第8回 修道女ヒルデガルトの右腕となる医師募集
募集要項
・勤務時代: 中世ヨーロッパ(12世紀前後)
・勤務地域: ドイツ
・勤務内容:祈り、酒造、薬草(ハーブ)の栽培、炊事、植物療法の研究など
・待遇・福利厚生:寮完備(修道院の共用スペースもしくは個室)
  1日1~2食付き(断食期間あり)
  制服(修道服)貸与
・求める人材:信仰心があつい方
  薬草(ハーブ)に関する知識をお持ちの方
  ラテン語を読み書きできる方
・お断りの方:異端の宗派(カタリ派、バルドー派、ベギン派など)を信仰されている方
  毎日入浴する方(入浴は年に2回程度です)
  結婚されている方(一生独身で奉仕してください)
  料理ができない方
・その他:試用期間あり(誓願を立てるまで1年半~5年程度)
仕事内容詳細
中世ヨーロッパ最高の賢女といわれる修道女、ヒルデガルト(※)の右腕として、以下の業務に従事していただきます。
1)祈り・朗読・詩編の朗唱から成る聖務日課の実践
起床から就寝までの間に1日8回、神に祈りを捧げてください。
起床時刻はAM2:00、就寝時刻はPM9:00が目安です(季節によって異なります)。
2)薬草(ハーブ)などを用いた健康メニューの考案
野菜・薬草(ハーブ)の栽培、家畜の飼育、その他家事全般(炊事・掃除・洗濯・買い物)を担当していただきます。特に、病に効果を発揮する食事メニューの考案をお任せします。
3)ワイン、ビール、リキュール(薬草酒など)の醸造
病に効き、健康にいい酒造りの方法・飲み方を考案していただきます。修道院の畑で栽培している薬草(ハーブ)を有効活用してください。
4)その他
書物の書写・図書文献管理、聖具製造、修道士育成、植物療法の研究などを行っていただきます。特に、上記1~3の作業のなかで医療に活用できると思われる事柄は、ラテン語で文書化してください。
11世紀から12世紀にかけて活動した修道女。教師、医師、博物学者、作曲家としても活躍。医療活動に関しては薬草(ハーブ)の栽培や研究などを行ったことから「ドイツ薬草学の祖」とも呼ばれる。著書『Physica』には230種もの薬草(ハーブ)の解説(治療への活用方法)が記述されている。また、ヒルデガルトの修道院は「ヨーロッパの診療室」といわれた。
【※応募前に必ずお読みください】中世ヨーロッパの医療事情
実は9世紀頃にはすでに医学校が存在しており、医学専門職も輩出されていました。しかし、そうした専門家に診てもらえるのは上流階級のお金持ちだけだったようです。
当時の庶民にとって「医療を受けられる場」といえば修道院が中心でした。
修道士たちは薬草(ハーブ)などを利用した自然療法を実践し、薬草の栽培と治療での利用を通じて薬学を発展させました。
植物療法を研究し、それを文書化することで後世に残された知識は「修道院治療学」と呼ばれ、現代医療のルーツになったともいわれています。
修道士としてこんな仕事をしていただきます!
■聖務日課の実践修道士たるもの、毎日のお祈りは欠かせません。1日8回、修道院の鐘が鳴るタイミングで神に祈りを捧げていただきます。
午前2時に起床したらまず祈祷(朝課)、午前3時にも祈祷(讃課)、午前6時にも祈祷(一時課)、午前9時にも祈祷(三時課)、正午にも祈祷(六時課)、午後3時にも祈祷(九時課)、午後6時にも祈祷(終課)、そして午後9時の就寝前にも祈祷(晩課)を捧げましょう。
心身を両方から癒すことこそ「治療である」というヒルデガルトの考えに従い、肉体への医療行為だけでなく、魂を清く保つめためのお祈りも欠かさないでください。
■健康メニューの考案初期のキリスト教では肉(特に四足獣の肉)を食べることが禁じられていましたが、12世紀頃のドイツでは「血抜きをする」「生で食べない」「食べ過ぎない」などを守れば、肉は健康にいい食材とされています。
主に鶏、ウサギ、豚、羊などの肉を使用してください。また、ライン川に生息する川魚や、そこを航路とする船で運ばれる海の魚も料理に使用しましょう。
これらの食材と修道院の畑で栽培している野菜・果物・薬草などを組み合わせて、病を治し、健康にいい食事・デザートを考案してください。
もちろん、家畜の飼育や畑仕事も行っていただきます。
ワインは大地の血、キリストの血です。「濃いワインを飲めば人間の血になる」というヒルデガルトの考えに従い、シナモンやハチミツなどを使用した、美味しくて健康にいいホットワインをつくってください。
また、ビールの醸造にも携わっていただきます。ホップは薬草(ハーブ)として自然療法に用いられる植物です。これを材料とし、ビールをより健康的な飲み物にしてください。 なお、この時代の水は非常に汚いため、安全面を考慮してビールの飲用が推奨されています。断食期間中であっても、ビールは心置きなくお飲みいただけます。
(文・エピロギ編集部)
<参考>
野田浩資『中世の聖女、ヒルデガルトの薬草学をひもとく ドイツ修道院のハーブ料理』(誠文堂新光社、2016)
牛之濱久代・宮薗夏美「<資料>ヒルデガルト・フォン・ビンゲンの医療活動について ヒルデガルトのホリスティックアプローチの今日的意義」
http://ci.nii.ac.jp/naid/110000034854
聖パウロ女子修道会(女子パウロ会)公式サイトLaudate「修道生活豆知識Q&A」
http://www.pauline.or.jp/vocation/question.php
一般社団法人日本フィトセラピー協会直営校ソフィアフィトセラピーカレッジ公式サイト「ヒルデガルトの植物を学ぶ会」
http://www.sophia-college.jp/special/hildegard.html
シャルトル聖パウロ修道女会公式サイト
http://www.spc-japan.org/index.php
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