この先の医師のキャリア・働き方を占う~2018年医療ニュースまとめ

2018年の医療界での主要な出来事の多くは、「働き方改革」の文脈で捉え直し、語られるものでした。政府が「一億総活躍社会の実現」の一環として、2017年3月に「働き方改革実行計画」を取りまとめ、2018年6月に「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(働き方改革関連法)が成立。医師に対する時間外労働時間の規制などは2024年4月からの適用が決まり、医療界ではその準備に向けた検討が本格化しています。

「働き方改革」の視点から2018年度の「5大ニュース」を選び、解説します。

 

1. 2018年度診療報酬と介護報酬、同時の大改定

2018年度は、6年に一度の診療報酬と介護報酬の同時改定が行われました。2025年に向けた医療制度の方向性に鑑み、両制度間で、訪問看護、リハビリテーション、看取りなどについて機能分担と連携が重視され、地域包括ケアシステムの構築も両制度に共通する重要な課題となりました。

2018年度診療報酬改定では、改定の視点として、①地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、②新しいニーズにも対応でき、安心・安全で納得できる質の高い医療の実現・充実、③医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進、④効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の向上―の四つが掲げられました。

 

平成30年度診療報酬改定の概要

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出典:厚生労働省 平成30年度診療報酬改定説明会(平成30年3月5日開催)資料「平成30年度診療報酬改定の概要」(5頁)

 

過去10年間での診療報酬改定においても同様に四つの視点が設けられていますが、改定の視点に「働き方改革の推進」が盛り込まれたのは初めてです。その柱は、チーム医療等の推進(業務の共同化、移管等)、業務の効率化・合理化です。
2018年度改定の四つの視点のうち強く推進されたのが医療機能の分化・強化で、その一環として、急性期医療に相当する一般病棟入院基本料の再編・統合を行ったのが大きな特徴です。また、在宅療養支援診療所以外の診療所の訪問診療に対して報酬上の評価をするなど、質の高い在宅医療の確保に向けての取り組みも行われました。

今後、各医療機関は、医療機能と地域医療におけるポジションを明確にせざるを得ない状況にあります。勤務医としても、自院の機能とポジションを踏まえ、専門性を高めるとともに、患者を他の適切な施設あるいは在宅につなぐ役割が求められます。

 

2. 遠隔診療に診療報酬上の評価

2018年度診療報酬改定では、あわせて遠隔診療*(情報通信機器を用いた診察)について報酬上の評価がなされました。そのための対応として、厚生労働省は18年3月、技術面も含めたガイドラインである「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を策定しました。

 

診療報酬における遠隔診療への対応

307_図表2

出典:厚生労働省 平成30年度診療報酬改定説明会(平成30年3月5日開催)資料「平成30年度診療報酬改定の概要」(50頁)

 

このうち、新たな概念の医療行為として診療報酬上で評価されたのが「オンライン診療**」で、「オンライン診療料」「オンライン医学管理料」などが新設されました。また、従来からある「電話等による再診」の要件が見直され、オンライン診療との関係性が整理されました。
このような改定が行われた背景には、医療のICT化が進展し、スマートフォン等が普及する中、高齢化に伴う在宅での遠隔診療のニーズが増大していることが挙げられます。勤労者にも、一定のニーズがあるといわれています。
また、遠隔診療は、医師の働き方改革を推進する可能性も秘めています。例えば「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、医師の所在について規定はあるものの、「医師は、必ずしも医療機関においてオンライン診療を行う必要はない」とあるように、医師の自由度が高くなり、負担軽減につながることが期待されます。

*遠隔医療:情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為
**オンライン診療:遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為。
(出典:ともに、厚生労働省平成30年3月「オンライン診療の適切な実施に関する指針」5頁)

 

3. 「医師の働き方改革に関する検討会」が精力的に活動

政府は2017年3月に「働き方改革実行計画」を取りまとめ、さらに18年6月には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が成立したことなどから、厚生労働省は17年8月、「医師の働き方改革に関する検討会」を設置。19年1月14日現在までに会合が17回開かれるなど、同検討会が精力的に活動しています。
同検討会は、18年2月に、タスク・シフティング(業務の移管)の推進などを中心とした「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」を発表し、また、12月には緊急アピール「医師の労働時間短縮に向けて」を出しました。ここでは、勤務医が睡眠を一定時間きちんと確保できるようにすることを強く訴えています。
同検討会の最大の課題は、医師の時間外労働の上限時間数を設定することですが、2019年1月11日の会合では、2024年4月から勤務医の時間外労働上限時間を年960時間・月100時間未満としつつも、地域医療の確保を踏まえ、対象を限定した特例として年1900~2000時間程度以内と設定する案が事務局から提出されました。2019年3月を目途に結論が出される見通しで、今後も議論の行方を注視する必要があります。

 

医師の時間外労働規制について(案)

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出典:厚生労働省 医師の働き方改革に関する検討会(2019年1月11日開催)資料「時間外労働規制のあり方について③(議論のための参考資料)」(6頁)

 

4. 新専門医制度による研修開始

2014年に一般社団法人日本専門医機構が設立され、2017年4月からスタートする予定だった新専門医制度は、1年間の延期の末、18年4月から基本領域研修がスタートしました。基本19領域で合計8378人の専攻医が採用されました。

ただ、専門研修を受ける医師(専攻医)が大都市に集中し、結果的に地域医療に大きな影響を与えるという指摘がありました。その指摘への配慮として、5都府県(東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県)で専攻医の定員上限(シーリング)が設けられていますが、19年度の専攻医の募集では、シーリングが遵守されているかを確認するなど、追加の対策がとられることになりました。
また、現時点では基本19領域の上のサブスペシャルティ領域について詳細が不明で、専攻医の不安のもとになっています。

同機構には、基本領域研修における地域医療体制への悪影響を排除するよう制度設計を見直すとともに、サブスペシャルティ領域の制度整備に向けて、積極的に情報発信していくことが求められます。

 

5. 医学部入試に「不適切な事案」約10件

文部科学省の局長が同省の支援事業で東京医科大学に便宜を図る見返りとして、同局長の息子を同大学に不正に合格・入学させたとして、2018年7月に受託収賄の疑いで逮捕、起訴されました。この文科省汚職事件をきっかけに、同大学の入試で、女子や多浪の受験者の点数を低くするような操作をしていたことが発覚。さらには、他の医科大学・医学部でも同様の操作が行われていることも明らかになりました。

一連の事態を踏まえて、全国医学部長病院長会議が2018年11月、「大学医学部入学試験制度に関する規範」を発表。公平性と「医療人確保」を勘案した提言で、①性差、②浪人年数、③内部進学枠・同窓生子弟枠―などについて具体的に述べています。今後、同会議による「大学医学部入学試験制度に関する規範」が有力な基準となりそうです。

*

以上のほかにも、2018年は医師の「働き方改革」に関連するニュースが多くありました。

厚生労働省は「医療従事者の需給に関する検討会」医師需給分科会の第3次中間取りまとめで、20 年度以降の医師養成数の方針を示しました。医師偏在対策を主眼とした「医療法及び医師法の一部を改正する法律」は、18年7月25日に公布、19年4月1日から施行されます。

様々な議論や話題が出ている中、医師の働き方を巡る制度や環境がどのように変わってくるのか、エピロギでは2019年も引き続き注視していきます。

(文:エピロギ編集部)

<参考>
厚生労働省 平成30年度診療報酬改定説明会
厚生労働省「平成30年度診療報酬改定の概要」
厚生労働省「平成30年度介護報酬改定について」
厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」
厚生労働省 医師の働き方改革に関する検討会
日本専門医機構「新専門医制度の開始にあたって」
日本専門医機構「理事長挨拶」
厚生労働省 今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会
全国医学部長病院長会議「大学医学部入学試験制度に関する規範」
文部科学省「医学部医学科の入学者選抜における公正確保等に係る緊急調査について」

 

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