医師専門コンサルタントが解説

スキルアップ・年収アップを狙って転職! メリット・デメリットは?

思い描く生活・働き方を手に入れる方法の一つである「転職」。理想を実現できる一方で、現在の仕事場にいることで受けていた恩恵を手放さざるを得ないケースもあります。転職はメリット・デメリットが表裏一体をなしていることを踏まえて検討することが大切です。
とはいえ、転職経験がないとどのようなメリットやデメリットが発生するのかを具体的にイメージすることは難しいものです。そこで、転職目的別のメリット・デメリットについて、医師転職コンサルタントに解説いただきました。今回は「スキルアップ」「年収アップ」を狙って転職する際のメリットとデメリットについて、ケーススタディを用いて紹介します。

※何をメリット・デメリットと感じるかは個人の価値観にもよるため、ここでは、一般的にメリット・デメリットとされるものを紹介します。

 

スキルアップを狙った転職のメリット・デメリット

医師のスキルアップは大きく2パターンに分けられます。一つ目は専門医などの資格を取りたい、専門分野を極めたい、など「診療スキルを磨きたい」と考えるパターン。二つ目は部門をマネジメントしたい、後輩の指導をしたいなど「業務の幅を広げたい」という意味でスキルアップをしたいと考えているパターンです。
ここでは2パターンのケーススタディを用いて、メリット・デメリットを紹介します。

■Case:もっと症例を積み、専門スキルを磨きたい
30代後半、男性、眼科、大学病院勤務、東京から東葛北部の病院に通う医師の場合

【現状の悩みと実現したいこと】
眼科の専門医資格を持っており、白内障の領域でさらに専門性を深めるために症例経験を積みたい。病院の中でも自分が中心となって症例を担当したいと考えている。
しかし現在の職場では若手の医師に症例を回す必要があり、自分が担当できる件数が限られているため、物足りなさを感じている。

医師の人数が多い病院のように症例を譲り合わなければならない環境にいると、自分の思う通りに実績を積むことは難しいものです。上記のような希望を転職によって実現するには、次の三つの方法があります。
・方法1:すでに標榜科目に眼科があり、さらに強化する予定の病院に転職する
・方法2:自分の理想のポストにいる医師と交代する形で転職する
・方法3:眼科の専門病院、もしくは眼科の強い病院に転職する

上記三つの方法のどれを選んでも、メリット・デメリットが存在します。下の表を見てみてください。

 

このように、診療スキルを磨きたいと思ったときの転職パターンはいくつか選択肢がある状態です。メリット・デメリットを比較して自分が理想とする働き方に近いものはどれか、検討してみるのがいいでしょう。

次はマネジメントや後輩の指導に挑戦するなど、業務の幅を広げるという意味でスキルアップをしたいと考えている医師のケーススタディです。

■Case:マネジメントや若手の指導に注力したい
50代、消化器外科、男性、千葉県の病院に勤務する医師の場合

【現状の悩みと実現したいこと】
消化器外科分野では十分な経験を積むことができた。現状に対して特に不満があるわけではないが、ずっと同じ環境で仕事をしてきたため、これまでの経験を生かして診療科のトップとして、マネジメントにチャレンジしてみたい。
地域の中核病院や、成長期にある病院で力を発揮したい。

この医師の希望を実現するための現実的な方法は三つ。
・方法1:現診療科トップが退任予定かつ後任に適した人材不在の病院への転職
・方法2:診療科チームごと退職してしまう病院や、診療を休止している病院への転職
・方法3:新築移転や開設などで診療科を新たに立ち上げる予定の病院で、そのトップに就任する

それぞれのメリット・デメリットをまとめると以下のようになります。

 

なお、上記以外にも、まずはナンバー2として現トップの右腕を探しているような病院へ就任し、中期的トップのポジションを形成していく選択肢もあります。

いずれにせよ、診療科のトップに就任する方法は限られているため、じっくりその機会を待つか、困難を承知でチャレンジする覚悟があるか、よく検討する必要があります。

 

年収アップを狙った転職のメリット・デメリット

続いて、転職して年収アップを狙う場合のメリット・デメリットについて、ケーススタディを用いて解説しましょう。

一言で「年収をアップさせたい」と言っても、その理由は実にさまざまで、例えば以下のようなものが挙げられます。
・科の中核として業務を担っているが、評価や給与に対し不満を感じるため
・業務量が多く拘束時間が長い割に、給料が低く不満を感じるため
・専門医取得後も大学医局に所属しているが、民間病院に比べ給与が低いと感じるため
・将来的にも給与アップが見込めないため
・住宅ローンの支払いや子どもの学費、親の介護費用など、お金がかかるため

今回は、この中でも相談を受けることの多い「業務量が多く拘束時間が長い割に、給料が低く不満を感じる」「住宅ローンの支払いや子どもの学費、親の介護費用など、お金がかかる」の二つのケースに焦点を当てて、ケーススタディとメリット・デメリットを紹介します。

■Case:業務量が多く拘束時間が長い割に、給料が低く不満を感じる
30代後半、女性、麻酔科、東京在住、都内の病院に勤務する医師の場合

【現状の悩みと実現したいこと】
公的病院に勤務しているため、民間病院と比べ給与が高くない。加えて所属していた診療科の先生が辞めて5名体制から4名体制になって以来、人員が補充されずハードワークが続き、問題が改善される見込みがないことから転職を考えている。

現状の給与に対して納得できない、という相談を受けることは多いです。転職によって収入をアップさせることは可能で、この先生の場合、方法は大きく三つあります。

・方法1:民間の総合病院への転職
・方法2:民間の単科病院への転職
・方法3:フリーランスになり、定期非常勤やスポットのアルバイトを掛け持ちする

それぞれのメリット・デメリットは以下のようになります。

 

科目によっては、収入をアップさせるという目的の実現方法として、フリーランスの道もあります。ただし自分で仕事の依頼を受け、業務のスケジュールを組むといった手間がかかること、働けなくなった場合のセーフティーネットを自分で構築する必要があるといったリスクも含めて検討しなくてはなりません。
なお、麻酔科については、専門医資格の更新条件が変更になり「同一施設で週3日以上麻酔関連業務に専従していること」が条件に加わりましたが、この先、他の科目においても、専門医資格の維持条件が変更になる可能性があります。小まめに所属学会の情報をチェックしておくことが重要です。

最後にもう一つ、異なる事情で収入をアップさせたいと考える医師のケーススタディを見てみましょう。

■Case:親の介護や子どもの学費など、家族にお金がかかる
40代前半、男性、整形外科、東京都の大学病院勤務、埼玉県在住の医師の場合

【現状の悩みと実現したいこと】
小学生の子どもが1人おり、2人目がもうすぐ生まれる予定。子どもの教育費がかかることを踏まえて収入をアップさせたい。また自分の両親も年を取ってきたため、入院や介護などが必要になったときに向けて備えたい。大学病院に勤務していて年俸は高くないため、大学を離れて他の病院へ転職し年収をアップさせることを検討している。

家族を養ったり親の面倒を見たりする立場になると、収入は重要性を増します。こちらも実現するには主に二つの方法が考えられます。
・方法1:整形外科医を求めている民間病院に転職する
・方法2:アルバイトを増やす

それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。

 

尚、今回の医師は病院勤務を希望していましたが、クリニック勤務でその他希望を実現するという選択肢もあります。
いずれにしても、選択肢によっては業務量が増えたり、志向とは異なる働き方やポジションを求められることもあるので、事前に確認しておきましょう。

 

転職の「悪い面」も踏まえた決断を

転職活動では、転職によるメリットに目が行きがちです。あわせて、その選択肢にどのようなデメリットがあるかについても理解し、比較検討の上で転職先を決めることが、後悔のない転職への近道です。

「現在考えている以外に、どんな転職の選択肢があるのか知りたい」「それぞれの転職先で、働き方がどのように変わるかイメージしにくい」と悩まれたときは、ぜひ私どものような、紹介会社のコンサルタントに相談してみてください。これまでの支援事例を元に、具体的なアドバイスをさせていただきます。

(聞き手・文=エピロギ編集部)

 

【関連記事】
「転職活動前に知っておきたい! 『医師転職失敗パターン』5つ」
「医師の転職理由とその背景とは?」[医師転職研究所]
「【転職エージェントガイドが語る】知っておきたい医師の人材紹介会社活用ノウハウ【最終回】|転職ありき、ではない人材紹介会社の活用法~『かかりつけコンサルタント』という考え方」平田剛士氏(転職エージェントガイド)
<PR>「失敗しない」高額求人特集
<PR>「QOL重視」の医師求人特集

 

ページの先頭へ