ハンガリーの医大生活~海の向こうの医学生より~

【第6回】ハンガリーだけじゃない! 東欧で学ぶ日本人医学生

吉田 いづみ さん(ハンガリー国立センメルワイス大学医学部)

皆さま、こんにちは。ハンガリーの首都ブダペストにあるセンメルワイス大学医学部に通う現役医学生、吉田いづみです。
このコラムではハンガリーでの医学生生活や実習の様子、現地で働くドクターやコメディカルの紹介など、私が海の向こうで見て、感じて、体験したことを、1年にわたってお届けします。

前回は、地獄と言われる「テスト期間」についてお話しさせていただきました。大変なことも多い異国の大学生活ですが、切磋琢磨できる友人の存在はとても大きいです。それは同じ大学に通う外国人学生だけではありません。

現在ハンガリーでは400名近い日本人が医学を学んでいますが、それと同様にチェコやスロバキアにも英語コースを持つ医学部があり、あわせて500名近い日本人が東欧で医学を学んでいます。今回はハンガリーから飛び出し、東欧の医学部で学ぶ日本人を紹介させていただきます。

 

名前「遙」のように世界との架け橋になりたい

文中1

 

アルゼンチン生まれで日本育ちの坂本遙さんは、高校3年生のときに理転し、医師を目指すことを決めました。そこで偶然中欧の医学部への選択肢を知り、文系時代に国際交流学部や外国語学部を目指していたことから、両方学べるチェコの医学部に進学を決めたそうです。

医学部を卒業した後は、夢の一つである第3カ国語の習得を達成するとともに、EU内で医師として働けたら良いなと考えています。「遙」という名前には「日本から遥か遠く離れたアルゼンチンで生まれた子が、世界の架け橋になりますように」という意味が込められており、EU内で働くだけでなく、何らかの形で日本とも関わりを持ち、名を体現するような人になれたらと、今は道を模索中と言います。

 

いろんな世界を見て選んだスロバキア

文中2

 

私と同い年の妹尾優希さんは、幼少期をボストン、中高をニュージーランドで過ごし、イギリスの国際関係学部へ入学。そこで将来への不安や手に職をつけることの大切さを実感し、英語で修学できる、かつ東欧で一番学費の安いスロバキアの医学部を選んだそうです。

現在、学校生活とは別にVirtual MedicineというVRを用いた解剖学の学習ソフトの学生アドバイザーをしたり、生理学の教授との共同研究を進めたりしているそうで、大変な勉強の傍ら、積極的に色々なことに取り組んでいます。ポーランド人の男女2人とシェアハウスをしている優希さん。お互いの文化や価値観を分かち合いながらの生活も、良い勉強になっているそうです。

卒業後の進路は未定だそうですが、EUと日本のダブル資格を生かして何かできないかなと考えています。

 

文中3

左から、日本でお世話になっている山本佳奈先生と、妹尾さん、坂本さん、私の4人で東欧旅行をしたときの写真です。

 

無事ハンガリーの医学部を卒業し日本の医師に

最後にもう1人、昨年夏に私の通うセンメルワイス大学医学部を卒業され、現在日本にいらっしゃる先輩、俣野貴慶さんを紹介させてください。東欧の日本人医学生は夏に卒業するので、日本の医師国家試験を受ける場合は半年間勉強をして、日本の医学生と同じタイミングで試験に臨むことになります。

俣野さんが高校生だった当時、日本からスロバキアやチェコの医学部への斡旋が行われていなかったため、先行きがどうなるかわからなかったけれど「ここしかない」とハンガリー留学を決意されたそうです。ハンガリーでの医学生活を振り返ってみると、学業に関しては「本当に大変だった」という記憶が強く残っているという俣野さん。どんなに勉強が楽しくても(楽しくなくても!?)試験には合格しなければ意味がない。だからこそ、そう感じたようです。

また、異国の地ハンガリーに長く住んでいたからこその悩みや問題も多かったようですが、その分一緒に卒業した同期はみんな国籍問わず仲良しだそうです。「卒業できたのも彼らのおかげ」と俣野さんは言っていました。そんな環境で大学生活を過ごしたからこそ、俣野さんは誰にでも分け隔てなく優しく、医学だけでない大切なこともたくさん教えてくださいました。

 

文中4

センメルワイス大学医学部の卒業式の様子。
引用元: http://semmelweis.hu/english/news/2017/07/505-doctors-of-medicine-have-graduated-at-the-faculty-of-medicine/

 

今後はしばらく日本で働き、日本にしかない医学教育を受ける予定の俣野さん。もしまた海外に行くとすれば、それは当時ハンガリーに行くことを決意したように、その国に「行くべき目的」が見つかったときだそうです。

 

卒業後の進路は人それぞれ

東欧の医学部で学ぶ日本人の多くは「海外で働きたい」という気持ちを持っています。しかし、怒涛の6年間を過ごしているうちに、日本の良さをあらためて実感し帰国する人、欧州の医学をもっと学びたいと思ってEUに残る人、アメリカにチャレンジする人など、卒業後に選ぶ進路はさまざまなものに変わっていきます。

私も将来の進路に関しては日々悩んでいますが、幸か不幸か東欧の医学生には多くの選択肢があります。同じように海外で勉強している日本人からも刺激をもらいながら、進路をゆっくりと決めていこうと思っています。

次回は年に1度行われる私の大学最大のイベント「センメルワイス・カーニバル」についてご紹介したいと思います。

 

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吉田 いづみ(よしだ・いづみ)
1994年福岡県生まれ。生後10カ月で心室中隔欠損症の手術を受け、ものごころついた頃から医師を目指す。高校を卒業後、ハンガリー国立医学大学への留学を決意し、2013年6月に単身でハンガリーへ。現在、ハンガリー国立センメルワイス大学医学部に留学中。
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