【2017年版】地域別、医師の年収比較~地方>都市部の傾向は変わらず
物価や時給が高いのは地方より都市部ですが、これに倣わず「都市部のほうが低い」といわれる医師の給与水準。
エピロギが約4年前にご紹介した「『地方のほうが給与は高い』は本当?」では、『2015年版 病院賃金実態調査資料』(医療経営情報研究所・編)を元に、都市部と地方の医師の収入に差がある傾向を明らかにしました。
この状況に変化はあったのか、今回は『2017年版 病院賃金実態調査資料』からその差を見ていきます。
医師1年目の年収は全国的に上昇、大都市圏と地方の格差は縮小傾向に
2015年版の調査では、大都市圏(政令指定都市および東京23区)における医師1年目(経験年数0年)の年間賃金が約409万円であったのに対し、地方(政令指定都市および東京23区以外の地域)では約714万円で、1.75倍の格差がありました。しかし、経験年数が増加するごとにおおむね縮小し、経験10年では1.15倍、15年で1.12倍、20年で1.16倍。30年ではさらに差が縮小し1.05倍、35年では0.98倍となり、わずかに大都市圏が他地域を上回っていました。
これに対し2017年版の調査結果からは、大都市圏と地方での経験年数別の給与格差が縮小傾向にあることが見て取れます。2015年版では1.75倍もあった医師1年目時の格差が1.21倍まで縮み、最も大きい格差でも経験年数1年の1.39倍となりました。
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地方の勤務医の年間賃金は経験年数0年から1年の上昇が顕著で、約149万円増加しています。増加の割合はこのときが最も大きくなっています。25年から30年では増加額が約33万円と少なく、35年にかけてはマイナスになっていますが、そのほかの表に記載のある期間の増加額はすべて100万円を上回っています。
大都市圏では経験0年から1年の賃金の増加額は約27万円に留まっています。また、隔年間で均等に増加したと仮定すると、賃金が1,000万円を超えるのは経験7年の時点と推定されますが、これは経験4年で1,000万円台に到達する地方に遅れを取っています。賃金の額は経験30年から35年を除き増加しており、5年間で270万円近く上昇する期間もあれば、約62万円に留まる期間もあるなど、ばらつきがあります。
2017年版で大都市圏と地方を比較すると、大都市圏では経験0年から1年にかけての増加額が少なく、地方との差が経験1年で約245万円に開きます。経験年数1年から3年、5年から10年、25年から30年では大都市圏の増加額が地方を上回っていますが、経験1年の時点で差が大きいこともあり、給与額そのもので地方を上回るのは30年のときのみです。また、経験30年から35年ではどちらも減少していますが、地方が約19万円なのに対し、大都市圏は約340万円と開きがあります。
2015年版と2017年版の大都市圏における医師の年間賃金を比較すると、経験年数0年では400万円台から600万円台に増加するなど他地域に近づいており、この増加分は経験10年ほどまで維持されています。そして経験15年以降は2015年版の賃金額とあまり差がありません。しかし経験30年から35年にかけては大きく減少した2017年版と異なり、2015年版では80万円以上増加していました。
地方では2015年版と2017年版の差はあまり大きくなく、表にある経験年数のうち2017年版が2015年版を上回るのが6回、下回るのが4回で、経験30年まで一貫して増加し、35年にかけてわずかに減少するという同じ傾向になっています。
2017年版では医師1年目の年間賃金格差が縮まり、以降の各経験年数における差も全体的に縮小傾向にありますが、生涯賃金で考えると大都市圏とその他の地域の「差が縮まった」とはいえない状況です。
生涯賃金では大都市圏と地域での格差は変わらず、差額は拡大
それでは上記の2017年版のデータを元に、経験年数0~35年の年間賃金の合計値(=生涯賃金)を推計します。
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生涯賃金の推計値は、大都市圏の医師が約4億5,874万円、地方の医師が約5億1,515万円となりました。格差は1.12倍で、2015年版で算出した値と同じ結果でした。
ただし、全国平均の生涯賃金(推計値)はこの2年で約400万円上昇しており、大都市圏と他地域の医師の生涯賃金(推計値)の差も約5,200万円から約5,600万円に広がっていることから、大都市圏と他地域の格差は変わらないものの、差額は拡大した状態とみることができます。
病院の規模や勤続年数、診療科、役職などにより医師個人の賃金は大きく変わってきますので、必ずこの傾向に当てはまるわけではありません。
しかし、大都市圏と地方の収入に大きな開きがある状況は、変わらないといえそうです。
(文・エピロギ編集部)
※生涯賃金推定値の算出方法
引用元のデータに記載のない経験年数
(2,4,6,7,8,9,11,12,13,14,16,17,18,19,21,22,23,24,26,27,28,29,31,32,33,34年目)の年間賃金を、前後の経験年数の賃金より推定した上ですべて合算。
経験年数2年目と4年目は、それぞれ経験年数1,3年目と3,5年目の年間賃金の中間値を採用。
そのほかの経験年数については、5n年目から5(n+1)年目まで(nは自然数)は経験年数と年間賃金が正比例の関係にあると仮定し、以下の計算式により算出。
a=5n+b (nは自然数、b={1,2,3,4})とした場合の、a年目の年間賃金推定値
a年目の年間賃金(推定値)
={5n年目の年間賃金}+[{5(n+1)年目の年間賃金}-{5n年目の年間賃金}]*b/5
<参考>
・医療経営情報研究所編『2017年版 病院賃金実態資料』(経営書院、2017年)
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