経費にできる?勤務医の節税は? 税金のお悩みに現役税理士がお答え
「税金対策は重要」そう分かっていながらも医師は日々の診察に加え、事務作業や研究など多忙な日々。税法をきちんと理解し、正しく対策を練ることは難しいのではないでしょうか。
そこで、今回は「税理士ドットコム」さんにご協力いただき、皆さんのお役に立ちそうな実際にあったお悩みをご紹介します。
「税理士ドットコム」とは?
昨今の働き方改革において「クラウドサイン」でも注目を集めている、弁護士ドットコム株式会社が運営する税務相談ポータルサイト。その中の「みんなの税務相談」では、様々な税務のお悩みに税理士が無料で回答してくれるサービスが好評でこれまで47,000件以上の質問が寄せられている。
外勤先までの交通費は経費にできる?
現在勤務医をしているものです。
収入源としては現在常勤の病院の他、当直や外来など非常勤の病院からの収入となっており、収入源が複数箇所あるため確定申告が必要です。
そこで1点、節税に関して質問させてください。
外勤先は車で1時間程度の位置にあり、交通費がかさみます。
ガソリン代を経費として計上することは可能でしょうか。また、経費にするために必要な方法はなにかございますでしょうか?
税理士の回答「給与所得者の特定支出控除」が適用できる可能性があり
相談者様の所得区分は給与所得に該当すると思われますので、通勤費に関しては「給与所得者の特定支出控除」が適用できる可能性があります。
但し、この特定支出控除の金額は一定の計算に従って算出され、また、給与の支払者の証明も必要となりますのでご留意ください。(服部 誠 税理士/参照:外勤先の交通費計上)
医師の副業は雑所得?事業所得?
毎月勤務医としての所得がありますが、それとは別にオンラインで医療相談を受ける仕事を行っております。
「報酬」として月数万円を頂いておりますが、これは雑所得か事業所得のどちらに分類されますでしょうか?
また、副業に関わるパソコンの購入費や通信費は経費とみなすことができるでしょうか?
税理士の回答客観的に判断すると雑所得
オンラインにて医療相談を受ける仕事はあくまで副業であって、本業で生計を立てていると思われること、
副業の収入金額や処理件数から客観的に判断すると、雑所得だと思います。
なお、収入を得るために直接必要な通信費などの支出は、必要経費になります。
パソコン購入費用については、10万円を超えると減価償却費として経費に算入することができます。
(中西 博明 税理士/参照:勤務医 副業の所得区分)
勤務医のすべき節税対策とは?
現在勤務医をしている者です。年収は約1300万円程度で、節税対策はふるさと納税、個人型確定拠出年金をしています。
生命保険には入っておらず、借家であるためローンなどはありません。
年収が増えると所得税の税率が変わり、損をしてしまうのではないかと不安で、仕事をセーブしてしまっています。
そこで節税対策について質問させてください。
更に当直業務を増やした場合、税率はどう変わるのでしょうか?
勤務医として法人化することはできるのでしょうか?また、更なる節税対策があれば教えてください。
税理士の回答給与に対しては所得控除を増やすか税額控除の活用を
勤務医の先生が医療機関から給与として支給されているものに関しては、所得控除を増やすか税額控除を活用して節税を図ることになります。
生命保険についても、今後のライフプランを考えながら上手に活用することで節税効果が期待できると考えます。
現状の年収から推定するに、所得税と住民税の限界税率は33%強と思われますので、今後年収を増やした場合には6割以上の金額が手元に残る計算になります。
そのため、無理に仕事をセーブする必要はないと考えます。
但し、極端に収入が増えますと上記の税率も上昇し手取り割合が低下しますのでご留意ください。
また、勤務医で法人化を考える場合、法人の収入にできるものは医療サービス以外の収入になります。
そして、勤務先に時間的な制約で縛られないことや、病院等の指揮監督下にないことが条件となります。
そのような業務が存在し、勤務先が法人と委託契約を結ぶことの承諾が得られる場合には法人化も可能となり、違った角度で節税対策を検討することができると考えられます。
(服部 誠 税理士/参照:勤務医 節税)
常勤医を維持したまま、産業医として法人成りするメリットは?
現在、常勤医として病院にて勤務しています。
同時に、研究日を利用して嘱託産業医としても勤務しています。
収入額は、産業医の方が病院より2〜3倍ほど多い状況です。そこで、節税対策について、3点質問させてください。
常勤医を維持したまま、産業医の方のみで法人を設立することは可能でしょうか?
法人化をできたとして、節税上のメリットとデメリットはどのようなものがあるでしょうか?
また、常勤先との兼ね合いを考えた場合、社会保険料の計算はどのようにすればよいでしょうか?
税理士の回答社宅や旅費規程により節税効果が。ただ、確定申告が複雑に。
常勤医を維持したまま、産業医として法人設立することは可能です。
そのデメリットは、法人になることで確定申告が複雑になり税理士コストがかさむこと、法人税均等割(約7万円/年)がかかることなどがあります。
一方で、社宅や旅費規程により節税ができる、
生命保険を経費で処理することができる、法人個人で所得を分散することで累進課税を緩和し、総合的に節税できるなどのメリットがあります。
また、社会保険は法人から得る報酬によって計算されることになります。
(水野誠 税理士/参照:産業医 法人成りのメリット)
代表理事の役員退職金を損金算入する際の注意点は?
総合病院の代表(医師)に対する退職金について質問させてください。
代表を退任した時に退職金を支給したいと考えております。
代表を退任した後も、医師として病院で勤務してもらいたいのですが、退職金を損金として認めてもらうためには、どのような点に注意をするべきでしょうか?
税理士の回答注意点はいくつかあるが、いずれにしても退職についてのまぎれもない事実が必要
あくまで原則論となりますが、主な注意点は以下のとおりです。
当該退職金の金額が適正であること、役員退職慰労規定等の規定がありそれに基づくものであること、
理事会議事録や社員総会議事録の作成や保管をしていること、実際に退職金を支給すること、
退職後の医師の報酬を代表理事時代の報酬から50%以上減少させていること等です。
また、退職についてのまぎれもない事実があることが必要となります。
もし退職後も経営に関与しているような場合には、退職の事実そのものが否認される可能性があるので、注意が必要です。
(田中聡一 税理士/参照:代表理事 役員退職金の計上)
医療法人を設立する際の現物出資は課税対象となる?
個人の歯科医院を医療法人にするにあたって不動産を拠出する場合、個人が消費税の納税義務者であれば、拠出した時点で課税資産の譲渡等に該当し、
納税義務が発生するのでしょうか?
また、基本財産や通常財産の拠出は返還義務があると思うのですが、それでも現物出資と同じであると認識してよろしいのでしょうか?
税理士の回答現物出資するのであれば、不動産は課税資産の譲渡等に該当
医療法人設立の際に、土地や建物を現物出資するのであれば、それらの不動産は課税資産の譲渡等になります。
譲渡益が生じた場合は譲渡所得の申告が必要となります。
医療法人に拠出するということは、医療法人の資産になるということであるため、このような扱いになります。
また、財産の返還は現金にて行います。上記の課税を避けるためには、土地や建物を拠出せず、賃貸借とするとよろしいかと存じます。
この場合、個人に家賃の支払いをすることになるため、不動産所得が生じます。(小林拓未 税理士/参照:医療法人 設立時の資産譲渡)
かならず関わるものだからこそ、上手な付き合いを
どんな活動でも、税金はついてまわるもの。だからこそ、税金に関する悩みは少なくしたいですよね。
「こういった場合はどうなるの?」など、ご自身のお悩みを相談したい方は「みんなの税務相談」で、無料で相談してみては如何でしょうか?
税理士があなたの悩みに実際に回答してくれます。
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(文・エピロギ編集部)
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