医師専門コンサルタントが解説

これって転職すべき? 医師が転職を考えるべきケース

職場環境や自身の働き方に疑問を感じたとき、他の医療機関へ「転職」して理想の働き方を実現することは一つの方法です。しかし問題を解決するために「転職したほうがいい」ケースがある一方で、職場を変えるメリットが少ない、もしくはデメリットの方が大きくなる、「転職をしないほうがいい」ケースもあります。転職は新たな生き方を選択するようなものです。失敗を避けるために、自分は転職すべきか、すべきでないか、いずれの状況に当てはまるのか事前に見極めたいものです。

そこで、転職すべきかの見極め方法を、医師の転職支援を手掛けるコンサルタントに解説いただきました。自己分析する際の手順や、転職すべきケースについて具体例を交えて紹介します。

 

1.先輩医師も悩んできた「勤務負荷」や「給与」

希望に合った業務内容に変更したい、給与をアップしたいなど、理想と現実にギャップを感じて「このままでいいのか」と疑問を抱いていないでしょうか。医師の転職支援をしていると、例えばこんな悩みや不満が寄せられます。

【代表的な医師の悩み・不満】
(1)勤務負荷
・当直や緊急の呼び出し、在宅診療のオンコール待機が多く、体力的につらい
・雑務など診療以外の業務に時間を奪われ、仕事が終わらない
・研究や若手の指導があり、帰れない
・給料が安いため当直アルバイトをせざるを得ず、体力的にきつい
・休日扱いの土日も、病棟対応(確認・指示出し)のために出勤することが暗黙の了解で、実質休みがない

(2)職場環境・人間関係
・コメディカルのあたりがきつい
・医局の年齢構成や性別に偏りがあって居心地が悪い
・特定の同僚や上司と反りが合わない
・知り合いの紹介で入局したため、仕事を断りにくい

(3)給料
・仕事量や勤務時間に対して給料が安く、割に合わない
・住宅ローンや子どもの学費など、出費に対して収入が足りない
・給料が頭打ちのため、将来が不安
・今の給料では奨学金の一括返金が難しく、大学医局を抜けられない

(4)スキルアップ・仕事内容
・専門を生かしたいが、後期研修医や先輩医師が優先され、症例が回ってこない
・上が詰まっていて下っ端仕事が減らず、出世も見込めない
・委員会のとりまとめやマネジメント業務ばかり。もっと臨床現場で働きたい
・年齢が上がっても体力的に続けられる科目への転科、もしくは医療施設に転職したい
・将来的な開業を見据えて幅広い症例を経験したい。経営ノウハウを学びたい

(5)家庭の事情・QOL
・産休明けから職場に復帰予定だが、子育てと仕事を両立できるか不安
・子どもたちとの時間が取れない
・医局派遣で単身赴任中。いつになったら家族一緒に暮らせるのか、先が見えない
・結婚したいし子どもも欲しい。専門医資格を取るタイミングに悩んでいる
・夫の転勤に伴い、引っ越すことになった
・親の介護のため、実家の近くに転居したい

理想の業務内容を実現したいという医師がいる一方で、家庭の事情を踏まえて仕事をセーブしたいといった悩みも散見されます。
しかし転職だけが思い描く業務・職場環境を実現するための方法ではありません。現状に不満があるからといってすぐ辞めることを考えずに、現状を変える方法として転職が有効かどうかを見極めましょう。

 

2.まずは「転職したい根っこの理由」を明確にする

転職をすべきか見極めるにあたり、まずは、転職したいと感じている根本的な理由を明確にすることが必要です。自分の認識とは別のところに本当の悩みがあるかもしれません。転職すべきか、すべきでないかの判断材料を揃えるために、自己分析によって「悩みの根っこ」を突き止めましょう。その際、活用いただきたいのが、以下の4つの質問です。

自己分析するための4つの質問

問1. 転職したいと思う原因、転職に興味を持ち始めるきっかけとなった出来事は何か。
問2. 現在の職場環境や生活環境において、どんなデメリットが発生しているのか。
問3. 現在の職場環境や生活環境において、どんなメリットを感じているか。
問4. 現在の職場や生活環境を変えずに、その問題を解決するとしたら、どのような方法があるか。

代表的な医師の転職相談例を上げながら、自己分析の仕方を解説します。

 

■回答例①:30代後半、女性、産婦人科、大学医局所属の医師の場合

問1.転職したいと思う原因、転職に興味を持ち始めるきっかけとなった出来事は何か。
1人目の子どもが2歳、現在2人目を妊娠していて産休中。産後は今の職場に戻るかどうかで悩んでいるが、給与が低いこと、育児経験のある女性医師が働いていた前例がないことから転職を考え始めた。

問2.現在の職場環境や生活環境において、どんなデメリットが発生しているのか。
フルタイム勤務が困難で時短勤務をしているため、さらに休みたい場合に言い出しにくい。また休むことを快く受け入れてもらえない空気があり、急な休みの取得がしにくい。加えて、子どもが増えることによるさらなる家事負担増も問題。主人は子どもの保育園までの送り迎えができないため、自分でやらなくてはならない。

問3. 現在の職場環境や生活環境において、どんなメリットを感じているか。
教育制度が整っており、高度で専門的な疾患の治療を担えるなど、勉強がしやすい環境である。サブスペシャリティの専門医資格も取得しやすい。

問4.現在の職場や生活環境を変えずに、その問題を解決するとしたら、どのような方法があるか。
現在の職場でも当直免除や時短勤務の制度活用によって希望が実現できるもしれない。しかし取得実績がほとんどないため周囲のサポート体制・意識が薄く、実現のハードルが高い。また実現しても給与が大幅にダウンする可能性があるため、現実的な方法ではない。

 

■回答例②:40代半ば、男性医師、整形外科、大学医局所属の医師の場合

問1.転職したいと思う原因、転職に興味を持ち始めるきっかけとなった出来事は何か。
小学校・幼稚園に通う子どもがおり、家族と仕事の時間両方を大事にしたいと思うようになった。また、子どもの将来を考えて、自分が元気なうちにできるだけ稼ぎたいとも考えている。そんな時に、以前アルバイト探しのため登録していた紹介会社から「求人案内」のメールが来て、働き方を気にするようになった。

問2.現在の職場環境や生活環境において、どんなデメリットが発生しているのか。
自分の仕事に加えて後輩の指導をしているため、家を空ける時間が長く、子どもと過ごせるのは慌ただしい朝食時のみ。家庭と仕事のバランスが取れず、妻にワンオペ育児を強いてしまっている。ずっと大学医局で働いてきたが、確実に教授になれる保証はなく、なれたとしても年収はさほど変わらないため収入面が不安。家庭を犠牲にしてでもこのまま医局にいるべきか疑問を感じる。

問3. 現在の職場環境や生活環境において、どんなメリットを感じているか。
最新の情報をインプットしながら若手と共同発表していくことにやりがいを感じている。一臨床医よりも大きな仕事ができるし、教授への道も視野に入ってきた。

問4.現在の職場や生活環境を変えずに、その問題を解決するとしたら、どのような方法があるか。
後輩の指導などの教育業務を他の人に委譲する、もしくは収入アップのために外部の病院でさらに働くといった方法が考えられる。しかし医局という組織の中で自分の希望を通すことは難しいように感じる。

「悩みの根っこ」を掘り起こすには、考えうるものをできるだけ多く挙げることがポイントです。そのため「現在は不満がなくても、家族構成の変化や自分の加齢によって将来的に問題が発生しないか」「家族の視点や意見も踏まえて問題が洗い出せているか」という視点でも思い付くものがないか、見直してみましょう。

 

3.複数の未来を想定、自分や家族の優先事項を踏まえて決断する

どんな道を選んでも、メリットとデメリットは発生するものです。問4まで回答したら「転職した場合」「転職しなかった場合」「現在の職場のままで勤務形態を変更した場合」など複数のパターンでたどる未来を想像し、自分にとって、また家族にとって優先すべき事項を踏まえて、転職すべきかどうか決断することが大切です。

回答例①に挙げた「30代後半、女性、産婦人科、大学医局所属の医師」の場合を見てみましょう。転職しなかった場合、時短勤務に対する周囲のサポートは望めず、給与の大幅なダウンが見込まれます。このような場合、サブスペシャリティの専門医資格は将来的にチャンスがあれば取ることにして、現実問題として時短勤務ができる環境を優先する方がほとんど。子育てに理解があり、急な休みも取りやすい職場に転職される方が多いです。

ちなみに、「転職」と聞くと、新しい職場で心機一転、というイメージが強いかもしれませんが、現職とのつながりを残しながら転職する、という方法もあります。回答例②「40代半ば、男性医師、整形外科、大学医局所属の医師」の場合がそれにあたります。

彼の悩みの一つは仕事が忙しく子育てが妻任せなこと。子どもと一緒に過ごせる時期は限られており、現職のままではそのタイミングを逃してしまいます。また将来についても、仮に大学教授になれず50代で転職した場合に比べて、今のタイミングで転職した方が選択肢は多くなります。一方で、やりがいを感じている若手医師との研究や学会発表など、一臨床医以上の仕事も、彼にとっては重要なものでした。

そこで提案したのが、転職はするが、非常勤として引き続き大学病院でも勤務を続ける、というものでした。職場との関係が良好だったこともあり、担当してきた患者さんの治療や、若手への研究指導を継続することになりました。このように、やりがいと家族との時間、将来性のバランスをとる判断をされる方もいらっしゃいます。

 

4.明らかに転職すべきケース/すべきでないケース

いくら手順が分かっていても、自分や自分の将来について、客観的に整理、分析するのは難しいもの。転職すべきかどうか判断がつかない……というケースもあるでしょう。

そこで、医師専門の転職コンサルタントとして相談を受ける中で、明らかに転職すべき、もしくはすべきでないと感じたケースをいくつか挙げてみます。参考にしてみてください。

【転職すべき】

  • ・心身的に無理が続いている
  • ・業界的に見ても自分の業務負担が重く(職場の中で他の医師と比較して多い、という意味合いではないことに注意)、かつ一過性のものではない
  • ・現職場で希望する働き方の実現に向けてすでに行動したものの実現せず、職場を変えないと実現できないことが明らかである

【転職すべきでない】

  • ・現在の職場でも、勤務形態を変えれば理想の働き方を実現できる余地がある
  • ・現在の職場で働き始めてまだ半年以内
  • ・市場感とはかけ離れた額の給与を希望している
  • ・業務量や拘束時間に対する自己認識と、客観的に見た平均レベルにズレがある

自己分析してみても、問題がうまく洗い出せない、たどる未来がイメージできない、という場合には、私どものような、紹介会社のコンサルタントに相談してみるのも一つの方法です。お話を伺うだけでなく、民間病院、大学医局、開業……、さまざまなキャリアや働き方について、アドバイスさせていただきます。

転職は今の気持ちだけで判断せず、2~3年後、さらにはもっと先、どのような人生を歩んでいたいかを想像して決めることが重要です。そのためにも、まずは問題をよく洗い出し、優先順位を踏まえ、適切な判断を心がけてください。

(聞き手・文=エピロギ編集部)

 

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