第4回 こんなコンサルタントは危ない!~ブラックコンサルタントにご用心
転職エージェントガイド/平田 剛士(ひらた・つよし)氏
- 転職エージェントガイド/平田 剛士(ひらた・つよし)
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人材ビジネス(以下、HR*ビジネスと表記)向けクラウドCRM提供企業にてマーケティング&セールスを牽引。国内で最も多くの転職エージェントと接点を持つ。独立後はHRビジネスコンサルタントとして活動し、業界各社にハンズオン型のコンサルティングサービスを提供。転職エージェントガイドとしては、ビジネスパーソン向けに、よりよい転職や転職エージェント活用をレクチャーしている。3,800名以上が参加する人材紹介ビジネス向けとしては国内最大のFacebookグループ『人材紹介コミュニティ』、人材紹介と人事向けの勉強会『これからの人材紹介』、さらにビジネスパーソン向けに『転職エージェントガイド』を運営。
*:Human Resourcesの略
みなさんこんにちは。転職エージェントガイドの平田剛士です。
前回の記事では、『信頼できるコンサルタントの見分け方』についてお話しました。
今回はブラックコンサルタントの事例をご紹介します。職業紹介のサービスを活用する医師が増えるなかで、顧客満足とかけ離れたサービスを提供する“ブラックコンサルタント” — 職業倫理意識が極めて低く、求職者のことを全く考えず自己の利益のみで活動する輩 — の事例もあります。
本記事ご一読の上、自分に火の粉がふりかからないように備えておきましょう。
1. 介在価値ゼロの横流しコンサルタント (危険度:★)
<事例>
「スカウトメールを受けて、ある人材紹介会社のコンサルタントと会いました。一通りヒアリングを受けたあと、打診されたポジションについてすこし突っ込んで質問してみたところ、『ちょっと、僕は担当ではないんで、この求人については詳しくわからないんですよねー』という信じられない回答がありました。そもそもわからないということ自体あり得ないのですが、せめて担当に確認ぐらいはしてほしい。まったく何のために存在しているのか……」
<解説と対応策>
有料職業紹介の役割は、医療機関と求職者の間に入ることで、双方のニーズを取りまとめてマッチングを成功させるところにあります。
一方、その担い手であるコンサルタントは特別な資格がなくても就業できてしまう職種(※1)であり、紹介会社によっては、十分な知識や力量のないコンサルタントが配属されていることもあります。こうした背景から、時にこのような介在価値ゼロのコンサルタントが登場します。もし、このようなコンサルタントに出会ってしまったら時間の無駄ですので、丁重に担当変更を申し出るか、相談をする紹介会社を変更しましょう。
※1「キャリアコンサルタント」と名乗るためには専門資格保有が必要(http://careerconsultant.mhlw.go.jp/p/about.html)
2.他の人材紹介会社経由で応募した求人案件をけなすコンサルタント (危険度:★)
<事例>
「転職活動にあたり複数の人材紹介会社に登録しました。その中のA社経由で○△病院を受けることにし、同時並行で他の人材紹介会社Bのコンサルタントに相談したところ、『現在応募している病院名とポジションをすべて教えてほしい』と言われたので、〇△病院の選考について話したところ、そのコンサルタントが嫌な笑みを浮かべ『〇△病院かー。なんで今あそこを紹介したかなー』というようなことを言われました。念のため理由を聞いてみたものの、どうも釈然としない内容でした……」
<解説と対応策>
これは前回の記事「信頼できるコンサルタントの見分け方」でお話した内容につながりますね。人材紹介会社は法人に紹介した求職者の就業が決定してはじめて、紹介先の法人から紹介料を受け取る立場にあります。
当然、競合他社経由で就職した求職者はその紹介会社の売上につながらないため、悪質なコンサルタントの場合、他社のサービスや応募先の病院を貶めることもあります。
このように根拠なく求人や他社を否定したりするコンサルタントは信頼に値しません。ただし、それが複数のソースによる明確な根拠があり誠実に再考を促された場合は、真摯に受け止める余地があるのかもしれません。そうした場合、コンサルタントに具体的な理由を確認するようにしましょう。
3.こちらの意見を聞かず特定の求人案件をゴリ押しするコンサルタント(危険度:★★)
<事例>
「A病院とB病院のポジションに内定が出たんです。私としては、今までの経験をより買ってくれ、新たに任されるポジションへのやりがいを考えてA病院を選ぼうとしたのですが、担当のコンサルタントはB病院をものすごく薦めるんです。たしかにB病院のほうが年収が高いというのは魅力なのですが、どうも薦めてくる理由が釈然としないんですよね。」
<解説と対応策>
人材紹介会社のコンサルタントは、コンサルタントという名称を名乗っているものの、一般事業会社の営業職と同様に業績目標を追っています。
コンサルタントの業績目標は企業によって異なりますが、大半の企業では「売上高」と「行動内容」に置かれています。
中には売上至上主義の人材紹介会社も存在していて、売上を達成しようという考えが前のめりになってしまい、求職者の心情を全く考慮せず、自分の売上目標達成ストーリーにはめ込むコンサルタントも存在します。
まれに、進行中の選考を応募者に無断で断り、給与が高額だったり紹介手数料の高い、より売上の見込める求人だけを打診し、意思決定を迫る悪質な輩もいます。
どれだけ自分に親身になってくれるコンサルタントであっても、その意見はあくまでも参考のみにとどめ、最終的には自分の考えで意志決定するとよいでしょう。
4.スケジュールや回答期限をやたらに短く切ってくるコンサルタント(危険度:★★)
<事例>
「顧客を自分の思い通りにハンドリングしたいのか知りませんが、自分のメールへの返事は『病院側の応募締め切りがどうのこうので明日の〇時までにお返事ください』といつも急かしてくるくせに、こちらから急ぎ確認や調整したい点があり依頼をすると、とたんにレスポンスが遅くなるんです。こちらを急かすなら自分も早く対応してほしいもんです。」
<解説と対応策>
人材紹介ビジネスの仕事は、医療機関と求職者の双方のニーズや確認事項を並行して調整しながら進めていくものですので、ある程度時間軸の締め切り等を設けるのは止むを得ないことです。
ただし、必要以上に時間を区切って意思決定を迫ってくるコンサルタントには注意したほうがよいでしょう。こうしたコンサルタントは営業成績が良くない場合が多く、仕事ができない彼らのシワ寄せがきている可能性があるためです。回答期限を提示された場合は、しっかり理由を聞きましょう。
特に、入職意志決定の返事は、ご家族でよく検討するのは当たり前のことです。どの業界でもそうですが、月末や決算時期に重なると連絡が多くなったり、急に鼻息荒くたたみ込んできたりする営業マンは信用できません。あまりにもひどい場合は、その人材紹介会社の苦情窓口に相談するのもよいかもしれません。
5.勝手に推薦して面談を組むコンサルタント (危険度:★★★)
<事例>
「求人媒体に登録したところスカウトがあり興味があったので早速応募の返信をしました。するとその日のうちに『先方が会いたいと言っている』と電話がありました。レジュメを送ったばかりで、まだコンサルタントと面談もしていないので、不思議に思い聞いてみると、すでによかれと思って先方に書類を提出したと言います。自分の許可もなく勝手に推薦したことに驚き、面接を拒否したところ、『こちらの顔を立てて面接だけは行ってくれないか。交通費と日当を出すから』と懇願されました。もちろん、丁重にお断りをしました。なんで会ったこともないあなたの顔を立てる必要があるのでしょうか」
<解説と対応策>
2005年に個人情報保護法が全面施行されて以来、今や絶滅した感のある話ですが、人材紹介ビジネスへの苦情として似たような事例はいまだに発生しているようです。
なぜこのようなことが起きてしまうかというと、求職者の絶対数が少ない中、先に推薦をしたほうが勝ちというルールがあるからです。
もちろん、求職者の意志がない推薦など存在してはいけないのですが、後付けで承諾を得ればいいと考えている能天気な輩もいるようです。
こうした被害を避けるためには、コンサルタントと実際に会った上で、個人情報を任せられると感じてから書類を提出するというステップを取るとよいでしょう。
6.困った時に相談に乗ってくれないコンサルタント(危険度★)
<事例>
「とにかく仕事を辞めたくて紹介会社に登録したんです。いろんな条件の求人を紹介してくれて、対応も早いし、こんなにいろんな選択肢があるんだって、未来が広がった気がしました。でも、すべての希望が満たされるとこなんてないんですよね。逆に自分がどんな医療機関で働きたいのか分からなくなってしまって……。コンサルタントに『相談に乗って欲しい』ってお願いしたんです。そしたら『新しい求人が出たらご紹介するので、応募したいところが見つかったら連絡をください』って、全然会おうとしてくれなくて。登録した時はその日のうちに『会いましょう』って電話してきたくせに、こちらが必要としている時には全然相談に乗ってくれないなんて、自己本位にも程がありますよね?」
<解説と対応策>
ここまでお話してきたように、人材紹介会社は、求職者が就業したタイミングで紹介先の法人から紹介料を受け取り、収益を得ています。また、紹介会社に所属するコンサルタントは、ほとんどの場合、会社から「売上高」や「行動内容」などの目標数値が課せられています。
その結果、中には、自身の売上に追われ、お金にならない(すぐに就業しない)求職者の対応は後回しにして、時間をとってくれない輩もいます。しかしこれは、一概にコンサルタント個人の責任とはいえません。その会社(≒経営者)が求職者を「商品」としてのみ扱い、その人の「人生」ではなく「売上」を重視した結果、社員であるコンサルタントが相談に乗りたくても対応できない状況に追い込まれている可能性もあります。
そのような会社やコンサルタントにあなたの大切な人生の転機を相談するのは危険そのものです。
もちろん、転職活動時期によっては、退職の3か月前など、具体的に応募できる求人が多く出揃うタイミングで一気に応募先を絞り込むのが最適なこともあります。しかしその場合も、きちんとしたコンサルタントであれば、事前に説明をしてくれるはずです。
転職活動のタイミングに合わせて必要な対応をしてくれない、相談に乗ってくれないなど、ご自身が大切にされていないと感じた場合は、早めに見切りをつけて他の人材紹介会社に相談する判断を下すことも大切です。
大前提として、転職活動はコンサルタントがしてくれるものではなく、求職者であるみなさん自身が主体的に行うものであり、コンサルタントはあなたの要求すべてに応えてくれる完全無欠な存在ではありません。
自分は客なんだからやってもらって当たり前と思っていないか。その要求は妥当なものか。ご自身に対する客観的視点は忘れないようにしましょう。
7.ニコニコしながら経歴詐称を推奨するコンサルタント (危険度:★★★)
<事例>
「事情があって勤務歴が短い職場がいくつかありまして、後々のトラブルを考えそのことをコンサルタントに告げたところ、ニコニコしながら『あー大丈夫ですよ。そのぐらいの期間なら職務経歴書に書かなくても大丈夫です。先方には僕が後で説明しますので』と言われました。不安に思ってネットで調べてみたところ、やはりこのようなアドバイスをするコンサルタントがちらほらいるようで……」
<解説と対応策>
言葉は悪いですが、人材紹介会社が取り扱う商品は求職者です。そのため、中には求職者を『仕上げる』『仕込む』という嫌な言葉を使い、職務経歴等についての不正や虚偽を推奨する人間もいます。
学歴や職歴やスキルの詐称は、その場では些細なことに思われても一度採用側に提出してしまったものは記録に残ります。就業後に発覚した場合は雇用契約締結時に取り交わされる職務規定における懲戒解雇事由に該当しますし、業界におけるあなたの悪評にもつながるかもしれません。
そんなときに、人材紹介会社のコンサルタントに任せていたからとか、勧められたから云々と言ってみても、誰もその事情を汲み取ってはくれませんので注意しましょう。
コンサルタントに面談で伝えることや採用側に提出する書類については、事実のみを伝えるようにしましょう。また、実績を脚色しすぎて本来の実力を過度に盛り付けてしまうのも後々のトラブルのもとです。
8.無断で提携先へ情報を流すコンサルタント(危険度:★★★)
<事例>
「人材紹介会社Aに登録してコンサルタントと面談をした後に、知らない人材紹介会社Bのコンサルタントから連絡がありました。嫌な予感がしてBのコンサルタントに聞いてみると、『A社と当社はアライアンスを組んでいまして』とのこと。私としては、あまり多く自分の情報が拡散するのは望んでいないので、A社B社ともに紹介をお断りして個人情報の削除をお願いしました。A社のコンサルタントに聞いてみたところ、面談のときに説明したはずだと言うのですが、書面にはその内容は含まれていませんでした。」
<解説と対応策>
連載の第一回「医師の転職マーケットと人材紹介会社の活用について」でお話したように、人材紹介ビジネスは不動産ビジネスと同様に、獲得した登録者を自社で成約させることで利益が生じる仕組みです。
一方、自社だけでは紹介可能な求人案件に限りがあったり、特定の紹介会社が相場より好待遇な条件で独占的にクライアントと締結している人材紹介契約も存在しますので、複数の人材紹介会社同士で提携していることもしばしばです。特に中小の人材紹介会社になるとこの傾向は強くなります。
みなさんが人材紹介会社に登録して個人情報を提供する際は、提携企業の有無と、匿名データでも許可なく個人情報を他社に流さないということについて念を押しておくとよいでしょう。
まともな人材紹介会社の場合、ホームページ等に登録時の個人情報受領の書類に同事項についての規定が書かれていますので、確認の上登録するようにしましょう。
匿名データでも出身大学の卒業年や専門科目やスキル等でみなさんが転職活動をしているということが公になってしまう可能性は十分にあり、無作為に個人情報がばらまかれた結果、みなさんの転職活動が現在の職場に伝わってしまい、スムーズな転職活動ができなくなってしまったという事例も起きています。
9.喫茶店面談で声高に話すプライバシー完全無視のコンサルタント(危険度:★★★)
<事例>
「転職するかまだ決めかねていたものの興味があったので、スカウトメールをもらったコンサルタントと、指定された職場近くの某大手チェーンの喫茶店で会ってみたんです。結構込み合う時間帯に。そしたらこのコンサルタントが私の経歴等について大声で話すんですよ。『転職、転職』って、もう嫌がらせかと思いましたよ!」
<解説と対応策>
医師向けの人材紹介会社の場合、求職者の都合を気遣って、病院や自宅近辺に近いホテルのロビーや客席同士が比較的離れた喫茶店等で面談をすることが一般的です。一方、こうした場所はクローズドな場ではありませんので、誰の眼や耳があるかわかったものではありません。
こうしたリスクをなくすためにも、人材紹介会社のコンサルタントに会うときは、そのオフィスに出向いてみるというのも一つの方法です。実際、医師向け以外の人材紹介会社のサービスにおいては、求職者が人材紹介会社に登録に行くのが一般的です。
いずれにせよ、パブリックな場所で秘密事項を大声で話すコンサルタントとは、早急に縁を切ったほうがよいですね。何をされるかわかったものではありません。
「え!? 大袈裟な! そんなコンサルタントなんていないでしょ」と思う方は、平日に、街中でよく見かけるような喫茶店で数時間読書でもしてみてください。すぐに遭遇するはずです。ときに求職者へ説教を垂れているコンサルタントがいることも。
10.居酒屋であることないことを言いふらす酔っ払いコンサルタント(危険度:★★★)
<事例>
「何か気に障ったのかしれませんが、同業者(人材紹介会社)の飲み会などで、特定の登録者の悪口を実名でボロクソに言う人がいます。もちろんそんな非常識な方はほんの一部なので、周りは冷ややかに見ているのですが、酒を飲むとダメみたいです。そういったことがあってからその方との接触は控えるようになりました」
※人材紹介ビジネス従事者からのエピソードです。筆者も実際目の前で話されたことがあります。
<解説と対応策>
自分の情報が、時に歪められながら、知らないところで広められているという事実。怖いですね。職業倫理の欠片もありません。
コンサルタントがブランディングや求職者獲得目的でブログ等の情報発信をすることもよくみられるようになりました。
一方、明らかに本人の掲載許可もとっていないのに、わかる人からみれば個人が特定できるような形で、相談内容等を面白おかしく公開したり、酒の勢いで企業や求職者への恨み節を公開している方もいます。(ネットリテラシーが低い中高年コンサルタントに顕著)
これはもうコンサルタントに実際に会って、信頼できるかどうかを見極めるということに尽きると思います。
以上で、今回のお話を終わりにします。いかがでしたでしょうか。
第5回は、「人材紹介会社との上手な付き合い方」をお送りする予定です。
おたのしみに。
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