【特集】今さら聞けない「医師の働き方改革」

第1回:医師の「働き方改革」とは~残業時間の上限規制と応召義務

現在、2024年の施行を目指して「医師の働き方改革」の検討が進んでいます。
医師の働き方において、何が問題とされ、どう解決しようとしているのか。医師の過重労働に依存した医療提供システムから脱却できるのか。「エピロギ」では、5回にわたり「医師の働き方改革」に関する国や医療関係団体の動きを紹介します。

第1回目となる今回は、そもそも医師の「働き方改革」とは何か、その概要を解説します。

 

 

そもそも、「働き方改革」とは?

「働き方改革」とは、政府主導で進めている労働や雇用全般に関わる改革だ。

少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少による労働力不足を見据え、労働の担い手を増やし生産性を向上させるため、多様な働き方を支援するための法整備やしくみづくりを含め、さまざまな検討が進んでいる。

2016年9月より、賃金引上げ労働生産性向上、健康とワークライフバランスを確保しつつ働き続けるための長時間労働の是正、育児や介護との両立など働く人のニーズの多様化を踏まえた柔軟な働き方がしやすい環境整備非正規雇用の処遇改善など9つの分野について、具体的な方向性を示すため、「働き方改革実現会議」が開催されている。

会議は、安倍首相が議長となり、産官学の有識者を集め10回にわたって行われた。その結果、2017月3月に「働き方改革実行計画」がまとめられ、今後のロードマップが公表された。

大きな柱は「残業時間の上限規制」と、正規と非正規で不合理な待遇差をなくす「同一労働同一賃金」。2018年1月22日から6月30日までの通常国会で、関連法案が提出される模様だ。

2019年4月から大企業で残業時間の規制が適用され、2020年度には同一労働、同一賃金が実施され、さらに中小企業での残業時間の上限規制が適用される。
残業時間については、2019年4月から大企業では原則月45時間、年360時間以内に規制される。ただし、労使であらかじめ合意すれば年720時間まで延長できる。

なお、医師については特殊な取扱いとし、「改正法の施行期日の5年後を目途に規制を適用することとし、医療界の参加の下で検討の場を設け、質の高い新たな医療と医療現場の新たな働き方の実現を目指し、2年後を目途に規制の具体的な在り方、労働時間の短縮策等について検討し、結論を得る」ことが決められた。

 

医師の働き方改革~「応召義務」の特殊性と残業時間の上限規制

「医師の働き方改革」については上述した国の「働き方改革実行計画」(以下実行計画)を受け、国の働き方改革という大きな枠組みのもとで、医師に特化した働き方改革の検討が行われている。

実行計画の発表後、厚生労働大臣の諮問機関である労働政策審議会が検討を行い、次の3点について決定した。

  • 1.医師も時間外労働規制の対象とするが、医師法第 19 条第1項に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要である。
  • 2.2019年4月からの労基法の法改正の2年後を目途に、医師の時間外労働規制の具体的なあり方や労働時間の短縮策等について検討し、結論を出す
  • 3.2019年4月からの労基法の法改正の5年後を目途に規制を適用する。

参考:「時間外労働の上限規制等について(報告)

これを受けて、2017年8月2日から厚労省主催の有識者検討会で、「医師の時間外労働規制の具体的なあり方や労働時間の短縮策等について検討し、結論を出す」ための「医師の働き方改革に関する検討会」が有識者、医師団体などの関係者を招集して計7回開催されている。医師という特殊性のある業務のなかで、時間外労働の上限規制をどのように適用するかを検討し、タスクシフティングなどによる労働時間短縮などの具体策を検討している。

次回は、「医師の働き方改革に関する検討会」で、具体的にどのような検討がなされているのか、議論の概要を紹介する。

 

文中図_1

 

(文・奥田由意)

※本記事に掲載の情報は基本的に2018年3月5日時点のものです。

 

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