医師家庭限定! 子育てコンシェルジュが教える わが子が「医師になりたい!」と言い出した時のために。[最終回]

第12回 思春期・青年期におけるアプローチ

藤崎 達宏 氏(子育てコンシェルジュ)

さて、これまで「わが子が『医師になりたい!』と言い出した時のために、親としてどのような準備をすればよいのか?」ということについてお伝えしてまいりました。
最終回はまさに、わが子が「医学部に行きたい!」と、具体的に言い出す時期となる12歳~18歳の思春期についてお話しいたしましょう。

 

医学部入試=職業選択の試験である

医学部受験の難しさは、それ自体の難易度の高さはもちろんですが、「大学入学試験であると同時に職業選択の試験でもある」という点にあります。

一般学部の学生であれば、中学、高校時代には志望する職業が決まっていなくても、「大学の4年間で考えよう!」というケースも多くあります。また、実家の家業を継がずに他の職業に就いたけれど、その後、やっぱり継ぐことになったなどということもあるでしょう。

しかし、医師になるという職業選択の決断は、遅くとも高校2年生までにしなくてはならなりません。「後からやっぱり……」ということは、ほぼ不可能なのです。そして、その決断の時期が子育ての中で一番厄介な思春期と重なるのです。

 

思春期の特徴

前回お話しした、「子どもの発達の4段階」をもう一度ご覧ください。

 

文中図

 

0~24歳という子どもが大人に成長するまでの24年間を、6年ごとに4段階に分けています。

第1段階 0~6歳  【乳幼児期】 幼稚園・保育園時代
第2段階 6~12歳【児童期】  小学校時代
第3段階 12~18歳【思春期】  中学・高校時代
第4段階 18~24歳【青年期】  大学・医学部時代

小学校の6年間「児童期」は、青色ですので心身共に安定している時期ということでした。しかし次の第三段階である「思春期」(中学・高校時代)はオレンジ色ですので、心身共に大きく変容する、親としても注意が必要な時期に突入します。

それまで、外側に向かっていた子どもの意識が、内側に戻ってきます。「自分は一体、他人からどう見られているのだろう」「自分は一体何者なのだろう」と考えるようになります。そして友達の中で浮くことをとても恐れるのもこの時期です。

理想の自分と現実の自分の大きなギャップに苛まれ、その行き場のないエネルギーが「非行」「いじめ」「家庭内暴力」「引きこもり」などとなって現れます。世の中のニュースで、青少年の悲惨な事件に、必ず中2や中3といった思春期の年齢が上がることは、偶然ではなく必然だったのです。

 

親のコントロールが効かなくなる

この時期になると「親のコントロールが効かなくなるもの」と、あらかじめ覚悟しておくことが必要です。子どもが「親離れしよう」と必死にもがいている時期であり、自立のためのステップと捉えましょう。

それでも親は「なんでうちの子だけ?」と思うものです。私も自分の子育てでは、思春期には大変手を焼きました。この発達段階は全ての子どもが通る道であり、多かれ少なかれ、みんな思春期を通るのだ、うちの子だけではないんだ! ということを思い出してください。

また、「なんで、あんなにいい子だったのに!」とも思うものです。親である皆さんは、子どもの中身は大きく変容するということを、まずは受け入れなくてはいけません。そうしないと、わが子に対するアプローチが幼い時のまま、ワンパターンになってしまうからです。相手が変容しているのですから、こちらのアプローチもシフトチェンジする必要があるのです。

 

やってきました「中二病」

医師である読者の皆さまは、「そんな症例聞いたことが無いぞ!」とおっしゃるかもしれません。

思春期になると、子どもとの会話は極端に少なくなります。この傾向は特に男の子に顕著に現れ、何を聞いても「別に」「まぁまぁ」など、取り付く島もなくなります。これがちょうど中学2年頃から始まるので「中二病」などと呼ばれるのです。

こうした時期には、ポツリ、ポツリと発生するコミュニケーションのチャンスを大切にしなくてはなりません。

例えば、「俺、学校やめようかと思って……」などと、ポツリと恐ろしいことを言ってきたりします。この瞬間の返しの一言がとても大切なのです。開口一番「なに弱気なこと言ってんだ」「一体いくらお金をかけてきたと思っているんだ」などと大上段に構えた返事をしてしまうと一貫の終わりです。「やっぱり親なんかに相談するんじゃなかった……」と、心のシャッターが降りて、親子の間に決定的な溝を生むこととなります。特に、医師である立派なお父さまなどは要注意です。ご自分にも厳しい反面、わが子、特に同性には厳しくなりがちです。

 

思春期を乗り越える魔法の言葉

では、どうすれば良いのでしょうか?
思春期に一番大切なことは、どんなに小さくてもコミュニケーションの窓を維持しておくことです。そのためには、まずは相手の意見を受け入れる必要があります。

そのための魔法の言葉が「なるほどね」という一言です。

どんな意見であっても、仮に間違っていたとしても、一度受け入れることが大切なのです。今日から使えて、効果てきめんですので、だまされたと思って使ってみてください。大切なポイントは、そういったシチュエーションになったら、必ず「なるほどね」と心から言おう!と事前に心に決めておくことです。

そして、思春期にはもう一押し「なるほどね~! そういうこともあるね~!」

親とのギャップがこの時期のポイントだとすれば、こちらからその距離を縮める必要があるのです。とはいえグイグイいくと逆効果ですから、そこは気をつけてください。

例えば「俺、医学部あきらめようかと思って」と言われたら親御さんは内心「ギョギョギョ~」となるのではないでしょうか? そんな時にこそ冷静に
「なるほどな~! そういう時もあるわな~!」
「えっ! お父さんにもあったの」
「もちろんだよ! 何回もあったさ! でも、今思えば、あそこで諦めなくて本当によかったと思うんだ」
と、ここまでうまくいくかは分かりませんが、少なくともちょっぴり開いた子どもの心の窓は開いたままになるはずです。

余談ですが、これは親子関係だけでなく、職場での部下や後輩との関係にも応用可能です。ぜひ、魔法の言葉「なるほどね」を使ってみてください。

 

親の代わりに影響を与えるもの

お伝えしたように、思春期になると、多かれ少なかれ、必ず親の言うことを聞かなくなります。これは、子どもという生き物が、自立して一人で生きていくための準備なのだと捉えなくてはいけません。

そして親の代わりに影響を与えるようになるのが友人です。それまでの、家が近いとか親同士の仲が良いからといった物理的な理由による友人ではなく、親にも話せないような秘密を共有する「親友」の影響を受けるようになります。

また、部活動の先輩や、大人であっても今の自分を客観的に捉えてくれる顧問の先生、コーチ、塾の先生などの影響も強く受けるようになります。

要は「親ではなく、周りの環境に影響を受ける」ことになるのです。この事実を私ども親は冷静に受け止める必要があります。そして、だからこそこの時期の子どもに親ができる一番大切な役割は、「環境を選ぶ」ことになります。

将来への志望についても環境が大きな影響を与えます。
いくら本人が頑張ろうと思っていても、「ガリ勉なんてかっこ悪いよな~」といった空気が流れていたり、勤勉であること自体がいじめの原因になるようでは、「医学部」など口にすら出せなくなってしまいます。
逆に、本人の意思がまだ固まっていなくても「あいつが医学部を目指すなら、俺も頑張ってみようかな」と思えるプラスの環境もあります。
このような思春期の環境を選択するという視点からも、中学受験は有効と言えるでしょう。偏差値だけでなく、わが子に良い影響を与える学校選びというものが重要だということがお分かりいただけたと思います。

 

新たなコーチの必要性

親のコントロールが効かなくなるのはメンタル面だけではありません。医学部志望となれば勉強のレベルも親のコントロールの範囲を超えてきます。たとえクレバーなご両親であっても、肉親だからこそ衝突してしまう、ということはよくあることです。

思春期には新たなコーチが必要になります。スポーツでも市の大会レベルまでは親がピッタリついてコーチの役割をしていますが、世界を目指すレベルになれば、必ずプロのコーチがついているのと同じです。

医学部入試においても、学校別の傾向と対策から落とし込んだ、中長期的な教育プランを組めるコントローラーが必要になってきます。通っている高校にここまで望むことは難しいので、塾、そして苦手教科に関して「家庭教師」というコーチが有効な場合には家庭教師センターにも、親が直接出向いて適切な情報を収集することが重要になってきます。

 

医学部受験の今後の流れ

こういった目先の受験情報だけでなく、10年、20年先を見据えた、長期的で大きな世の中の流れを捉えておく必要もあります。

連載第9回「『頭の良さ』の基準が変わる! ~大学受験、新試験制度のねらいとは」で触れたように、IQや偏差値などの数字で認知できる能力は人工知能に取って代わられ、これからは人間にしかできない能力が重要になります。こうした背景から、大学受験もマークシートから、論文や面接、プレゼンテーションなどに移行しているのです。

求められる能力の変化は、医学部や医療の現場においても例外ではありません。

ですから、私ども親は感覚をリセットし、世の中を見る新しい「ものさし」を持ち合わせる必要があります。

もう一つ、世の中の大きな流れに「ダイバシティ」があります。特に昨年は東京医科大学に端を発する「女性への差別」が大きな問題になりました。医療現場においては当たり前とされ慣習化したものが、時代の流れや世界的な基準と照らし合わせると大きく乖離していた、という点では、医学部受験の問題は、「パワハラ問題」「飲酒運転問題」などと同じような経緯をたどっています。こうした大きな衝撃がなければ世の中は変わっていかないとも言えます。

もちろん、受験制度を改善しても「女性医師が出産を期にやめてしまうので」という問題は残ります。しかしそれは労働環境を改善することで対処すべきことであって、受験制度とは切り離して対処しなくてはいけないことだと思います。

奇しくも、私が専攻しているモンテッソーリ教育の創始者であるマリア・モンテッソーリは、イタリア初の女性医師でした。100年以上前のイタリアで、医師社会における女性差別は想像を絶するものでした。しかし彼女は「男性の2倍以上の努力をして初めて認められる」を繰り返し、自らの立場を築いていきました。その礎の上に現代社会のイノベーションが起きていることは感慨深いものがあります。

100年以上経ってやっと日本で起きている医学部の女性差別問題を期に、さらなる優秀な女性医師が世に輩出されることを願ってやみません。

 

「医学部入学」が人生のゴールではない

このコラムは「わが子が『医師になりたい!』と言い出した時のために。」というタイトルで書いてまいりました。親にできるのは、子どもが「医師になりたい」と言い出した時にその夢が現実になるための「確率を上げる」ことだけです。

ここで注意していただきたいのは、親は「医師になりたいと言い出さなかった」もしくは「チャレンジしたけれど叶わなかった」場合も盛り込み済みで、子育てしなくてはならないということです。

わが子を一人の人格として認め、「独り立ちして生きていく」ことを本当のゴールに設定する必要があります。そのためには条件付けで子どもの人格を捉えない努力が必要です。

「テストで良い点を取ったから良い子ね!」「医学部を目指すから優秀ね!」「〇〇ちゃんより高い偏差値の中学に入ったから素晴らしい!」というように、「~だから」といった条件付けや比較で親が褒め続けると、子どもはその条件が満たされなければ自分は優秀ではない、認められない、愛されないと感じるようになってしまいます。

こうして育った子どもは、親の期待に応えられなかった時に、自分に対する基準の全てを喪失する危険をはらんでいます。

そうならないためには、条件を付けずに「包括的に認め、愛する」ことが大切になります。親の心の根っこに「自立に向けて成長することが一番大切だ」という心構えが必要なのです。その上で、勉強も、職業選択も大切になってくるのです。結果や成果を褒めるのではなく、「プロセスや努力をしっかりと見守っている!」というサインをことあるごとに伝えましょう。そうして培われた「自己肯定感」があれば、仮に受験が残念な結果に終わっても、子どもは必ずそこから何かを掴んで立ち上がれるはずです。

このことは私を含め、親にとって「極めて当たり前でありながら、極めて難しい課題」です。このコラムを通して一番大切な「親の予習事項」かもしれません。

第11回からお伝えしてきた「成長のサイクル」と「発達の4段階」は、医学部受験だけでなく全ての子育てに共通する重要なファクターです。ぜひ、大きなアウトラインを捉えながら、充実した子育てをしていただければと願っています。

全国で講演などもさせていただいておりますので、その折には「コラム読みましたよ!」などと、お声を掛けていただければ幸いです。

 

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藤崎 達宏(ふじさき・たつひろ)
NPO法人 横浜子育て勉強会 理事長。
1962年横浜生まれ。外資系金融機関に20年間の勤務を経て独立。4人の子育て経験とモンテッソーリ教育を融合した個別相談会「お父さんもいっしょに幼稚園選び」のほか、全国の企業や団体などで子育てセミナーを行う。最近では各医師会や医師協同組合での講演を多数実施。取得資格は、日本モンテッソーリ教育綜合研究所認定教師(0~3歳)/国際モンテッソーリ協会認定教師(3~6歳)。著書に『モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す!』『0~3歳までの実践版 モンテッソーリ教育で才能をぐんぐん伸ばす!』が11月1日に発売。
『0~3歳までの実践版
モンテッソーリ教育で才能をぐんぐん伸ばす!』
著者:藤崎達宏
発行所:三笠書房
発行日:2018年11月1日発売

内容:
「モンテッソーリ教育」はイタリア女性初の医学博士マリア・モンテッソーリが生み出した世界中で支持されている教育法。その楽しい実践法を具体的にわかりやすく紹介します!

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『モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す!』
著者:藤崎達宏
発行所:三笠書房
発行日:2017年10月23日 初版第1刷

内容:
「子どもってすごい!」
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大事なのは、子どもがいつどのような力をつけていくかという「成長サイクル」を親があらかじめ「予習」しておくことです!

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