医師が得する"お金"のハナシ

医学部進学&学費にかかる金額は?

自分の子どもも医師にしたいと考える医師の方は多いようですが、もしかしたらいまお読みいただいている先生もそうでしょうか? ここで気になるのがお金の話。子どもを医師にするとなると、多くのお金がかかるであろうことは、ご自身の経験からもなんとなく想像がつきますよね。医師の収入は他の職業と比べて高額な部類に入りますが、安心して子どもを医大に通わせることが出来るためには、一体どのタイミングでどれだけのお金が必要なのでしょうか?

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小学校学費
http://goo.gl/CqTGT0
http://president.jp/articles/-/11344
http://www.tokai-jh.ed.jp/addmission/
http://www.kyoikushikin-soudan.com/kiso/01.html
中学校学費
http://allabout.co.jp/gm/gc/10628/2/
高校学費
http://allabout.co.jp/gm/gc/10627/

医師を志望するほとんどが、医学部に強い高校への進学を希望します。最近は、ハイレベルな授業を中学生のうちから受けられる「中高一貫校」の入学を目指す子どもが増えています。さらに塾や予備校に通わせる家庭も少なくありません。中高一貫校に通う場合は、どれくらいのお金がかかるのでしょうか。

比較のため、2つのモデルケースを用意しました。

 

①中学受験→中高一貫校を受験→医大進学

医学部進学に強い高校は、東海高校やラサール高校などの私立高がメイン 。これらは中等部から高等部への進学が半ばエスカレーターであるため、中学受験を希望する学生が多いのです。医学部受験も難関ですが、こちらの受験もかなり厳しいものです。
受験のため、子どもたちは早くて小学4年生頃から塾に通い始めます。その費用は3年間で約230万円。合格し私立の中学・高校に入学すると、学費は6年間で約680万円となります。予備校に通うとなると、プラス数百万の出費は必至。トータルで1,000万は用意しておきたいところです。

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②中学校進学→高校進学+医学予備校通い→1浪→医大進学

公立はなんといっても学費が安いのがメリット。公立中学・高校の学費はそれぞれ私立の1/3程度です。
しかし、予備校の費用は1年でおよそ100万~300万円。浪人生対象の場合はもっと高額になることも あります。1年間浪人すると仮定した場合、ざっと500万円は見ておきたいところです。

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※国立大学学費は旭川医科大学(http://www.asahikawa-med.ac.jp/index.php?f=public+k_kyoiku03)と神戸大学(http://www.kobe-u.ac.jp/campuslife/life/fee/)、教科書代は(http://goo.gl/yjvyqi)を参考に制作

いよいよメインの医学部の話に移りましょう。一般に、国公立大学と私立大学の学費には大きな差があります。特に医学部はその傾向が顕著であり、国公立大の10倍以上の学費が掛かる私大もあります。
ここでは、私大でもっとも学費が安いといわれる順天堂大学の費用と、とある国公立大学の費用とを比較してみました。それでもやはり約5倍の差があります。
例えば、公立小学校→私立中高一貫校→私立大学と通わせた場合、学費の総額は3188万円となります。

 

6年間で900万円? 生活費も大きな出費

医大進学に必要なのは授業料だけではありません。教科書などの書籍代、白衣や聴診器などの実習備品代などもかかります。特に医学部の教科書はカラーの図面が掲載され、値が張るものが多いようです。書籍代は6年間で約50万円、実習備品代は2万円ほどかかると見ておいてよいでしょう。
そして忘れてはいけないのが生活費です。私立理系大学生の生活・住居費の平均は4年間で600万円程度 。しかし医学生は6年間通学する上、勉強に忙しくアルバイトをする暇がほとんどありません。そのため、生活費は親の援助が頼りになります。生活費を150万円/年と仮定すれば6年間で900万円ですが、この点は個人や環境により多少の増減があります。

さて、大学生活の最後には国家試験が待っています。国家試験の合格率は91.2% (平成27年度)と非常に高いものですが、それを受ける医学部の偏差値は60以上と非常にハイレベル。合格率が高いから試験が簡単というわけもなく、対策は欠かせません。 最近は、予備校やビデオ講義を利用して試験対策を行う人も多いそう。金額はだいたい生講義で約230万円、ビデオ講義では約170万円といったところです。

たとえば、私大に通い試験前の1年間は予備校にも通うとすると、生活費などと合わせて3000万円ほどのお金が必要となります。国公立に通った場合でも1000万円以上が必要です。

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学資を補う3つの方法

さて、医学部の進学には莫大な学費が必要とわかりました。医師の収入でも、これらを短期間で賄うのは厳しいこともあるでしょう。そこで学資を補う方法として、奨学金・教育ローン・学資保険の3つがあります。

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参考URL

日本学生支援機構
http://www.sidaiigakubu.com/information/scholarship/scholarship-society/
大学奨学金の一覧 | 私立・国公立大学医学部に入ろう!ドットコム
http://www.sidaiigakubu.com/information/scholarship/university/map.php
自治体奨学金の一覧:関東 | 私立・国公立大学医学部に入ろう!ドットコム
http://www.sidaiigakubu.com/information/scholarship/local-government/kanto.php
教育ローン|東邦銀行
http://www.tohobank.co.jp/kojin/loan/educate_care/educate.html
医学部の学費を積立てる方法|ドクターよろず相談所
http://medicon.cocolog-nifty.com/blog/2010/04/post-4bb3.html

学資保険とは、教育資金として保険料を積み立てておくものです。保険会社が200万~1,000万円ほどの商品を展開しています。学資保険の利回り(返戻率)によっては、定期預金よりも貯蓄性が高い場合 も。何より、学資を確実に確保できるのがメリットです。

学資ローンとは教育費のためのローンです。医学生向けの学資ローンはかなり高額に設定され、一般には限度500万円のところが医学生向けだと1,000万円になることも。返済期限がありますから、プランを立てて計画的に借り入れるのがポイントです。

どんな大学でも共通して利用できるのが、日本学生支援機構の奨学金です。無利子の第一種と利子ありの第二種があり、それぞれ貸付金額が異なります。

また、大学病院や自治体の奨学金制度では、卒業後に大学病院や関連施設に勤務することを条件にその返済を免除する ところもあります。
大学病院は民間病院と異なり、公に求人を出すことができません。また、最近では医師の医局離れも進み、慢性的な人材不足に陥っています。地方への医師の呼び込み、定着も重要な問題です。そこで奨学金を出すことで、未来の人材を確保しようという仕組みができました。制度の利用が進めば、医師偏在の問題を解消する第一歩となるかもしれません。

 

学費がタダ!?お得な医学部まとめ

「授業料がかからない」大学があるのをご存知ですか? 自治医科大学・産業医科大学・防衛大学の3校は、在学中に学費の全額(※産業医科大学のみ学費の一部)を借り入れることができ、一定の条件を満たせばその返済を免れるのです。

防衛大学

防衛大学は厳密には大学と異なり、防衛省の組織の1つです。入学すると同時に特別職国家公務員という身分が与えられ、月10万円ほどの「学生手当」、いわゆる給料も支給されます。 住居はもちろん、食事や制服も支給または貸与されるため、学費・生活費は実質ほとんどゼロといわれています。
ただし、大学卒業後には数年間自衛隊員として勤務する任官義務があります。これを拒否すると、大学時代の学費などおよそ4,100万円を一括で返済しなければなりません。「一括」というところに厳しさを感じますね。

産業医科大学・自治医科大学

産業医科大学・自治医科大学は、ともに現代日本に不足する医師の育成を目的に設置された大学です。
そのうち、産業医科大学とは、企業に勤める労働者の健康を守り、その労働環境の指導を行う「産業医」を育成するための大学です。
学費は6年間で約3,049万円 。そのうちの6割ほどを「修学資金」として借り入れることができ、実際の個人負担は約1,129万円程度です。大学卒業後に産業医などの指定された職に就き、9~11年間ほど勤務すると修学資金返済の義務を免れます。
(※2003年以前は全額貸与でしたが、現在は制度が改変され一部負担が必要です)

自治医科大学は、へき地医療や地方の福祉事業に従事する医師を育成するための大学です。学費は6年間で2200万円 と私大並みですが、在学中に全額を借りることができます。こちらも卒業後、自治体の指定する病院に一定期間勤務することで返済を免れます。

これらの大学は比較的学費の負担が少なくて済みますが、卒業後の進路選択が固定される可能性もあります。医師としてのキャリアプランはどういったものなのか、よく検討してから選ぶ必要があるといえるでしょう。

 

まとめ

子どもを医学部に通わせる場合は莫大なお金が必要です。特に私大に通わせる場合は、初年度に300万~500万円 を支払うこともあります。一方で、子どもが大学に入るであろう40~50代勤務医の平均給与は1300万~1500万円。 生活費を年600万円程度 に収めることができれば、私立医大でも通わせることは可能でしょう。子どもが小さいうちにコツコツお金を積み立てておけば、もっと余裕を持てるかもしれません。

今から20年後、日本は超高齢化社会のまっただ中。在宅医療が進み、地域に密着した「総合診療医」の需要も高まると考えられます。医療の現場は現在とは全く異なる環境にあるかもしれません。医師という職業がなくなることはありませんが、どんな医師になりたいのか、お子様がそのキャリアプランを考慮した上で進路を選べるとよいですね。

まとめ参考:

息子と娘に勧めたい「10年後のバラ色職種」|http://president.jp/articles/-/14892
20年後の保健医療政策、国民的議論を|https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/351438/
総合診療医とは|http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=56136

  1. 1 中高一貫校圧勝! 医学部に強い高校ランキング20|
    http://president.jp/articles/-/14449
  2. 2 http://allabout.co.jp/gm/gc/417187/
  3. 3 参考:医学部予備校を学費で比較|http://goo.gl/46CRMl
  4. 4 参考:医学部予備校を学費で比較|http://goo.gl/46CRMl
  5. 5 https://passnavi.evidus.com/201403cost/05/html/1
  6. 6 https://www.tecomgroup.jp/igaku/topics/109.asp
  7. 7 予備校メック 医師国家試験予備校|http://www.icrip.jp/mec/mec_e-school/

    医師国家試験対策予備校 テコム|https://www.tecomgroup.jp/igaku/honka/payment.asp

  8. 8 学資保険は本当に必要? 3つのメリットを検証してみた|http://hokensc.jp/gakushi/hitsuyou.html
  9. 9 ちばぎん|http://www.chibabank.co.jp/kojin/loan/education/medical.html
  10. 10 静岡医学就学研修資金など|
  11. 11 防衛医科大学|http://www.sidaiigakubu.com/information/university/boueiika/introduction.php
  12. 12 産業医科大学|http://www.uoeh-u.ac.jp/EntranceExam/aboutCollege/01.html
  13. 13 産業医科大学-Wikipedia|https://goo.gl/4C4JUv
  14. 14 自治医科大学|http://www.jichi.ac.jp/gaiyo/public_info/education/tuition.html
  15. 15 順天堂大学医学部|https://www.juntendo.ac.jp/med/exam/gakuhi.html

    岩手医科大学|http://www.iwate-med.ac.jp/education/entrance/med/fee/

  16. 16 医師の平均給与|http://www.doctor-concierge.jp/nensyuu
  17. 17 参考:40代からの医師のマネープラン|

    https://www.recruit-dc.co.jp/rdc/feature/moneyplan/
    世帯年収1250~1500万の生活費|http://www.chokin365.com/article/393936837.html
    総合診療と隙間医療 ~超高齢化社会に向けて~|http://www.kobe-century-mh.or.jp/?p=2044

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