ハンガリーの医大生活~海の向こうの医学生より~

【第1回】ハンガリーの医学部ってどんなところ?

吉田 いづみ さん(ハンガリー国立センメルワイス大学医学部)

皆さま、こんにちは。ハンガリーの首都ブダペストにあるセンメルワイス大学医学部に通う現役医学生、吉田いづみです。
このコラムではハンガリーでの医学生生活や実習の様子、現地で働くドクターやコメディカルの紹介など、私が海の向こうで見て、感じて、体験したことを、1年にわたってお届けします。

第1回では、私の住む街ブダペストの紹介や、在籍しているセンメルワイス大学のお話をさせていただきます。

なぜハンガリーの医学部へ?

 

文中1

 

日本の皆さま、いかがお過ごしでしょうか。改めまして、センメルワイス大学医学部3年生の吉田いづみと申します。

はじめに自己紹介をさせてください。私は福岡県で生まれ、高校を卒業する18歳まで千葉で育ちました。生まれつきの室中隔欠損症で、家で過ごす時間よりも入院生活が長く、医師や看護師に囲まれて育ったためか、幼い頃から「お医者さんになりたい」と言っていたそうです。そして、その夢を叶えるべく、高校卒業と同時にハンガリーへ旅立ちました。

なぜ、日本の医学部やアメリカやイギリスなどの大国ではなく、ハンガリーの医学部へ行ったのか。詳しくはインタビュー記事「私の決断『18歳で医学部留学』は正解でした。」でお話ししていますので、そちらもぜひご覧ください。

 

私が暮らすハンガリー・ブダペストのこと

 

文中2

 

東ヨーロッパに位置するハンガリーは、オーストリアやスロバキアなど7つの国に囲まれた内陸国です。首都ブダペストの中心にはドナウ川が流れており、川を挟んで街は「ブダ」と「ペスト」に分かれています。
ブダ側は王宮や貴族が、ペスト側には一般市民が住んでいたという歴史的背景から、今も大使館や高級住宅はブダ側に、私たち学生が住めるような住居はペスト側、となっています。
ドナウ川の夜景は「ドナウの真珠」と例えられるほど綺麗で、夜のクルージングはとても人気です。

 

文中3

 

 

ハンガリーの医学部の仕組み

ハンガリーには4つの国立医学部があり、私立の医大はありません。私の通うセンメルワイス大学は380年の歴史を持つ、ノーベル医学賞受賞者も輩出している学校です。実はハンガリーのノーベル賞受賞者数は人口比で考えると世界一といわれています。
また、ハンガリー、特にセンメルワイス大学の肝臓手術はヨーロッパで一番の件数を誇り、白内障手術や歯科治療を受けにイギリスやフランスなどの欧州諸国から多くの患者さんがやってきます。

 

文中4

引用元:http://semmelweis.hu/english/multimedia-eng/photos/

 

大学の話に戻します。センメルワイス大学には、ハンガリー語、英語、ドイツ語コースがあり、英語とドイツ語のコースに進学した外国人からの外貨でハンガリーコースの学生の学費を補っています。
私の学ぶ英語コースには、日本をはじめヨーロッパや北欧、アメリカやカナダ、中東など世界中から学生が集まり一緒に授業を受けています。基本的に1クラス10~20名程度で実習を行い、講義は一学年全員、200名前後で受講します。実習では先生1名に加え、1,2学年上の先輩が1,2名ついて授業のサポートをしてくれます。授業でわからないところがあれば、先生や先輩が補習授業を設けてくることもあります。

 

日本とはちょっと違う、ハンガリーの医学部で学ぶこと

ハンガリーの医学部は日本の医学部と同じ6年制です。初めの2年間で基礎医学、残りの4年間で臨床医学を学びます。日本の大学とは違って教養を勉強する期間はなく、入学してすぐに解剖などの医学の勉強が始まります。

基礎医学は解剖学、生理学、生化学を中心に、臨床医学では各診療科に加えて微生物学や薬理学、病理学を学びます。ハンガリーの医学部に特有なのが、1年次にラテン語、1・2年次には医療ハンガリー語を勉強すること。これは英語の医学用語でラテン語派生のものが多いため、そして現地の病院で患者さんの問診をとるためです。

他にも医療物理や統計学といった授業もありますが、どれも「なぜその授業が必要なのか、将来どう使うのか」を教えてもらえるので、「何の役に立つかわからないけれど単位のために勉強しよう」という感覚の学生は少なく、モチベーションを落とすことなく、納得しながら勉強することができます。

学年毎に学期末試験と中間試験があり、中間試験にパスしないと学期末試験を受けられず、留年になります。1/3がストレートで卒業、1/3は留年、残りの1/3は強制もしくは自主退学する厳しい環境です。それでも「本当に医師になりたい」という気持ちで、みんな日々勉強に励んでいます。典型的な「入るのは簡単だが、卒業が難しい」大学であり、そこは日本の医学部とは異なる点かもしれません。

きっと今後、勉強だけでなくいろいろな困難に出会うと思います。でも、そのたびに「医師になりたい」という気持ちを忘れずに一生懸命頑張ります。

第2回では、ハンガリーで共に頑張る海外の友人を紹介する予定です。

 

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吉田 いづみ(よしだ・いづみ)
1994年福岡県生まれ。生後10カ月で心室中隔欠損症の手術を受け、ものごころついた頃から医師を目指す。高校を卒業後、ハンガリー国立医学大学への留学を決意し、2012年6月に単身でハンガリーへ。現在、ハンガリー国立センメルワイス大学医学部に留学中。2017年9月より3年生に。
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