「医師の働き方改革」取り組み事例紹介

時間外労働100時間の産婦人科で、残業時間の半減を実現!

「チーム制」「時間外業務を発生させない仕組みづくり」「ICT活用」「タスク・シフティング」~明日から実践できる10の取り組み

柴田 綾子 氏(産婦人科医/淀川キリスト教病院 産婦人科 副医長)

医師の長時間労働是正を目指す「医師の働き方改革」。2019年3月には、年間の時間外労働の上限時間が「年960時間(一部1860時間)」に定められ、2024年4月からの適用に向け各医療機関はその実現が求められています。

しかし、厚生労働省(以下、厚労省)や医療業界団体による医療機関調査の結果を見ると、見通しは厳しいと言わざるを得ません。救急の現場において医師の業務負担を減らすには「医師の増員」が必要であると回答した医療機関は約半数にのぼりました1)。また、救急医療に限らず、多くの調査で「複数主治医制」や「シフト制」、上限規制と併せ定められた「インターバル」の導入率は低く、「対応不可」「検討未着手」とする医療機関も少なくありません。日本病院会の調査2)では、「医師の労働環境改善は難しい」とする医療機関が32%という結果も報告されています。

そんな中、「残業時間の半減」や「当直翌日の休み」「月2日の有給取得」等を実現させた医療機関があります。淀川キリスト教病院産婦人科です。
以前は月100時間の残業や当直翌日の通常勤務は当たり前で、当直可能な医師に業務が集中し不満が溜っていたと言います。そこで取り組んだのが、女性医師の活用を前提とした「主治医制からチーム制への移行」や「時間外の業務をなるべく発生させてない仕組みづくり」、「ICTの活用による業務効率化」、「タスク・シフティング」など、その多くが「医師の働き方改革に関する検討会」でも挙げられた対策の数々でした。

どうすればこれらの取り組みが実現できるのか。実現のための仕組みづくりや導入までの道筋、運用における工夫について、同科の副医長・柴田綾子先生に紹介いただきます。

1)日本医師会「医師の働き方改革と救急医療に関する日本医師会緊急調査」
2)日本病院会「勤務医不足と医師働き方に関するアンケート調査」

 

はじめに

「働き方改革」にはこれが正解という解答はありません。それぞれの医療現場のニーズや、職場の状態に応じた変化を考える必要があります。

産婦人科では女性医師の割合が年々増加しており、30代では女性医師の割合が60%を超えています。その一方で当直やオンコール時の緊急手術(帝王切開術など)が多く、時間外労働が多い科です。女性医師が出産後も働き続けられる支援をしながら、男性医師を含む未婚女性医師の業務負担を減らす工夫がまず必要不可欠でした。

この記事では、どのように「働き方改革」を進めてきたか、その中で直面した困難や今後の課題を含めて紹介していきます。少しでも皆さんの参考になれば幸いです。

 

5年前は当直明けに夜まで残っていた

多くの病院と同じように「当直の翌日も通常業務で夕方まで勤務」「主治医制」が当たり前だった5年前。当直する医師は(当直中に緊急入院した患者など含め)担当患者が増加し、当直をすればするほど労働時間が増え業務が増えるという悪循環に陥っていました。

一方で、妊娠・出産した女性医師は当直・オンコールが免除されており、私のような未婚女性医師のなかで不満感が溜まっていました3)。職場の雰囲気が悪くなったことが、働き方改革に取り組む一つのきっかけになりました。

あれから5年、現在では

  • ・当直翌日は朝から帰宅
  • ・チーム制
  • ・時間外の呼び出しは無し
  • ・月に2回は平日の有給休暇取得
  • ・夏休みは1年に2週間

を実践しています。

※参考までに5年前の当科の人員構成は、常勤医9人(うち専攻医3人、育児中の医師3人、産休中の医師0人)、非常勤医2人。年間分娩数1300件、帝王切開術約350件、婦人科腹腔鏡手術54件で、医師一人あたりの入院患者は 1日平均5-6人(主治医制)。当直は1名体制で、多い医師で月4-5回の当直に加え、主治医としての判断や対応も含め月4-5回程度のオンコールが発生していました。
現在の人員構成は、常勤医12人(うち専攻医2人、育児中の医師3人、産休中の医師1人) 、非常勤医1人。年間分娩数1200件、帝王切開術350件、婦人科腹腔鏡手術200件 で、医師一人あたりの入院患者は 1日平均5-6人(チーム制)。当直は1名体制で、多い医師で月4-5回の当直と、緊急帝王切開や手術対応のみ月4-5回程度のオンコールが発生しています。

3)妊娠・出産する女性の業務負担の軽減だけをおこなうと、それ以外のスタッフ(男性や未婚女性医師)の負担が増え現場の不公平感や不満感がたまる現象は「資生堂ショック」等で詳しく解説されている。
参考)「資生堂ショックから考える、女性の「キラキラ職場」の今後

 

「働き方改革」実施後の現在の様子

働き方改革をしてから私の時間外労働数は月100時間から半分以下になりました。
当直をすれば翌日に休めるので、当直業務の負担感も減りました。当直した医師は、朝から業務が免除となり、外来や手術は代診医が担当します(あらかじめ担当手術前日に当直が入らないように調整はされています)。夏休みはほぼ100%、月2日の平日有給は約8割の取得率で、カレンダーで一元管理されてスタッフに公表されています。

 

まず導入すべき4つの取り組み

そうはいっても「すぐに抜本的な改革なんて難しい」という現場が多いと思います。
そのような職場でも導入可能な、時間外労働を減らす取り組みは以下4つです。

  • [医師の時間外労働を減らす取り組み]
  • 1. 病状説明の時間の掲示
  • 2. 時間外の相談は当直医に集約し、主治医を呼び出さない
  • 3. カンファレンスの業務時間内開催
  • 4. 業務効率化ツールの導入

■取組1. 病状説明の時間の掲示

当院では病院ホームページ上に、「病状説明は業務時間内に行います」と掲示しています。もちろん緊急時は夜間や休日でも病状説明を行いますが、入院中の患者さんの予定の病状説明は業務時間内を推奨しています。「医師が個別に断ればいいのではないか」という意見もありますが、まずは施設や科全体として方針を明文化することが大切です。

 

出典:淀川キリスト教病院HP「医師からの病状説明等に関するお知らせ」

 

■取組2. 時間外の相談は当直医に集約し、主治医を呼び出さない

当直医が設定されているにもかかわらず、主治医や担当医が時間外に電話を受けたり、呼び出される事態を極力減らすことが必要です。そのため、看護師や病棟スタッフから直接医師へ電話連絡をすることは控え、まずは当直医にすべて相談するようにしています。当直医が必要と判断した場合は、当直医から担当医や主治医へ連絡を行います。

■取組3. カンファレンスの業務時間内開催

カンファレンスを業務時間外に開催した場合、参加者全員の時間外労働が発生し、かつ育児中の女性医師などは参加できないことがあります。そのため、昼間休憩や、朝の外来開始時間を30分遅らせ、業務時間内にカンファレンスを行うようにしています。

 

■取組4. 業務効率化ツールの導入

カンファレンスの時間を最小限にするためには、日頃からスタッフ全員で情報共有をしておくことが必要です。当科ではメーリングリストやSlackを活用して、毎日の業務内容(代診・当直明け医師の確認)、当直の申し送り、緊急手術連絡などをしています。Slackにはカレンダー機能やデータ共有機能もあるため、勉強会やカンファレンスのリマインダー(30分前にアラーム)、勉強になる論文共有なども行っています。
※個人情報の管理には特に注意を払って活用する必要があります。

 

労働時間の削減に大きな効果がある4つの取り組み

次に、導入まで時間を要しましたが、長時間労働の根本的な解決に繋がった取り組みを4つ、導入実現のための道筋や運用における工夫も含め、紹介します。

  • [医師の時間外労働を減らす取り組み]
  • 5. 当直翌日の業務削減
  • 6. 主治医制からチーム制へ
  • 7. 当直への申し送り時間の設定
  • 8. 平日の有給休暇の導入

■取組5. 当直翌日の業務削減

時間外労働が長い原因は、当直回数が多かったり、当直翌日に勤務を続けていることにあります。時間外労働を減らすには、当直翌日の業務を減らすことが必須です。

そこで

  • ① 当直中に新規に入院した患者は翌朝に担当医師を決定する
  • ② 当直翌日は手術や外来を交代する
  • ③ 当直翌日に帰れなかった場合は、代休をとる

の3つを実践しています。

当直帯で新規入院になった場合、翌日の午後や夕方に病状説明を求められることが多々あります。担当医を新規に決めておくことで、当直医が帰宅することが可能となります。また、労働時間が長くなっている医師は平日の有給を多めに取得できるよう調整をしています。

■取組6. 主治医制からチーム制へ

時間外の呼び出しを減らし、当直医の翌日帰宅を実現するためには、主治医制から複数担当医制/チーム制への移行が不可欠です。当科では半年近くかけて主治医制からチーム制へ少しずつ移行してきました。

まずは「複数担当医制」への移行が第一歩です。診療スタッフを2つのチームに分け、主治医に加えてチームメンバーを担当医として登録するようにしました。主治医が不在の時間帯は基本的に担当医が方針や指示を出すこと、担当医も不在の時間帯は当直医が方針を決定することにしました(必要時は、担当医や当直医から主治医に相談して方針を決めることもあります)。
チーム分けのメンバー表とルールは病棟にも掲示し看護師にも周知しておくことで、方針決定の担当者が今誰なのかを明確にします。

複数担当医制の導入によって、当直明けや時間外での呼び出しが無くなるだけでなく、外来時や手術中の病棟看護師からの電話が減り診療中断が少なくなることも分かりました(主治医が対応できないときは別の担当医が対応するため)。また、複数の医師が診療内容を確認するため、検査漏れ等が防止でき診療の質向上にも役立ちます。

完全チーム制に抵抗や困難がある場合は、まず複数担当医制の導入がおすすめです。

■取組7. 当直への申し送り時間の設定

時間外労働が発生する原因の一つに「予定外の新規入院」や「入院患者の想定外の病状変化」があります。そのようなときに、主治医/担当医が残って診療を続けることが多々あります。
これが、たまに起こるのであれば問題ありませんが、頻回に起こる場合は長時間労働が慢性化してしまいます。

そこで17時00分~17時30分の間に、必ず当直医へ申し送りを行うことを決めました。その時点で残っている業務を申請し、どの時点から当直医が引き継ぐのかを相談します。

この仕組みがあることで引き継ぎがしやすくなり、主治医/担当医が残って診療を続けることが少なくなりました。外来や手術が長引いている場合は、当直医やオンコール医が手伝ったり交代することで、時間外労働を減らすようにしています。

■取組8. 平日の有休導入

いろいろな工夫をしていても、業務時間終了後すぐには帰宅できないのが医療の現場です。どうしても時間外労働は積み重なります。

そこで今年から平日に有休を取得することを推奨するようになりました。
紙のカレンダーに全員の夏休みや有給休暇の申請を書き込み、お互いの休みが重ならないように調整しています。有給休暇の使い方は自由で理由を申請する必要はありません。リフレッシュができ、疲れも回復しています。

 

医療事務・アシスタントへの「タスク・シフティング」

医師の長時間労働を改善するには、「業務量」の削減も必須です。医療行為でない事務作業のタスク・シフティングも導入しました。

  • [医師の時間外労働を減らす取り組み]
  • 9. ドクターアシスタントの導入

■取組9. ドクターアシスタントの導入

産科外来と婦人科外来の一部では、ブースごとに一人ずつドクターアシスタントを導入し、検査のオーダー、同意書の印刷、次回予約オーダー等を担当してもらっています。

産科の妊婦健診や婦人科手術は、検査項目が決まっており、お願いしやすい業務です。また、医師とドクターアシスタント二人で内容をチェックできるため、検査漏れも少なくなります。

ドクターアシスタントは、診断書や生命保険等の書類の事前記入(医師が最終確認する)、患者さんからの電話対応(予約変更等)等も担当してくれます。日本で1年間に作成される診断書は約1,000万通、所要時間は約500万時間と推計され、医師約3,000人分の年間労働に匹敵するとされています4)。生産性の向上のためには医療行為ではない、書類作業や外来業務に関しては業務委託を進め、効率化を目指す必要があります。

なおタスク・シフティングの導入にあたっては、ドクターアシスタントの負担軽減にも配慮が必要です。患者さんからの電話対応では、クレームや無理な要望への対応で疲弊してしまうこともあります。当院では、電話対応の初期部分に音声ガイダンスを使用し、問い合わせ内容ごとに担当アシスタントに振り分けています。さらに午前中は当日の臨時受診の電話に限定し、14時以降に当日以外の予約変更に関する電話受付とすることで、特定の時間に電話が集中しないよう工夫しています。

4)出典:日医総研 日医総研リサーチエッセイ「民間保険会社の診断書作成にかかる医師の負担の実態:研究会の評価と医師の負担の推計」(2019-03-07)より

 

「働き方改革」で1番重要なこと

  • [医師の時間外労働を減らす取り組み]
  • 10.「思い込み」を捨てる

■取組10. 「思い込み」を捨てる

時間外労働を減らす取り組みを始めて5年。「働き方改革」の導入実現で一番障害になったのは、実は、私たち自身の「そんなの無理だ」という思い込みでした。

「医療現場なのだから患者がいる以上、残業が起こるのは当然だ」「全員が同じように毎日勤務すべきだ」という思い込みが柔軟な働き方を阻害していました。

当科の改革は、部長からのトップダウン方式で始まりました。すべてを一度に導入するのではなく、一つひとつの工夫を段階的に導入していきました。導入する前にはスタッフに提案という形で提示され意見を募り、大きな反対が出なければ、まず1カ月導入してみる。そしてスタッフが意見を出して変更・調整していきました。

医療現場の働き方改革は、現場スタッフの理解と同意、そして協力がなければ実現できません。まずは変革の目的を共有し、日常業務に大きな支障を来さないように少しずつ変化を起こしていくことが重要です。長時間労働を改善することは、医療者の心身への負担や燃え尽き症候群を減らします。医療安全や医療資源(医師人材)の面でも重要な変革であることを、現場スタッフに理解してもらう必要があります。

 

女性医師の支援で陥りやすい注意点

冒頭でも触れましたが、産婦人科医の女性割合は30代で60%を超え、妊娠・出産後の女性医師の活躍なくして現場を回すことは不可能です。一方で、時間外労働が男性医師や未婚女性医師に集中することも避けなければいけません。

女性医師の支援で陥りやすい点として、「女性医師を優遇するあまり、それ以外の医師の負担が増加し周囲が疲弊する」ことが挙げられます。私たちが働き方改革に着手したのも、「周囲の疲弊」に端を発していることはお伝えした通りです。

この問題を避けるには、女性医師支援を次の2段階で考える必要があります。

  • 段階1: 妊娠・出産した女性医師が、働き続けやすい環境づくりをする
  • 段階2: 女性医師が働きやすい環境を維持しつつ、その他の人の負担を減らす

■段階1: 妊娠・出産した女性医師が、働き続けやすい環境づくり

まず、「妊娠・出産しされた女性医師が働きやすい環境づくり」においてすべきことですが、日本の全病院に勤務する女性医師1万人に聞いたアンケート調査では、妊娠・出産した女性医師が働き続けるために必要な支援の1位、2位として

  • ・勤務環境の改善:宿直・日直の免除、時間外勤務の免除、主治医制の見直し等
  • ・子育て支援:病児保育、保育施設、男性の家事・育児参加、学童保育等

などが挙げられています5)

これらの支援の中から、職場の環境や条件に合わせて、可能な限り環境を整えることを、まずは優先します。

その際に重要なのは、「全員が同じよう(同じ時間帯)に毎日勤務すべきだ」という思い込みを捨てることです。女性医師の場合は特に、妊娠・出産などのライフステージや周囲の環境によって、労働スタイルが大きく変わります。画一的な働き方ではなく、一人ひとりの希望に応じて働き方を調整することが必須です。

■段階2: 女性医師が働きやすい環境を維持しつつ、その他の人の負担を減らす

次の「その他の人の負担を減らす」段階に入る際は、まず、「女性医師が働きやすい環境」により業務負担が増えた人がいないか、どれくらい負担が増えたのかを確認します。
男性医師や未婚女性医師に過度の負担やしわ寄せがいった状態が恒常化すれば、その制度は長く続きません。当直や夜勤をする医師の負担や不公平感を減らす工夫が必要です。

夜勤の報酬を増やす、当直に入った医師が別の日に有休を取得できるようにする、長期休暇を長くする、外来の枠を減らす、学会に優先的に参加できるようにする、などの検討が必要です。

今回紹介してきた「医師の時間外労働を減らす取り組み」は、「妊娠・出産した女性医師が働き続けやすい環境づくり」と「その他の人の負担を減らす工夫」でもあります。
産婦人科に限らず女性医師の割合は年々増加しており、女性医師が働き続けられない職場に未来はありません。女性医師も男性医師も「働きやすい環境」の実現が求められています。

5)出典:日本医師会男女共同参画委員会 日本医師会女性医師支援センター「女性医師の勤務環境の現況に関する調査報告書」(平成29年8月)p24-25 

 

働き方改革で感じた課題

働き方改革は良い面ばかりではありません。患者の視点からは、主治医の不在時に、別の医師が説明した方針や説明が違っていたりすると混乱や不信感の原因となります。

そのため当科では、主治医が入院中の担当患者の電子カルテに「治療方針と当直医への申し送り事項」を分かりやすい形で明記しておくことを徹底しています。また、がん患者や経過が複雑な患者では、なるべく主治医による対応の比重を大きめにし、家族説明や病状説明は主治医が行うようにしています。患者の病態に応じて主治医制-チーム制の比率を調整し、適切な診療の形を模索しています。

他にも、チーム制や複数主治医制の課題として、主治医としての責任感が薄れたり、誰かがみてくれるだろうと診療に甘えが生じることがあります。また、業務終了時間になったら当直帯に丸投げする事象や、プロフェッショナリズムや教育への悪影響も指摘されており、今後の課題となっています。

 

最後に

これから数年間は、急速な人口減少と高齢化にあわせて医療現場が大きな改革をしないと、病院といえども生き残れなくなる時代です。30代・40代の私たちは、今後の変化を予測しながら自分自身の働き方を考える必要があります。

「病院勤務医」というと、地味であまりキラキラしたイメージが無い印象を持ちがちですが、個人的には知識・技術を習得し「自分の付加価値を高める」には最適の場所であると感じています。
私たちは、所属する組織に貢献しながら、かつ自分自身の「やりがい」の両立について考えていく必要があります。ここで紹介したことは正解ではなく、当科も今も試行錯誤中です。皆さんの職場での工夫や読んだご意見などを、コメント欄にお寄せ頂けたら幸甚です。

 

【医師の時間外労働を減らす10の取り組み】

  • 1. 病状説明の時間の掲示
  • 2. 時間外の相談は当直医に集約し、主治医を呼び出さない
  • 3. カンファレンスの業務時間内開催
  • 4. 業務効率化ツールの導入
  • 5. 当直翌日の業務削減
  • 6. 主治医制からチーム制へ
  • 7. 当直への申し送り時間の設定
  • 8. 平日の有給休暇の導入
  • 9. ドクターアシスタントの導入
  • 10.「思い込み」を捨てる

 

<参考> 早わかり「医師の働き方改革」

■「働き方改革」とは

少子高齢化で生産年齢人口が減少することによる労働力不足を見据え、政府が主導する労働の担い手の増加、生産性向上のための多様な働き方を支援する法整備や仕組みづくりのこと。「時間外労働の上限規制」と、正規と非正規雇用の待遇差をなくす「同一労働同一賃金」が改革の大きな柱。
時間外労働の上限規制については、2019年4月から大企業での適用が始まっており、2020年度からは中小企業でも適用となる。医師については改正法の施行期日の5年後の2024年4月を目途に規制を適用するとされた。
※詳細は「【特集】今さら聞けない「医師の働き方改革」第1回:医師の「働き方改革」とは~残業時間の上限規制と応召義務」をお読みください。

■「医師の働き方改革」とは

上記決定を受け、2017年8月に厚労省の検討会「医師の働き方改革に関する検討会」が発足。「医師の労働時間短縮・健康確保」と「必要な医療の確保」の両立を目指し、2024年4月の医師の残業時間の上限規制実施に向け、議論が重ねられた。

2019年3月の報告書で、医師の労働時間の上限規制を「年960時間(3次救急や年1000台以上の救急車を受け入れる2次救急など、特に予見不能かつ高い地域医療ニーズに対応する特定の医療機関については期限付で1860時間。臨床研修医・専門研修中の医師・臨床従事6年目以降で特定の医療機関で高度技能を学ぶ医師も1860時間)」とし、健康確保措置としてインターバル制度や医師による面接を講じることが定められた。

また、医師の労働時間短縮の具体的方向性として、

  • ・医療機関内のマネジメント改革
  • ・管理者・医師の意識改革
  • ・医療従事者の合意形成のもとでの業務の移管や共同化(タスク・シフティング、タスク・シェアリング)
  • ・ICT等の技術を活用した効率化や勤務環境改善
  • ・地域医療提供体制における機能分化・連携、プライマリ・ケアの充実、集約化・重点化の推進(これを促進するための医療情報の整理・共有化を含む)、医師偏在対策の推進
  • ・上手な医療のかかり方の周知

等が挙げられた6)

現在、後継の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」で、時間外労働上限規制の例外となる1860時間が適用される医療機関の特定や、医師の労働時間短縮計画と評価機能の枠組みを策定中で、2019年内に結論を出し2020年の通常国会にて医師法等の関連法案の改正を行う予定。
各医療機関の管理者は、上限規制が実施される2024年4月に向けて、医師の労働時間を把握・管理し、医師の労働時間短縮策を計画・実行することが求められている。

6)出典:「医師の働き方改革に関する検討会 報告書」(平成31年3月28日 医師の働き方改革に関する検討会)
※詳細は「【要約版】今さら聞けない「医師の働き方改革」」、「上限規制1,860時間 ~「医師の働き方改革に関する検討会」報告書を読み解く」をお読みください。

■早急な対応が望まれる「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」

「医師の働き方改革に関する検討会」が、2018年2月に中間報告とあわせて公表したもの。医師の時間外労働規制の施行を待たずに実行すべき項目として、以下の6点が示された7)

  • 【医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組】
  • 1.医師の労働時間管理の適正化に向けた取組
  • ※在院時間の客観的把握等
  • 2.36協定等の自己点検
  • 3.既存の産業保健の仕組みの活用
  • ※長時間勤務を行っている医師、診療科ごとの対応を議論
  • 4.タスク・シフティング(業務移管)の推進
  • ※点滴や診断書の代行入力等の業務の移管、特定看護師の業務分担の具体的検討
  • 5.女性医師等に対する支援
  • 6.医療機関の状況に応じた医師の労働時間短縮に向けた取組
  • ※緊急時を除き勤務時間内での病状説明、当直明けの勤務軽減、インターバル、複数主治医制などの検討・導入

7)出典:「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」(平成30年2月27日 医師の働き方改革に関する検討会)
※詳細は「【特集】今さら聞けない「医師の働き方改革」第3回:「医師の働き方改革に関する検討会」中間報告と、「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取り組み」」をお読みください。

■「医師の働き方改革」に関する主なアンケート調査

▽医師の働き方改革に関する検討会
「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」に係るフォローアップ調査

  • 調査実施期間:平成30年9月28日(金)〜10月22日(月)
  • 調査対象:全国の病院(8,379病院)、回答数:4,173
  • 調査概要:「医師の働き方改革に関する検討会」が2018年2月に発表した「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」に関する進捗度合の調査。

調査結果概要
「医師の労働時間管理の適正化」を実施した医療機関は全体の4割で、3-4割の医療機関は着手していないと回答。「客観的な在院時間管理方法の導入」や 「在院時間の実態の把握」について「検討に着手していない」理由として7割の医療機関が「問題が発生しておらず、必要がない」もしくは「(課題は)特にない」と回答している。
36協定等の自己点検については、約4割の病院が緊急対策以前から取り組んでいる一方で、対策後も自己点検を予定していない病院が3割。その理由として「36協定を締結しておらず締結の必要もない」「その他」の回答が3割、「点検の方法がわからない」「対応する時間がない」が2割に上った。
産業保健の仕組みの活用については、「検討に着手していない」病院が5割近くで、衛生委員会の取組、面接指導ともに「(課題は)特になし」の割合が最も高く、衛生委員会については「解決策を出すところまで議論を深めるのが難しい」、面接指導については「面接指導を行う体制がない」の回答が続いた。
その他の取組に関し、「以前から取り組んでいる」との回答割合が最も多かったのが「タスク・シフティング」の内の「患者の移動」で、タスク・シフティングについては、その他の業務についても5-7割が着手済みと回答。一方、以前から未対応かつ検討未着手の割合の高さが目立ったのは「勤務間インターバルの導入」(以前から対応:14.4%、検討未着手:68.7%)と「ICTを活用した業務見直し」(以前から対応:16.6%、検討未着手:67.2%)や「シフト制」(以前から対応:21.6%、検討未着手:64.2%)である。

▽全国自治体病院協議会
医師の働き方改革に関するアンケート調査

  • 調査実施期間:平成31年2月27日~3月22日
  • 調査対象:875会員病院、回答数:270(99床以下:42 100床台:75 200床台:40 300床台:41 400床台:31 500床台:41)
  • 調査概要:中小病院を中心にした調査。労働基準監督署(以下、労基署)の立入り調査の有無や是正勧告・指導内容、「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」の進捗状況、医師の時間外労働に関する残業時間の増減や超過理由、自己研鑽への影響、必要医師数、宿日直やオンコールの現状、働き方改革の経営への影響、課題や要望等について尋ねている。

調査結果概要
労基署の立ち入りは全体の26.3%、500床以上では61.0%が「有った」と回答。月960時間以上の時間外労働が発生している医師の割合は前年と比較し3次救急で2.6ポイント減、2次救急で0.9ポイント減少している。
「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」の進捗状況に関して、「実施済み」割合が低く「対応不可」と回答した医療機関が特に多かった項目は、「シフト制」(実施済み:10.7%、対応不可:47.8%)「勤務間インターバル」(実施済み:8.5%、対応不可:31.9%)で、理由として「医師不足」が挙げられた。

▽日本医師会
医師の働き方改革と救急医療に関する日本医師会緊急調査

  • 調査実施期間:2019年3月4日~3月22日目途(3月31日まで延期)
  • 調査対象:全国の4,243の救急医療機関 回答数:1,739
    • ・2次救急医療機関等:3,954、回答数1,568(2次救急医療機関:1,501)
      ※上記には該当しないが救急告示医療機関等であった場合を含む
       (31有床診療所を含む)
      ※年間救急車受け入れ台数1000台以上:583、1000台未満:916
    • ・3次救急医療機関 (または、小児救命救急センター)、(総合・地域)周産期母子医療センター :289、回答数:171
  • 調査概要:救急部門の医師について、5年以内に時間外労働時間を年960時間ないし他院での勤務も含めて年1860時間以下にできるかや、インターバルの確保やタスク・シフティングの実現可能性、大学医局からの医師派遣への影響(派遣医師引き上げの可能性)、2019年4月からの医師以外の職種も含めた医療機関全体での労働規制(時間外労働の上限規制については、医師の適用は2024年4月)8)における課題を調査。

調査結果概要
救急部門の時間外労働時間について、今後5年の間に年960時間以内にすることについて「対応可能」と回答したのは、年間救急車受け入れ台数1000台未満の2次救急で約7割、年間救急車受け入れ台数1000台以上の2次救急で5割弱、3次救急と周産期母子医療センター全体で4割程度。一方で、年間救急車受け入れ台数1000台以上の2次救急と3次救急の3割強が「対応不可能」「医師の半数程度もしくは1/3のみ対応可能」と回答した。他院での勤務も含め年1860時間以下にすることについては、年間救急車受け入れ台数1000台以上の2次救急と3次救急の5割が対応可能と答える一方、1/4が「わからない」と回答している。
時間外労働時間の上限規制、インターバル導入に対し「対応不可能」等の回答をした施設が挙げた対策は「医師の増員」(いずれの設問についても45〜50%程度)が多く、次いで「現状維持」「救急医療の制限」となっており、医師の増員が実現しない場合、労働法規違反や救急医療の制限が起こる可能性が示唆された。また、タスク・シフティングについては、7割程度の施設が「どの業務をどのように委ねるか、十分な検討が必要」と回答している。

8)出典:全国社会保険労務士連合会・日本医師会「働き方改革 法改正で何が変わるの? 長時間労働是正編」、厚生労働省「医療機関の管理者の皆様へ 「働き方」が変わります!!

▽日本病院会
勤務医不足と医師の働き方に関するアンケート調査

  • 調査実施期間:2018年10月12日〜12月28日
  • 調査対象:日本病院会会員2,478病院、回答数:413(国:27、地方自治体:116、公的:90、医療法人:125、その他:55)
  • 調査概要:医師不足・地域偏在、労働時間・労働賃金、労働基準法遵守、医師の働き方改革の4分野に関する調査で、2013年、2015年にも同様の調査が行われている。回答結果の一部が2019年8月の日本病院学会で報告された。

調査結果概要
労基署の是正勧告を受けた医療機関は全体の50%。「日本の医療は労働基準法違反を前提に成り立っていると思う」と回答した医療機関は全体の45%に上った。「月80時間(年間960時間)」を超える時間外労働をしている医師が病院にいる割合は45%。
また、医師の時間外労働削減に向け「医師の働き方を見直した」と回答した医療機関は全体の63%。取り組みの上位は「医師事務作業補助員の増員」(65.2%)「チーム医療の促進」(44.0%)「宿直明け勤務の制限」(38.0%)。一方でインターバルの導入や宿直回数の上限設定、救急受け入れの制限の対応割合は全体のうちの一桁であった。なお、厚労省が推進する「医師の働き方改革」によって「労働環境が改善するか」との問いに対し「改善する」と回答した医療機関は50%、「改善しない」と回答した医療機関は32%だった。
<参考>
・日本経済新聞「3割の病院「労働環境は改善しない」 医師の働き方改革
・医療維新「「時間外年960時間超の医師がいる」病院は半数弱、日病調査

 

※2019年12月3日 問合せをいただき、科の人員・診療体制情報に追記をしました。

 

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柴田 綾子 氏(しばた・あやこ)
2011年群馬大医学部卒業。沖縄県立中部病院での初期研修後、2013年より淀川キリスト教病院産婦人科にて勤務開始。2018年4月に副医長となり現在に至る。取得資格は産婦人科専門医、USMLE STEP1/2CK/CS。
一般の方の妊娠・性・性感染症など産婦人科に関する悩みを減らすため、LINEボット「ラッコの妊娠相談室」(https://happymint.wixsite.com/raccobot)を開設。院内に留まらず各地での後進教育に携わる。共著に『女性の救急外来 ただいま診断中』(中外医学社)。
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