医師家庭限定! 子育てコンシェルジュが教える わが子が「医師になりたい!」と言い出した時のために。

第11回 子どもの年齢ごとのアプローチ

藤崎 達宏 氏(子育てコンシェルジュ)

前回は、「非認知能力」がいつ生まれ、どのように育まれるのか、お伝えしてきました。今回は、子どもの年齢によって親のアプローチをどう変えていくべきかについてお話ししたいと思います。

 

子どもは変容する?

皆さん「わが子が医学部を目指してくれたらいいなぁ」と、このコラムを読まれていると思います。しかし、お子さん方の年齢はそれぞれに異なります。医学部を目指すといっても年齢により課題、プランニングが大きく変わってきます。
私たち親がまずしなくてはいけないことは、わが子が今、どのような成長段階にあり、どのようなメンタルの傾向にあるのかを客観的に、俯瞰して見る目を持つことです。主観的な目しか持たないと、子どもの成長に親がついていけず、いつまでも同じアプローチを試みてしまうからです。これでは効果が無いばかりか、親子間に大きな溝が生じてしまうことすらあります。自転車で言えば、シフトチェンジができずに、いつまでも同じギアで走っているようなことが起きてしまうのです。まずは、「子どもは変容する」ということを認めることから始めましょう。

 

発達の4段階を理解すると子育てが楽になる!

私たち大人は、「子どもというのは大人の小さい版だから、年齢を経るごとに、体格が立派になるにつれて内面のメンタルも、緩やかに強くなっていくものだ」と思いがちです。しかし、イタリア初の女性医師マリア・モンテッソーリは全く違う考えを主張しています。
「子どもは年齢によって大きく変容します。それはあたかも、蝶が卵から青虫になって、さなぎになり、そしてあのきれいな蝶に羽化していくかのごとくです」
にわかには信じられませんが、その変容を「発達の4段階」として明示しました。この4段階を理解すると、子育てが本当に楽になりますので、まずはこちらの図をご覧ください。

 

文中図

 

0~24歳で、子どもが大人に成長するとして、その24年間をおよそ6年ごとに4つに分けています。

第1段階 0~6歳 【乳幼児期】  幼稚園・保育園時代
第2段階 6~12歳 【児童期】   小学校時代
第3段階 12~18歳【思春期】  中学・高校時代
第4段階 18~24歳【青年期】  大学・医学部時代

まず、注目いただきたいのはそれぞれの段階の色です。オレンジ、青、オレンジ、青と交互になっている点です。オレンジ色の乳幼児期と思春期というのは、成長や変化が激しいので、親は注意が必要な時期です。それに対して、青色の児童期と青年期は、比較的成長が穏やかで精神的にも安定しているので、親も少し安心して良い時期です。子育てを長い船旅に例えるとすれば、このオレンジ色の難所をどう乗り越えるかがポイントになります。

それでは、各段階の特徴と親の注意点、そして医学部へのアプローチについてお話ししていきましょう。

 

第一段階【乳幼児期】0~6歳

人生を生き抜く力を楽しみながら獲得できるとても重要な時期
⇒親は子どもの自主性を大切に見守ることがポイントです

いわゆる小学校に上がる前の時期です。昔から、「子どもというのは何もできないのだから、先生や親の言うことを聞いていればいいのだ」とか、「小学校に上がるまでは外で元気に遊んでいればいいのだ」という意見が海外でも主流でした。しかし、モンテッソーリはこう言っています。

「人生を生きていくのに必要な80%の能力がこの乳幼児期に身に付く」

パソコンで言えば、この6年間にハードウェアが完成して、それ以降に情報が流れ込んでくるようなイメージでしょうか?

特に重要なことは「敏感期」という特別な期間があるということです。敏感期とは、子どもが何かに強く興味を持ち、集中して同じことを繰り返したり、強いこだわりを持つ、ある限定された時期で、0~6歳の乳幼児期に集中して現れます。

この時期は、子どもが自ら成長の課題を見いだして、その活動ができるようになると、脳に快感ホルモンであるドーパミンが放出されます。だからこそ繰り返し行うことで、どんどん上達していきます。この敏感期が到来している6年間は、人生を生き抜く力を楽しみながら獲得できるとても重要な時期なのです。

■ 親のアプローチ
とても変化が激しく、大切な6年間ですが、子どもの成長パターンというのは明確に段階付けられているので、親はそうした子どもの成長のパターンを知識として持つ必要があります。知識として持っていることで、慌てずに、じっくり腰を据えて、わが子を客観的に見ることができるようになります。前章でお伝えした「非認知スキル」の土台はこの6年間に出来上がります。「成長のサイクル」を良く理解して、自主性を大切に見守ることがポイントです。
詳しくは拙著『モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す!』(三笠書房)をお読みください!

■ 医学部へのアプローチ
「こんな年齢から何ができるのですか?」という声も聞こえてきそうですが、この時期からだからこそ、「長期的なコースマネジメント」が可能になります。地域の塾や学校など受験コースの最新情報を集め、わが子、わが家に最適な「受験選び」を考え始めても良い時期です。
また、第2回でお話しした通り、医学部受験の可能性は、親の資金力によって変わるのが現実です。「わが子が医師になりたい」と言い出した時のために、長期的な資金計画を立てていきましょう。

 

第二段階【児童期】6~12歳

家族よりも友達の影響を強く受ける「ギャングエイジ期」
⇒親は医学部受験に向けてしっかりと舵取りをスタートさせましょう

6~12歳の小学校時代です。この時期は青色ですから、体の成長もメンタルも、比較的安定しています。加えて、「莫大な記憶が可能になり、覚えたことを半永久的に忘れない素敵な時期」でもあります。そのため中学受験を目指す小学生は、過酷な塾通いが待っているわけですが、お勉強するには最高の時期ですから、理にかなっているとも言えるわけです。

■ 親のアプローチ
メンタルは安定しているのですが、小学校4,5,6年生くらいに「ギャングエイジ」と言われる時期に突入しますので注意が必要です。それまでの友達は、家や席が近いとか、親同士の仲が良いなど、物理的な理由によって関係が成り立っていました。
しかし、小学校後半では、自分の価値観や、趣味などが合う友人に構成を変えていく傾向が強くなります。そして限られた仲間で徒党を組むようになり、その姿を例えて「ギャングエイジ」と称するのです。家族が大好きだった娘が、友達優先になるのはこの時期です。親はこうした子どもの変容を理解していかなくてはいけません。

この年代は中学受験の塾通いと重なるので、徒党を組んでいる友達から、無理やり引き離すと、強烈に反発することがあるので注意が必要です。逆に友達の影響を強く受けるこの時期は、急に「私も中学受験がしたい!」と言い出すこともありますので、これも注意が必要です。

■ 医学部へのアプローチ
小学校に上がる時点で、親は中学受験をするか? しないか? を仮決めしておく必要があります。
さまざまな考え方がありますが、もし中学受験をするのであれば、小学3年生の2月に入塾試験を受けるのが王道です。逆算して、小学校1,2,3年の3年間は、入塾試験で最上位クラスに入れるように算数、国語の基礎学力を高めておく必要があります。

逆に、中学受験をしないと決めた家庭は、小学校の6年間はそれほど過酷な勉強をしなくて済むことになります。しかし、だからと言って何もしなくてよいというわけではありません。第4回でお話しした通り、その余力を全て「英語の先取り」に充てることをお勧めします。
どんどん英検を進め、小学校6年生で英検2級を目安にしてください。これが高校受験組の必勝パターンです。逆に言えばこれをしなければ、中学受験組に太刀打ちできません。

*

第三段階の「思春期」、第四段階の「青年期」については、次回第12回でお話ししたいと思います。本連載は次回で最終回となります。そこで、医学部受験の最新動向についてもお伝えしていきます。ぜひ楽しみにしていてください。

 

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藤崎 達宏(ふじさき・たつひろ)
NPO法人 横浜子育て勉強会 理事長。
1962年横浜生まれ。外資系金融機関に20年間の勤務を経て独立。4人の子育て経験とモンテッソーリ教育を融合した個別相談会「お父さんもいっしょに幼稚園選び」のほか、全国の企業や団体などで子育てセミナーを行う。最近では各医師会や医師協同組合での講演を多数実施。取得資格は、日本モンテッソーリ教育綜合研究所認定教師(0~3歳)/国際モンテッソーリ協会認定教師(3~6歳)。著書に『モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す!』『0~3歳までの実践版 モンテッソーリ教育で才能をぐんぐん伸ばす!』が11月1日に発売予定。
『0~3歳までの実践版
モンテッソーリ教育で才能をぐんぐん伸ばす!』
著者:藤崎達宏
発行所:三笠書房
発行日:2018年11月1日発売(予定)

内容:
「モンテッソーリ教育」はイタリア女性初の医学博士マリア・モンテッソーリが生み出した世界中で支持されている教育法。その楽しい実践法を具体的にわかりやすく紹介します!

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『モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す!』
著者:藤崎達宏
発行所:三笠書房
発行日:2017年10月23日 初版第1刷

内容:
「子どもってすごい!」
子どもの潜在能力は無限。

突然の大泣き、イヤイヤ期、なぜなぜ質問期……
子どもには子どもなりの理由があるのです。
大事なのは、子どもがいつどのような力をつけていくかという「成長サイクル」を親があらかじめ「予習」しておくことです!

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