“行きたい病院”に転職するために、押さえておきたい! 医療機関が医師の採用時にチェックする3つのポイント

「転職したい!」と思っている、あるいは転職活動中の方、転職先を決めるのに自分の希望にばかり目が向いていませんか?
医師不足のため、医師の転職は売り手市場です。とはいえ、選考の結果不採用になってしまうこともあるので、「ここで働きたい!」という病院やクリニックなどの医療機関があるなら、対策を万全にした上で臨む必要があります。

相思相愛の転職が成り立つために重要なのは、医療機関の求める医師像と医師の希望がうまく折り合いがつくこと。それでは、医療機関が求める医師像を、どうやって知ればいいのでしょうか。少なくとも、インターネットの求人ポータルの求人票を熟読するだけでは不十分なのは間違いありません。

院長や事務長が、応募してきた医師にどんなことを望み、どんなところを見ているのか。
医療機関のホンネと、採用時にチェックしているポイントをお教えします。

 

1.「何ができる」のか? … 実績をチェック

医師の採用を検討する側にとって重要なのは、応募者が「医師として何ができるのか」です。病院として地域や患者に求められている医療を実現するために、必要な診療を行ってくれる医師でなければ採用する意味がありません。ですから、まずは医療機関が「医師に何を求めているのか」を押さえることが大切です。

単に「募集」と言っても、その背景はさまざまです。医師が辞めてしまい後任を探しているのか、規模拡大のための増員なのか、新しい標榜科目を立ち上げたいのか。そうした募集の文脈によって求められる人物像は異なります。したがって、その医療機関がなぜ医師を募集しているのかという「募集背景」を知ることが重要です。

また、地域における医療機関の役割によっても、医師に求められるスキルは異なります。そのため、周辺にどのような医療機関があるのかや、住民の年齢層、患者層や疾患の内容を知ることも大切です。

そしてもう一つ。医療機関の診療体制によっても、求められるスキルは変わります。常勤医師数や他科目との連携状況、医師の年齢構成的に必要なのは若手なのかベテランなのかなどを確認することも重要です。

さて、応募を検討している医療機関の求める人物像を把握したら、「自分が期待されている役割を果たせること」を伝えるために、自分のスキルや経験の棚卸を行いましょう。

ご自身の取得資格や経験年数、これまでどのような体制の中にいてどのような立場で働いてきたのか、どのような症例をどれくらい積んできたのかなどを整理しておきましょう。科目の立ち上げや院長職に応募する場合は、これらに加えてマネジメント経験も求められます。過去の実績を一覧にするなどして、まとめておくことをおすすめします。

 

2.「どんな働き方」を希望するのか?…希望の勤務条件をチェック

勤務時間や勤務日数、当直やオンコールの回数、年収などの勤務条件について、応募する側と採用する側の希望がうまく擦り合うかは、採用における重要ポイントです。

選考が進むにつれ、互いにどこまで歩みよれるか、どこは妥協できどこが妥協できないかを摺り合せていくことになります。ご自身の生活や人生設計を踏まえ、希望する条件の中でどうしても妥協できないことは何かを明確にしておきましょう。ここにブレが生じると、先生に対する医療機関側の信頼も揺らぎかねません。

勤務条件の中でも特に焦点となるのが、勤務時間や日数、そして給与です。

勤務時間や日数について折り合いがつかない場合は、基本的に「採用は難しい」という結論になります。ただし、院長や事務長によっては、できる限り先生の希望に近づけようと調整してくれる場合もあります。

ただし、考えていただきたいのが、その調整の結果、そこに勤める他の医師に負担をかけてしまう可能性があるということです。同様の勤務形態の実例はあるか、制度だけでなく先生同士が助け合う風土があるかなど、実際に入って先生が入職してその条件で働いた場合に、肩身の狭い思いをしなくて済むかを確認することが大切です。また、病床数や外来数、ベッドの稼働率、検査や救急車の受け入れ台数などから、現場の忙しさを予測し、本当にその働き方が可能なのか確認することもお勧めします。

年収に関する交渉は非常に困難です。できればプロのエージェントの利用をお勧めします。もしご自身で交渉するのであれば、要求する希望年収を明確に算出する作業が必要となります。

希望年収を出す際、前の職場での年収を元に額を算出することを検討する方が多いのではないでしょうか。加えて、先生に働きに対してどれだけの金額を支払うことが適切かを客観的に試算できると、交渉がしやすくなり、またご自身の希望額が適正かどうかの判断もできます。判断材料になるのは、その医療機関に先生が入ることで診療報酬がどれだけ増えて売上や利益が出るのかや、法人全体や科目ごとの経営状態、他の先生の年収との兼ね合いなどです。簡易な計算方法としては、応募を検討している医療機関の病床数や稼働率、外来数や検査数と担当医師数などから診療報酬を算定することで、ご自身の売上をある程度想定できることと思います。このような客観的な試算をもとに話し合いができれば、余計なストレスなく年収額の交渉ができるでしょう。

 

3.「コミュニケーション」を図れるか?…人柄や既存スタッフとの相性をチェック

医師は患者相手の仕事であり、治療は他の医師やスタッフとのチームプレーにより成り立つもの。さらに、最近は医療の現場でも「サービス」が求められるようになり、接遇に力を入れる医療機関も少なくありません。そうしたところでは、採用にあたって医師のコミュニケーション能力を重視し始めています。そして、当然「面接」においてもそれはチェックされます。

とはいえ、「ハキハキ話せない人はダメ」というような、コミュニケーション能力に関する画一的かつ明確な合否の基準に基づいて選考が行われることは稀です。そもそも、医師に求められるコミュニケーション能力とは、専門科目や、外来か病棟管理か訪問往診かといった職務内容によって異なります。したがって、医療機関における面接においては、「この医師はうちの病院に入ってやっていけるかどうか」といった、上司や同僚、患者との相性を見るというニュアンスが強いでしょう。

もちろん、「人を話すときに、顔も上げずまったく目を合わせない」「極端に攻撃的」など、患者や周りの人間とコミュニケーションが取れないようでは診療に支障が出てしまうため、採用を見送られる可能性が高いでしょう。

しかし、たとえコミュニケーションに苦手意識をお持ちの方でも、面接対策で挽回可能です。あがり症の方でも、事前に想定される質問の答えを準備し練習することで、本番で落ち着いた対応が可能となります。面接が不安な場合は紹介会社に相談するのも一つの手段です。会社によっては、事前に面接官が誰でどのようなスタイルの面接をするのかを調べてくれます。また、病院側に「コミュニケーションは少し苦手だが、こんな長所がある」と、面接だけでは伝わらないあなたの強みを、第三者の目線から代わりに伝えてくれるところもあります。紹介会社を利用しない場合でも、例えば知人などを通じて応募先の選考の事前調査ができると、行きたい医療機関に就職できる確率を高めることができるでしょう。

ここまでお話してきたとおり、面接の対策は重要です。しかし、面接の際にしっかりとした受け答えをしようとするあまり、医療機関の求める人物像に合わせて演技をしてしまうことは非常に危険です。面接時の印象と就職後の勤務実態であまりにもギャップがあると、働き始めてからお互いに困ることになるからです。

医療機関側もある程度は「実際に一緒に働いてみないと本当のところは分からない」と考えていることが多いのも事実です。そのため、面接の場では一緒に仕事をしていく上での相性や、基本的なコミュニケーションをとれるかどうかを見ていると考えてください。医師の面接は比較的ざっくばらんな雰囲気で行われることが多いので、まずは肩の力を入れすぎず、自然体で受けるのがよいでしょう。

以上、医療機関が、医師募集に際し、どんなことを望み、どんなところを見ているのか。医療機関のホンネと採用時にチェックしているポイントをお伝えしました。採用側の目線も取り入れることで、ぜひ「ここに行きたい」と希望する病院やクリニックへの転職を実現してください。

(文・エピロギ編集部)

 

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