ハンガリーの医大生活~海の向こうの医学生より~

【第5回】入るのは簡単でも進級が難しい! センメルワイス大学医学部の試験って?

吉田 いづみ さん(ハンガリー国立センメルワイス大学医学部)

皆さま、こんにちは。ハンガリーの首都ブダペストにあるセンメルワイス大学医学部に通う現役医学生、吉田いづみです。
このコラムではハンガリーでの医学生生活や実習の様子、現地で働くドクターやコメディカルの紹介など、私が海の向こうで見て、感じて、体験したことを、1年にわたってお届けします。

前回はブダペストのクリスマスと新年についてご紹介させていただきました。ハンガリー生活の楽しい一面をお届けしたわけですが、実はクリスマスやお正月も怒涛の試験期間中でした。今回は、学生が口を揃えて「地獄」と呼ぶ試験の仕組みや勉強方法に関してお話しさせていただきます。

 

試験は冬と夏の年2回

私が通っているセンメルワイス大学医学部のテスト期間は、12月中旬から1月末と、5月中旬から6月末までの年に2回。それぞれ7週間かけて行われます。試験は、期間中に何日か設けられている試験日の中から自分で選び、予定を立てます。そのため、初めの数週で終わる人もいれば、きちんと勉強するために試験期間をまるまる使う人もいます。試験が終われば新学期までは休みとなるので、早く終わらせてお休みを取る人が多いです。

試験の内容は筆記と口頭の2種類。人によって得手不得手が分かれますが、私は口頭試験の方が好きです。ただ、筆記試験は全体で合格点を取れればよいため、すべての範囲を網羅していなくてもできるところをしっかりと解答できれば受かることがあります。一方、口頭試験では試験期間前にトピックの一覧表があらかじめ発表されていて、本番では、その中からいくつかのトピックが書かれたカードをランダムで引きます。

例えば微生物学の場合、細菌やウイルスの名前が書いてある一覧表が事前に発表され、試験で引く1枚のカードには、1つの細菌の名前が書いてあるという感じです。裏返しにされたままなので、どのトピックが出題されるかはカードを引くまでわかりません。

今回の試験で私は「ピロリ菌」を引いたため、ピロリ菌の特徴、ピロリ菌から起こりうる病気とその治療方法、またピロリ菌の検出方法などを話しました。苦手なトピックを引いて何も答えられないということがないように、すべてのトピックについてしっかり勉強しなければなりません。

 

進級できるかどうかは、テストの合否に懸かっている

ほとんどの教科が試験の結果のみで評価されます。成績は5段階評価をつけられ、1が不合格、2−5が合格、となっています。一見、学期中の努力が無駄のように思えますが、やはり学期中に日ごろからコツコツ勉強していると試験勉強もだいぶ楽になります。

 

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テスト期間中の勉強風景はこんな感じ。

 

評価は絶対評価で、学期末の試験で合格点に達しないと進級することができません。毎年だいたい一定の人が落ちてしまいます。私の学年は入学当初250名いたのですが、1年生で60名、2年生で90名程度が留年してしまいました。3年生以降はほとんど留年しないと言われているものの、やはり1つの科目(微生物学や病理学など)の勉強をゼロから1週間だけで網羅するのは難しいため、学期中の地道な努力は進級に必要不可欠となってきます。

進級をかけた試験期間はどんな学生にとっても「怒涛」の期間であり、プレッシャーやストレスから精神的に体調が悪くなる人が出てしまうこともあります。

 

勉強の仕方は人それぞれ! おしゃれな図書館で勉強することも

実際にテスト勉強をしていて面白いと思ったのは、人によって勉強の仕方が全然違うことです。とにかく書いて勉強する人、読んで勉強する人、友人と話しながら勉強する人などさまざまです。イスラエル人の多くは「カフェインピル」などを飲んで無理に集中したりもします。

また、勉強場所も人によって違っていて、自宅や図書館、カフェなど、みんな思い思いの場所で勉強しています。試験期間中、学校の図書館や近くのカフェは学生でいっぱいになってしまうため、落ち着いて勉強できる場所を探すのにも一苦労です。

ただ、ヨーロッパの雰囲気を感じながら勉強できるのは、ハンガリーの医大生の特権かもしれません。ブダペストには勉強スペースとして利用できるおしゃれな公共の図書館がいくつかあるので、少しご紹介させていただきます。

1つ目は国会議事堂の中にある図書館。セキュリティがとても厳しく、入る前に空港のような手荷物検査があります。また、検査後はカバンを持ち込むことができず、必要な勉強道具だけ出して勉強する、といった感じです。

 

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国会議事堂の図書館
出典:https://welovebudapest.com/en/toplists/13-of-the-most-beautiful-libraries-in-budapest/

 

2つ目は昔宮殿として使われていた図書館。とても広く、映画のロケでもよく使われるほど綺麗です。空いていれば部屋の貸し出しもしてくれるため、友達と何人かで勉強したいときにはちょうどいい場所です。

 

文中3

かつて宮殿として使われていた図書館
出典:https://welovebudapest.com/en/toplists/13-of-the-most-beautiful-libraries-in-budapest/

 

まとめ

ハンガリーの医学部は典型的な「入るのは簡単だが卒業が難しい」大学です。試験期間中はなぜ医者になりたいのか、と心の中で何度も自問するするほど辛いときもありますが、他人の命を背負う職業である以上、覚悟をもってこの試験に臨まなくては、とも思います。残り3年半、試験期間はあと6回、強い気持ちを持ってがんばろうと思います。

次回は現地で共に学ぶ、日本人の学生をご紹介させていただこうと思います。ヨーロッパで医学を学ぶ日本人学生はハンガリーだけでなく、スロバキアやチェコにもいます。そういった学生はなぜその国の医学部に行ったのか、今どんな気持ちで勉強しているのか、などをお伝えしようと思います。

 

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吉田 いづみ(よしだ・いづみ)
1994年福岡県生まれ。生後10カ月で心室中隔欠損症の手術を受け、ものごころついた頃から医師を目指す。高校を卒業後、ハンガリー国立医学大学への留学を決意し、2013年6月に単身でハンガリーへ。現在、ハンガリー国立センメルワイス大学医学部に留学中。
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