕組みの方。もちろんすべての社員に全員面談をやっている会社もありますよ。でも外資系などでは「(健康管理に対する)お金は出すけど個人でやってくれ」という会社もあります。会社によってそこは違うんです。会社に合ったやり方を作っていけばいい。
産業医をやっていて一番良くないと思うのは、「俺は有名なフレンチの達人だったんだ」という人間が企業の健康管理室に来て「何だあの包丁はないのか、あの皮むき器はないのか」と言ったりすること。自分がやっていたフレンチの職場が一番良いのもで、そこから急に食堂に降りてきちゃったという感覚なんでしょう。でも、客単価1000円の食堂でも良い食堂やダメな食堂があって、客単価1万円でも良いフレンチやダメなフレンチもある。その場にあった良い店を作ることこそが産業医の醍醐味なんですよ。だから「システムとして回っている感覚」を得られたときが一番のやりがいですね。一人ひとりと向き合っている瞬間も大事なんですけど、そこだけにフォーカスしたくないというのが僕の産業医像です。

 

——自分のやり方に固執するのではなく、その会社にとって価値を目指すスタイル、ということですね。

そう。もちろん自分が追い求めている産業医像というものがあって、それに合う会社を選ぶってやり方もありますよ。でも僕は企業のオーダーに合わせて、「その客単価だったらラーメンやったほうがいいんじゃない?」と考えるほうが向いているかなと。
そういう意味では産業医にも二種類あるということですね。
自分のあるべき産業医像が決まっていて、そことマッチする企業とやるスタイル。そして僕のように企業を選ばないスタイル。
まあ学会なんかに行くと半々くらい……いや6・4くらいで自分のやりたいことやスタイルが決まっている人のほうが多いかもしれない。

 

——では、逆に「産業医」になってここがキツかったという点は?

休職している人への対応でしょうか。休職期間中に復職できないと自然退職になるんですよ。いわゆるクビじゃなく、自然退職。定年退職などと同じです。でも社員からみたら「クビ」と捉えるのも無理はないですし、そうなったら生活が立ちゆかなくなる方もいらっしゃいます。
だから本人は、無理矢理にでも主治医に頼み込んで治りましたっていう診断書をもらってくるんですよ。でも時にはそれを突き返す役目なんですよ、産業医って。「働けるかどうか」を冷静に判断しなければいけないんです。だから正直恨まれることもありますよ。イヤなこと言わなきゃいけないし。「なんで先生は医者なのに、そんなにイヤなこと言うですか」って言われることもあります。ただこれはもう産業医という仕事をする上ではある程度は避けて通れないことなんです。
何を言えば本人が喜ぶかなんて、こちらも十分解っているんです。復職を望む人なら復職を。異動を望む人には異動を。営業を外れたい方にはそういう意見書を。でも全てのケースでそれがOKという訳にはいかない。主治医でなく産業医として関わる以上。でも本人の言い分も「気持ち」は分かるんです。そういう意味では、産業医はすごい悪者に見えるときもあるでしょう。そこはツラいとこですね。僕らは社員が「働けるか働けないか」をジャッジする役割を担っているわけです。途中までは治療に協力する役割でいいと思うんですけど、最終的にはジャッジする役割ですので。ジャッジメントするときには、みんなが知っている医療者とはちょっと違うんですね。
僕らは「判断」する。
そしてその判断によっては時に本人にとって厳しいことを言わなければならない。主治医の意見と産業医の意見、同程度妥当性があれば、産業医の意見を優先していいとされています。これはメンタル不調の場合に顕著ですが、極論すれば産業医は主治医の先生の診断書の内容を受け入れないということもできるわけです。もちろん産業医も労働者・主治医としっかりコミュニケーションしていて同程度妥当性を持っているという前提ですけどね。一方で「耳障りの良い事だけを言っていたい欲」に負けちゃう人いるんですよ。そうすると今度は無理矢理復職をさせて、後に朝出勤できないことが分かり現場が混乱したり。これも良くないですよね。
また産業医という職業は法的には会社と労働者双方に中立と記載があるにも関わらず、「社員の味方ですか?」「人事の手先ですか?」と聞かれがちな立場です。これは反対に聞こえるけど「極端」という意味では似ている。単純化したいんですね。復職における判断1つでも負荷の多い現職からしばらく外すよう指示した場合などでも、捉えられ方によっては「外された」と感じる方もいます。短期的にみるか中長期的にみるか、どの立場からみるか。様々な見方により物事は違った側面を見せます。自分はそれを無理矢理単純化しない自制心が必要だと思っています。
そもそもすべてを白黒、敵味方で分けようとするのはちょっと未成熟な考え方かなと思います。そういう意味では産業医は非常に「オトナ」でなければならないのかもしれません。
ただ、「オトナ」という言葉は「諦観」のニュアンスもあるように本当に「オトナ」になることがいいことかどうかは分かりません。ただ少なくとも産業医は「オトナ」であるべきだと思います。

 

——労働は収入に直結するものですから、労働者も必死だと推察します。
こうした厳しい「産業医」の世界。産業医の中に上下関係のようなものは存在するのでしょうか。

国際的な大手メーカーなどでは数十人の専属産業医を雇っています。社員数が十数万人にもなるわけから。ある意味プチ医局ですよね。その企業内だけで学会的集まりがある。そういうところには上下関係がありますね。ただ臨床の外科医とかよりは緩いと思います。
嘱託の産業医の中にも節度をもちながらの上下関係・師弟関係はあります。とくに仕事を持ってきて振ってくれるひと、あの人のとこに行くと仕事紹介してもらえるっていう、そういう人のところに集まる。ギルドですよね。封建的なタテ社会に比べると緩いと思いますよ。チームでやっている職場もありますから、そのあたりは自分にあった環境を選ぶことが必要ですよね。

労働者と企業。異なる価値観を持つ両者の間でさまざまな判断を行う産業医。
次回はさらに踏み込んだ「産業医」の様子や今後の市場変化についてうかがいます。

産業医としての働き方に興味をお持ちの方はこちらもご覧ください。

(聞き手・エピロギ編集部)

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大室正志(おおむろ・まさし)
2005年産業医科大学医学部医学科卒業。専門は産業医学実務。ジョンソン・エンド・ジョンソン統括産業医を経て現在は同友会春日クリニック 産業保健部門 産業医 。現在日系企業、外資系企業、ベンチャー企業など20数社の産業医業務に従事。ビジネスキュレーションサイトNews Picksでは連載と並行しプロピッカーを務めている。
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