ハンガリーの医大生活~海の向こうの医学生より~

【第11回】ドイツを就職先の候補にした理由

吉田 いづみ さん(ハンガリー国立センメルワイス大学医学部)

皆さま、こんにちは。ハンガリーの首都ブダペストにあるセンメルワイス大学医学部に通う現役医学生、吉田いづみです。

ハンガリーでの生活も5年目を迎え、そろそろ卒業後の進路について本格的に考えなければならない時期に差し掛かってましたが、実は卒業後の就職先としてドイツを視野に入れ、2019年夏、さっそくドイツの病院で実習を行ってきました。

そこで今回は、ドイツの医師の働き方を紹介しつつ、ドイツの病院を就職先の候補にした理由などのお話をさせていただきます。

 

ドイツで医師、専門医、開業医になるルート

ドイツの医学部は日本と同様に6年制ではあるものの、6年目はインターンシップとして内科、外科、そして自分の好きな診療科の3つを1年間かけて回ります。その間、自分の所属している大学病院で実習する必要はなく、将来働きたい病院や海外で研修する人もいます。いくつかの病院を回る中で、「その病院や診療科が自分に合っているか」「どんな人が働いているか」など、実際に働きながら確認することができます。もちろん実習の間はお給料もいただきます。

そして卒業後、自分の気に入った病院の診療科で働き始めます。就職は書類と面接で判断されますが、学生期間にそこで働いたことがある人が優先となることが多いです。日本と異なるのは、年中いつでも就職できること。卒業後すぐに病院で働き始める人もいれば、研究を始める人、一般企業に就職する人などさまざまです。

また、日本のような初期研修はなく、初めから一つの診療科に就職する形になり、卒後1年目から専門医コースが始まります。専門医コースは約5年で、それを経ると専門医となります。その5年間は同じ病院に勤め続ける必要はなく、一つの病院で1年以上研修すれば、いくつかの病院を回って専門医を取得することも可能です。
ほとんどの人が自分の大学病院でない病院で実習・研修を行うのですが、このことからわかるようにドイツには医局制度というものはなく、好きな街にある病院や気に入った病院を選び、就職活動をする、という形になっています。

ちなみに、ドイツの医学部は女子が多いです。そのせいか、小児科、皮膚科、眼科が人気の診療科となっています。それぞれの診療科に直接就職することになるため、どうしてもその診療科に行きたい場合は、あまり人気のない都市に行かなければならない、なんてことも多いそうです。

実際にドイツで2カ月実習した際、20-30名の学生に会いましたが、そのうち男子学生はたったの2名ほどでした。それもそのはず、ここ最近のドイツの医学部は70-80%が女子学生だからです。ドイツの医学部入試は高校の成績で決まるそうで、友人は「要領の良い女子の方が多くなる」と言っていました。

 

ドイツの医師の働き方

ドイツでは、個人や少人数が経営するプラクティス(日本でいうクリニック)で外来を行い、入院機能は大きい病院に集約されていることが多いです。そのため、患者はまずGP(家庭医)または専門医が開業するプラクティスに行き、高度な診療や入院が必要な場合は、総合病院的な役割を担う私立病院または公立病院(大学病院も含む)へと紹介されます。

さて、病院で働く医師の年収は、勤務医のトップでも手取り1-2000万円程度だそうです。ちなみに、月単位で実習を行う学生は1日約3000円、1日2、3時間のアルバイト(採血や注射など)を週に数回行う学生は1時間に約5000円となっています。専門医コースで研修を受けているときのお給料はどの病院もだいたい同じで、手取り350-400万円。日本に比べると、学生への待遇はとても良いですが、働き始めた後はちょっと少ないように感じます。

勤務時間も、朝7、8時から勤務時間が始まり、遅くても17、18時には帰宅するそうです。もちろん診療科にもよりますが、日本のある病院に見学に行ったときはほとんどの医師が20、21時以降も働いていたので、その差に驚きました。

ちなみに、ドイツの病院には医局がないため、多くの診療部長は外部から招集されることが多いと聞きました。実際私が実習した病院でも、診療部長は数年前まで他の病院で勤務されていた方がほとんどでした。

次に開業医のお給料についてですが、基本的には勤務医よりはるかに高いと聞きます。そのため、あまり熱量を入れずにお金を稼ぎたい人は開業を目指す人が多いです。ただし、日本と違い、市や州で開業していい数が決まっているため、医師が開業したい場合は、どこか閉めようとしているプラクティスを探さなければいけません。

また、先ほどもお話したように、ドイツ人医学生の就職先は病院だけではありません。ワークライフバランスを考え、製薬会社や研究職などの一般企業に就職する人も増えているそうです。私の友人はこの秋に卒業しましたが、学年の1/4-1/3は一般企業への就職を目指していると言っていました。そのため、ドイツの病院は人材確保のために福利厚生を良くしようと必死だそうです。

例えば、「1年間に30日の有給が取れる」「年内に取れなければ翌年3カ月は持ち越しできる」「それでも取らなければその分のお給料をもらえる」といった仕組みのある病院もあるそうです。ほかにも「半日勤務」や「週休3、4日」を選択できるといいますが、専門医コースの間に「週休3、4日」を選択すると、その分研修期間も6、7年と長くなります。

 

なぜドイツを就職先の候補にしたのか?

前置きが長くなってしまいましたが、ここからは私がドイツを就職先候補にした理由についてお話しさせていただこうと思います。

ハンガリーの医学部で学ぶ私には、以前から何気なく「欧州に残って働きたい」という思いがありました。中でもドイツは移民を多く受け入れており、外国人医師も多く働いています。ドイツの統計サイト「Statista」によれば、ドイツで働いている外国人医師は2018年時点で4.8万人を超えているそうです。実際、私が研修したドルトムント病院でも半分が外国人医師でした。そのせいか、外国人の私もすんなり受け入れてもらえるオープンな風土があり、医師だけでなく患者さんからも優しく接していただきました。

また、スペインやイギリスではEU免許の取得と自国の国家試験の受験が必須なのに対し、ドイツではEUの医師免許だけで就職でき、試験が課されたとしても診療能力語学試験のみとなります。試験のハードルが低く、すぐに専門医として働くことができるため、現場に早く出て専門的なことをやりたかった私には、とても魅力的な環境に映りました。

 

 

実習を行ったドルトムント病院。

 

ただ、実際ドイツで日本人の私が医師として働くとすると「一生雇われ労働」となってしまいます。ドイツには性別や国籍に関係なく仕事のポジションを与えなければいけないという法律があるものの、やはり、ほとんどの病院長や診療部長がゲルマン人ばかりであるのも事実です。そのため、日本に帰るか、ドイツで就職するか、まだ悩んでいます。

何気なく「欧州に残って働きたい」と考えていたものの、実際にハンガリーとドイツでの実習を経験してみて、日本やドイツといった国や場所ではなく、誰と働くかが重要だと思うようになってきました。自分の医師としての働き方について、これから考えていこうと思います。

次回はハンガリーの話に戻り、女性医師の働きやすさについてお話しさせていただこうと思います。

 

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吉田 いづみ(よしだ・いづみ)
1994年福岡県生まれ。生後10カ月で心室中隔欠損症の手術を受け、ものごころついた頃から医師を目指す。高校を卒業後、ハンガリー国立医学大学への留学を決意し、2013年6月に単身でハンガリーへ。現在、ハンガリー国立センメルワイス大学医学部に留学中。

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