第5回:「医師の働き方」に関わる、2018年度診療報酬の改定ポイント
現在、2024年の施行を目指して「医師の働き方改革」の検討が進んでいます。
医師の働き方において、何が問題とされ、どう解決しようとしているのか。医師の過重労働に依存した医療提供システムから脱却できるのか。「エピロギ」では、5回にわたり「医師の働き方改革」に関する国や医療関係団体の動きを紹介します。
シリーズ最終回では、4月に施行された2018年度診療報酬改定に関し「医師の働き方」に関連する変更点を取り上げます。
【特集】今さら聞けない「医師の働き方改革」
第1回:医師の「働き方改革」とは~残業時間の上限規制と応召義務
第2回:「医師の働き方改革に関する検討会」で話されたこと。その論点とは?
第3回:「医師の働き方改革に関する検討会」中間報告と、「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取り組み」
第4回:「医師の働き方改革」に関する、各医療関連団体の動き
第5回:「医師の働き方」に関わる、2018年度診療報酬の改定ポイント
診療報酬の改定もまた、医師の働き方改革の検討と歩調を合わせる形になっている。
厚生労働省は2017年12月に、「平成30年度(2018年)診療報酬改定の基本方針」を公表。方針のなかでは、「医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進」がテーマとして掲げられている。これに基づき、2018年2月7日に発表された2018年度診療報酬改定案では下記のような改定が盛り込まれた。
「負担軽減・処遇改善」体制の対象拡大
まず、総合入院体制加算の要件のうち、「負担軽減・処遇改善」体制の対象が拡大されている。これまでは医師の負担軽減を行った病院が対象だったが、看護師など医療従事者全体が対象となった。その際下記のうち2項目以上を含んでいることも義務付けられた。
- ①外来診療時間の短縮、他医療機関との連携などの外来縮小
- ②院内保育所の設置(夜間帯、病児保育含む)
- ③医師事務作業補助者配置による勤務医の事務負担軽減
- ④勤務医の時間外・休日・深夜対応の負担軽減、処遇改善
- ⑤看護補助者配置による看護職員の負担軽減
引き上げられた医師事務作業補助体制の点数
医師事務作業補助体制の加算も点数が上乗せされる。医師事務作業補助体制の加算自体は従来もあったが、医師の負担軽減策として効果があったため、点数を上げ、医師の事務負担の軽減をより促進する。
常勤配置の要件緩和。非常勤職員の常勤換算
医師等の常勤配置の要件も緩和される。従来より「常勤」とみなされる範囲が広がる。小児科・産婦人科・その他、専門性の高い特定領域や、夜間緊急対応の必要性が低い項目で、週3日以上かつ週 24 時間以上勤務の非常勤職員の複数組み合わせで常勤として換算できることになる。
遠隔診療が診療報酬の加算対象に
ICT推進での業務効率化に対しても診療報酬が手厚くなる。診療科により、オンラインや電話による遠隔診療が診療報酬の加算対象になる。
参考:中央社会保険医療協議会 総会(第389回)議事次第
終わりに
医師の働き方改革は、国の「働き方改革」を受け、主には医師の時間外労働の上限規制の動向がもっとも大きな注目点ではあるが、一律に時間外規制を設けるのは実態に合わないだろう。「医師という職業の特殊性」や診療科による違いなど、実態に即した対応が必要である。
なにより、医師一人ひとりのモチベーション維持と健康の確保、医療の質と患者の安全など、医師の長時間労働によって、医師不足が補われているという構造問題の解消に向けた努力など、まさに検討会での中間報告にある、「働き方の変革」「需給・偏在対策」「医療・介護の連携の深化」「住民・患者の健康や医療に関する意識の向上」を一体的に検討する必要があるだろう。
(文・奥田由意)
※本記事に掲載の情報は基本的に2018年3月5日時点のものです。
<参考>
厚生労働省「平成30年度診療報酬改定について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html
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