【転職エージェントガイドが語る】知っておきたい医師の人材紹介会社活用ノウハウ

第1回 医師の転職マーケットと人材紹介会社の活用について

転職エージェントガイド/平田 剛士(ひらた・つよし)
https://www.facebook.com/hiraaata
人材ビジネス(以下、HR*ビジネスと表記)向けクラウドCRM提供企業にてマーケティング&セールスを牽引。国内で最も多くの人材紹介会社と接点を持つ。独立後はHRビジネスコンサルタントとして活動し、業界各社にハンズオン型のコンサルティングサービスを提供。転職エージェントガイドとしては、ビジネスパーソン向けに、よりよい転職や人材紹介会社の活用をレクチャーしている。3,800名以上が参加する人材紹介ビジネス向けとしては国内最大のFacebookグループ『人材紹介コミュニティ』、人材紹介と人事向けの勉強会『これからの人材紹介』、さらにビジネスパーソン向けに『転職エージェントガイド』を運営。

*:Human Resourcesの略

1.転職エージェントガイドとは?

エピロギ読者のみなさん、こんにちは。
転職エージェントガイドの平田 剛士(ひらたつよし)と申します。

エピロギのサイトテーマは「きっと、もっと、医師の働き方は選べる。」とのことで、本記事をご覧のみなさんの多くも、これからの人生における働き方をご自身にとって納得できるものにしたいと考えていらっしゃるのではないでしょうか。

私は常日頃、人材紹介ビジネス向けにコンサルティングサービスを提供しながら、キャリアや転職を考えているビジネスパーソンへ転職市場と人材紹介会社の活用法をガイドしています。

これまで数千名の人材紹介会社のコンサルタントとビジネスをご一緒してきた中で、人材紹介会社と求職者の間にある転職支援サービスへの認識のズレについて多く見聞きしてきました。

たとえばそれは求職者側による過度な顧客意識であったり、人材紹介会社側による求職者軽視だったりします。

なぜこうしたミスマッチは起こるのでしょうか。

これはもちろん人材紹介会社側にサービス品質が低い事業者がいるという場合もありますし、求職者側が転職市場や人材紹介会社について誤解をもっているために起きている場合もあります。そしてなによりこれらのミスマッチは人材紹介というビジネスモデル自体が必然的に生み出してしまう歪みでもあります。(後述の第三項「人材紹介業とビジネスモデルについて」で言及します)

インターネットで人材紹介会社に関する検索をすると数多くの記事が目にとまります。一方、そうしたネット掲示板や知恵袋系のコンテンツで正確ではない情報が広まっていることも事実です。

このような状況をふまえ、少しでもエピロギ読者のこれからキャリアにおける「選択」に役立てるように、転職エージェントガイドという第三者視点から、複数回にわたり人材紹介会社の活用法についてお話していきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 

2.医師の転職マーケットについて

医師が転職する際、その方法は大きく3つに分けることができます。一つがご自身で直接医療機関に応募する自己応募。そして、人材紹介サービス(人材紹介会社)を使ってする転職と、知人からの誘いやツテを使っての転職です。

それぞれのメリットとデメリットをまとめたものが以下の表です。

■医師の転職3パターン

平田さん連載【1】文中画像_01

※出典:『7ステップでうまくいく 初めて転職する医師のための転職成功マニュアル』(株式会社メディウェル)

 

自己応募、人材紹介会社の活用、知人紹介と、それぞれ一長一短ありますが、人材紹介会社の活用という選択肢は、なかなか時間をとれない在職中でも転職活動を進めることができ、非公開求人にアプローチできたり、雇用条件をはじめとして条件交渉を代行してもらえるという点で、近年利用者が増えています。

次項では、この人材紹介会社の活用について、人材紹介業とビジネスモデルについて説明していきます。

 

3.人材紹介業とビジネスモデルについて

「人材紹介会社」や「転職エージェント」と呼ばれるのが、「有料職業紹介事業者」です。同事業者は厚生労働省管轄の労働局の許認可を受けて事業活動をしています。

「有料職業紹介」と聞くと、転職の相談をする側が費用を払う必要がありそうな印象を受けますが、紹介会社はすべての費用を採用側である医療機関に請求して成り立っています。

実はここに、みなさんと人材紹介会社との間で起きる「摩擦」の原因が潜んでいます。

人材紹介は不動産の賃貸仲介ビジネス同様、マッチングビジネスの一形態です。以下の図をご覧ください。

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賃貸仲介モデルでは、仲介者である不動産屋が、大家と引っ越し希望者の両者からフィーを受け取る仕組みが一般的です。

一方、人材紹介モデルでは、求職者はなんら費用を払う必要がなく、キャリアコンサルティングを受けることができ、紹介会社が獲得した求人案件を紹介してもらい転職することができます。

一般的にビジネスでは、お金をもらう側がクライアントです。つまり、人材紹介会社にとってより重要なクライアントは医療機関なのです

一方、言葉は悪いですが、人材紹介会社は「商材」として求職者を獲得しマッチングしないと利益を得ることができません。そのため、求職者にも最大限の配慮をしています。

また、人材紹介会社に登録後、実際にみなさんの転職支援をするコンサルタントも人間ですので、目の前の求職者にたいして最大限支援をしたいという気持ちも、もちろんあるはずです。

先ほど、「摩擦」という表現をしましたが、人材紹介会社と求職者と医療機関の3者のビジネスバランスを理解できていない場合、求職者は過度なサービスを紹介会社に求めてしまったり高飛車な対応をとりがちになります。その結果、双方の期待値のズレが生まれてしまいます。ネット上に多く流れている人材紹介会社へのクレームの大半はこのズレから生まれているといっても過言ではありません。

「せっかく登録してやったのに、たいした求人を紹介してくれない」
「面談など、どうでもいいから求人だけ紹介してくれ」

こういったスタンスで人材紹介会社を利用すると転職者であるご自身のためになりません。

一般のホワイトカラーの転職市場と比較し、求職者集団の少なさから医師転職市場は圧倒的に求職者が優勢という構図があります。

人材紹介会社を活用した転職成功を実現する場合、転職市場の偏りはありながらも、決して驕らず、人材紹介会社にとってファーストクライアントは医療機関であることを十分理解し、あくまでもビジネスパートナーとしてのスタンスでコンサルタントとコミュニケーションをとることを意識しておくとよいでしょう。

コンサルタントも人間、と先ほどお話しましたが、やはり同じ医師でも支援したい医師、支援したくない医師がでてきます。後者にあてはまってしまうと結果的に不利なのはみなさんもお気づきかと思います。
求職者とコンサルタントの双方で信頼関係を築くことができれば、以下のような人材紹介会社活用のメリットを得ることができます。

① キャリアの棚卸ができる
実際に転職しなくてもスキルやキャリアについての棚卸を手伝ってもらえる

② 在職中の転職活動がしやすくなる
就業中も人材紹介会社が日程調整等、求職者の代わりに動いてくれる

③ 公募案件以外にもアプローチできる
自己応募では見つけられない求人案件にアプローチできる

④ 条件交渉を代行できる
代理人として人材紹介会社に雇用条件の交渉をしてもらえる

 

4.人材紹介会社は不当な「中間搾取」をしているのか!?

認知度が高いため世間から叩かれやすい人材派遣ビジネス同様、人材紹介会社も不当な「中間搾取」産業なのではないかという指摘がネット上にはあふれています。

よく聞かれる話題は以下の通りです。

「人材紹介会社の介在で、自分の給料は少なくなっているのではないか?」
「自己応募のほうが、給与が高くなるのではないか」

ご安心ください。人材紹介会社を介さないで転職をした場合でもみなさんの年収はさほど変わりません。これはポジションに対して支払う年収は、医療機関ごとに経験年数や実績・スキル等で給与水準が決まっているからです。重要なのは条件交渉力ですので、人材紹介会社を活用し適切な交渉ができた場合、年収面を含め、よりよい条件で転職できる場合だってあります。

ちなみに、野球やサッカー等であれば、プロの選手はスポーツエージェントにチームやクラブとの年俸交渉を委任しています。これはご自身で報酬交渉をするよりも第三者をたてて交渉をしたほうが成功しやすく、かつ後ほど双方の関係性に角が立ちにくいためです。

スポーツエージェントはスポーツ選手のマネージメントやプロモーション代行や移籍交渉をすることによって選手から成功報酬を受け取るビジネスモデルです。マッチング成功で報酬を得るという点で、スポーツエージェントと人材紹介会社は近しいものがありますが、後者は採用企業から成功報酬を受け取っている点が異なります。

厚生労働省の発表によると、国内の医師平均年収は14,562,306 円(平成27年実施の「第20回医療経済実態調査 (医療機関等調査)」より)。そして、人材紹介会社は医師の転職決定によって、20~30%程度の紹介料を医療機関から受け取ります。

仮に年収1,500万円で紹介料が20%とすると、1,500万円×20%=300万円ですね。 この300万円のなかで、人材紹介会社は以下の費用をまかなっています。

① オフィス費用 ② 人件費 ③ 広告宣伝費(母集団が少ない医師を集めるために高額な費用がかかります) ④ その他経費(面談時の飲食・みなさんが決定するまでの便宜をはかるための費用)

人材紹介会社が開拓した求人、面談した求職者が100%決定するわけではないのは、みなさんもご存知の通りです。

そしてなにより②人件費で雇用される各社のコンサルタントは、医療機関と求職者の双方のニーズを真摯にくみ取りマッチングし、ときには双方からのクレームに板挟みになります。粘り強く条件交渉をしてくれる方もいます。

人材紹介会社の仕事に満足できない場合「中間搾取」と表現するのは仕方ないかもしれません。でも、もし良い仕事とおもったらぜひ言葉にだして感謝の意を伝えると、人材紹介会社との関係性もよりよいものになり、みなさんの転職成功の可能性も向上することでしょう。

第2回は、「信頼できる人材紹介会社の見分け方」をお送りします。
多くの人材紹介会社の中からどのように信頼できるパートナーをみつけたらよいのでしょうか。おたのしみに。

 

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