医師家庭限定! 子育てコンシェルジュが教える わが子が「医師になりたい!」と言い出した時のために。

第8回 中学受験、「塾選び」の次は「学校選び」

藤崎 達宏 氏(子育てコンシェルジュ)

第7回で中学受験における塾選びについてお話ししてまいりました。通常ルートでいくと「3年生の2月」に大手受験塾の入塾試験を受けて、新4年生のクラスが決まっているはずです。前回言い忘れましたが、「中学受験塾の新学期は2月」だということも基本知識として知っておいてください。

さて、ここから「学校選び」が始まります。最初の期日は「5年生の夏」となります! 「え~ッ! そんなに早くですか?」と、思われる親御さんも多いと思いますが、これが中学受験のスタンダードです。塾側も志望校を絞り込むことを求めてきます。その理由についてお話しておきましょう。

 

5年生の壁と志望校選定

5年生になるとまず変わるのが、「学習量」です。4年生の1.5倍。6年生ではさらにその2倍になるとイメージしておいてください。この段階で学力だけでなく、家庭のフォローが追い付かなくなることが懸念されます。

そして、「学習量」だけでなく、内容が格段に難しくなります。例えば、SAPIXでは「5年生の夏の算数を乗り切れるかどうか」が分かれ目になります。夏期講習では「規則性」「比と割合」など、中学受験の最重要単元に入ります。

SAPIXだけでなく、どの進学塾でも夏を境に、上位クラスと下位クラスがはっきり分かれます。下位クラスになれば基本問題の確認と復習が中心になります。上位クラスでなければ、志望校選びの一つの目安とも言える偏差値55以上の学校選びは難しくなってくるでしょう。また、5年に入ると全員が全力を出すようになり、クラスを上げていくのが難しくなるのです。

そう考えると、前回お話したように小学校1、2、3年でしっかり基礎を積み、3年2月の入塾試験で頑張り、4年生を上位クラスでスタートすることがいかに大切かお分かりいただけると思います。

特に女子はこの「逃げ切りパターン」がお勧めです。どの塾の先生もおっしゃることなので、決して女性蔑視というわけでなくお聞きください。
男子に比べて女子は精神年齢が高く、与えられる学習スケジュールをキッチリこなせる子が多いので、基本的にスタートダッシュに向いています。なので、4年生のうちは上位クラスに位置することができます。しかし、5年になると急にやる気を出した男子が上位クラスに乱入してきます。そうすると、模試での順位がガタンと落ちる時期があります。親は「どうしましょう! 成績が落ちてしまったわ、努力が足りないのね!」と慌てるわけですが、成績が落ちたのではなく、デキルやつらが割り込んできたから順位が落ちたのです。これは毎年起きることですので、女子の親御さんはそれも想定して、早くからしっかり準備して「逃げ切りパターン」となれるようを心しましょう。

こうした背景から、受験時の学力レベルが予測可能なタイミング、かつ本格的な受験勉強が始まる5年生の夏には「現実的な志望校選び」に入る必要があるのです。

 

「学校選び」3つの視点~合格率・性格・物理的条件

では、どのようにして志望校を選べばいいのでしょうか。選定の基準は以下の3つに分けられます。

その1、「医学部合格率」から選ぶ

このコラムは「わが子が医師になりたいと言い出した時のために!」ですので、ここは避けて通れませんね。また「医学部を目指したい」と自分から言い出して欲しい! という親御さんも多いと思います。そうした意味からも、医学部進学を学校全体が推奨していて、かつ合格率が高い中高一貫校を選ぶのは、理に適っていると言えます。

■「鉄緑会」の指定校
ご存知の方が多いとは思いますが、「鉄緑会」というのは「東大理Ⅲ合格者の6割」が所属しているという化け物のような大学受験塾です。しかも塾なのに「指定校制」を敷いているのが特徴です。下記13校の合格者を集め、さらに6年間ブラッシュアップして頂点を目指させるのが鉄緑会です。その進捗スピードはすさまじく「中学3年までに、高校3年までの英語と数学は仕上げる」という圧縮ぶりです。

■「鐵緑会の指定校」計13校
開成、桜蔭学園、筑波大学附属駒場、麻布、駒場東邦、海城、筑波大学附属、豊島岡女子学園、雙葉学園、女子学院、渋谷教育学園幕張、栄光学園、聖光学院

決してこのコースを推奨しているわけではありません! しかし、医学部を目指すということは、こうしたルートをものすごい勢いで駆け上がってくるライバルがいることは知っておいてほしいのです。

医学部合格率から逆算して、一つの目安にしてください。

その2、「わが子の性格」から選ぶ

わが子の人格を形成する「思春期」をどこで過ごすか! これは子育てにおいてはもちろんのこと、実は医学部受験においても一番大切な要素です。

中高の時期は親のコントロールが効かなくなる代わりに、友人や、先輩などの影響を強く受けるようになるからです。

多くの受験生が目指す“御三家”(男子であれば「開成、麻布、武蔵」。女子であれば「桜蔭、女子学院、雙葉」)だけ見ても、それぞれ校風が大きく違うのはよく知られたことです。キッチリしている方が居心地のよいタイプもいれば、枠に当てはまらない自由快活なタイプもいます。仏教系、キリスト教系など宗教性がある学校もあります。男子校女子校男女共学という視点もあります。

ただし、医学部受験を目指すのであれば「大学の附属校・係属校」という選択は極めて少なくなります。というのも、私立大学ならではの「附属校卒業者」のための推薦枠は一部の学校を除けば極めて少なく、内部進学をあきらめ国公立や他大学医学部を一般受験で目指すのが主流だからです。

その3、「物理的な条件」から選ぶ

1 偏差値
お話したように、5年生くらいになると現実の学力が見えてきますので、当然、偏差値を主体に第一志望校を選ぶことになります。
ただし、「偏差値」の高さよりも、実は「わが子の性格」に合うかが中学受験においては重要です。「偏差値が±5の範囲内であれば、わが子の性格に合う学校を選ぶほうが良い」と言われます。

2 問題の出題傾向
中学受験も佳境に入ると、出題の傾向によって「合う/合わない」が見えてきます。合格することが第一条件ですから、わが子の実力が生かせる出題傾向の学校を選択することも重要になってきます。

3 通学時間
いくら学力レベルが高く、わが子の性格に合っていても、通えなければ話になりません。地域によりますが、通学時間1時間以内で絞り込むのが定石です。しかし、医学部志望の家庭においてはこの範囲でない場合もよく見受けられます。

4 学費
医学部受験においては、国公立医学部か、私立医学部かによって、学費の桁が違ってきてしまうので、そこまで学費に差の出ない中高一貫校の学費については気にしないご家庭も多いかもしれませんが、大切な要素です。

授業料やその他の費用をあわせて年間60万円(月に5万円)。これが一つの目安です。上記の鉄緑会指定校のなかでも、栄光、海城、豊島岡などは60万円を切る学校です。また、筑大駒場や筑大付属は国立のため、授業料は無料です。

 

学校選びで親が注意すべき、3つのポイント

医学部の合格率、お子さんの性格、物理的条件で志望校を選びましょう、とお伝えしました。が、その大前提として、親が注意しなければいけないポイントがあります。

その1、親が学校を知らない

ご両親が地方出身、もしくは首都圏で育っても中学受験の経験が無いケース。そもそも、私立の中学校を受験することに賛同できない親御さんもいらっしゃると思います。当然、私立の中高一貫校名を並べられてもチンプンカンプンです。このままだと「偏差値だけ、塾の言いなり」で学校選びをすることになります。ぜひ、小学校低学年のうちから、親御さんだけでもよいので私立中学校フェアなどに足を運び、どのような学校があるのか、知ることから始めてください。

その2、親の情報が古い

その反対に、親御さん自身が中学受験経験者というご家庭もあると思います。この場合、情報的にかなり有利と言えるでしょう。
しかし、注意すべき点は、その情報が古い可能性があるということです。中高一貫校のランキングは恐ろしいほど変化しています。例えば大学受験実績で急成長の「洗足学園」などは、数十年前の偏差値は30台でした。ですから、昔中学受験をした親御さんは「え~洗足??」などと言いがちですが、今や偏差値は65を超え、フェリス女学院を超えて、神奈川女子校No.1になっているのです。また、ご自分の出身校に固執しすぎるのも問題です。わが子に合った学校選びが第一です。

その3、併願校選び

中学受験においては、当初に考えた第一志望校に合格できる確率は20%以下と言われています。医学部受験とは比較になりませんが、狭き門と言えます。つまり、中学を受験したお子さんの8割は第二志望以降に通うことになるのです。この現実を、親は冷静に受け止めなくてはいけません。わが子は第一志望目指して頑張っているのです。ここから先は親の役割です。受験日程はもちろん、出題傾向も含めて緻密な併願校選びが必要です。

*

「学校選び」、いかがだったでしょうか?
次回は2020年以降の大学入試改革における「新試験制度」についてお話ししましょう。

<参照>
SAPIX小学部「首都圏|算数のカリキュラム(5年生)」
https://www.sapientica.com/sapix/curriculum/5th-grader/
鉄緑会「鉄緑会の特色 鉄緑会指定校・在籍生徒数一覧」
http://www.tetsuryokukai.co.jp/features.html

 

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藤崎 達宏(ふじさき・たつひろ)
NPO法人 横浜子育て勉強会 理事長。
1962年横浜生まれ。外資系金融機関に20年間の勤務を経て独立。4人の子育て経験とモンテッソーリ教育を融合した個別相談会「お父さんもいっしょに幼稚園選び」のほか、全国の企業や団体などで子育てセミナーを行う。最近では各医師会や医師協同組合での講演を多数実施。取得資格は、日本モンテッソーリ教育綜合研究所認定教師(0~3歳)/国際モンテッソーリ協会認定教師(3~6歳)。最新著書に『モンテッソーリ教育で子どもの本当の力を引き出す!』(10/23発売)。
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著者:藤崎達宏
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