面接に不慣れな医師もこれで大丈夫!

医師のための面接対策ー転職成功のための5つの心得

 

採用面接に不慣れな医師達ー面接次第で転職後の待遇も変わる?

Tシャツにビーチサンダルで面接にやってきた先生。
面接前に受付に「飼い猫を連れてきたので預かってほしい」と言った先生。

そんな人いるの!? と思うかもしれませんが、どちらもれっきとした実話です。また、時々こういう先生方はいらっしゃるのです。

また……
ある先生は面接時、採用側の話を一方的に「聞いているだけ」という状態で、要所要所で何度か質問を促されても「特にありません」を繰り返していました。

しかし、その先生、ご自宅に戻った後、よくよく考えてみると、色々と気になる点が出てきました。そこで後日、複数回に渡って採用側に質問を繰り返していったところ、「何で面接時に言ってくれなかったのですか」と言われ、気まずい思いをしてしまう事になりました。そして、採用側先生側どちらからともなく、この医療機関への転職の話が白紙になってしまいました。

これらは程度の差こそあれ、「医師の採用面接」とはどういったものなのか、先生方があまりご存知ない事から起こってしまっています。

そもそも大学医局内にいる先生方にとって人事異動は、上席医師の“さじ加減”1つで決まってしまう事がほとんどで、面接自体が存在しないことも多いです。また、不満があっても大学医局を辞めない限り、自由に勤務先を変える事はできないので、諦めに近い気持ちで我慢する事もあるかと思います。

これまで面接という面接を経ずに勤務してきた医師にとって、そのイメージが湧かないのも無理はないでしょう。

しかし、大学医局以外での転職を考える場合には、「面接」は転職の成功にとって非常に重要な機会になります。ほぼ確実に採用されるという状況であっても、面接時に雇用側にプラスの印象を与えることができれば、場合によっては待遇アップにつながる事もあります。

また、面接で確認不足なまま転職した後で「こんなはずじゃなかった」と転職を悔やむこととなった先生のお話をいくつも耳にしてきました。そういった状況を踏まえ、この度、転職活動時に押さえておきたい、面接での5つの心得をまとめました。ご自身が転職される際に是非ご活用ください。

 

心得その1:面接はお互いが選び合う場と心得る

なぜ面接を行うのか?

「面接」というと採用側が「誰を採用するかを選ぶための場」と思われがちですが、実際はお互いが選び合う場です。必要以上にかしこまる事はありません。

採用側が面接の場で知りたいのは「人柄」と「今後のキャリアプラン」

一般に共通の知人や紹介会社を介して面接に至る事が多いかと思いますが、その場合先生方のプロフィール情報を採用側はすでに把握しています。そのため、面接の場で採用側が知りたいのは、先生の「人柄」や、「今後のキャリアプラン」です。

面接の場でかしこまって自分自身についてあまり話せないままでいると、結局採用側も判断しづらくなってしまいます。仮に転職できたとしても、面接時と実際に働いてからのギャップがあると、お互い「こんなはずではなかった」と後悔してしまうことになりかねません。ぜひ遠慮なく発言をしていってください。

遠慮なく発言する中でも相手への敬意は忘れずに

一方で、「自分が病院を選ぶ立場なのだ」という意識が強く、採用側を困らせるような言動をして試そうとするような態度で面接に臨む先生も時折見かけます。「どうせ自分は採用される」と思うとそのような態度になりやすくなりますが、仮に採用されたとしても転職後の待遇やその他の条件に響くこともあり、またその印象が思いがけない人にまで先生に関する悪い評判として伝わることもあります。

何より、採用側も忙しい中で時間を割いて先生に病院の魅力を伝えようとしています。遠慮せずに発言する中でも、相手に対する敬意は忘れないようにしましょう。

 

心得その2:面接に関する明確なイメージをもつ

面接に際しては事前に明確なイメージを持つことが重要です。しかし、経験がない為、「イメージが湧かない」「わからないことが多く不安」という先生もいらっしゃるかと思います。以下事前に想像しておくと、当日の流れがスムーズになる2つのポイントについてご説明いたします。

誰と面接することが多い?

面接官となるのは経営責任者(院長)+希望診療科の上席医師+事務長という場合が最も一般的です。大規模な医療機関の場合、理事長が加わったり、希望診療科の常勤医が全員出席する、というケースもあります。

相手の人数が多いと緊張してその場のペースに流されてしまい、言いたいことや質問したいこともできずに終わってしまうということもあるかと思います。あらかじめ「これだけは聞く・伝える」ということを決めておいて意識しておくようにしましょう。

また、紹介会社を通じた面接の場合、面接時にコンサルタントに同席してもらい、進行をサポートしてもらうこともできます。

面接はどういった流れで進む?

「面接では、何を話せばよいのでしょうか?」
「どういった流れで進むのでしょうか?」

これらは、よく先生方からいただく質問です。

面接の一般的な流れとしては大まかに以下のようになっています。

 1.採用側の関係者との対面での面接
 2.施設見学
 3.条件提示

先ほどお伝えした通り、採用側は事前に先生のキャリアを把握しているケースが多く、医療機関の雇用者側からは

「先生は〇〇大学出身ですか~。うちの病院でも同じ大学を卒業した先生がいますよ」
「今、〇〇病院に勤務されているんですね。あそこは忙しいんじゃないですか」

など、雑談を交えながら柔らかな雰囲気で進みます。先生は基本的にそれに合わせて、聞かれた事を気軽に答えていけば差し支えありません(製薬会社等、一部の企業は「自己紹介をお願いします」等、自己アピールを求められるケースもありますので、準備が必要です)。

採用側からは募集背景、施設概要や近隣の医療機関との連携、募集科目の立ち位置といった説明が行われ、随時先生にも質問を求めて、それに答えていくといったやりとりを繰り返していきます。

それから施設見学を行い、関連する医療従事者(関連科目の上席医師、看護師長、技師長、など)との簡単な顔合わせも適宜、行っていきます。
そして、最後に条件提示という流れになります。

ただし、これは面接の一般的な流れの一つに過ぎず、実際のところ法人の規模や状況に応じて変わってくるものでもあります。ご自身が受ける面接ではどのような流れになるのか、事前に確認できる場合はなるべく確認しておくようにしましょう。

特に紹介会社を利用している場合は、過去の面接事例や採用担当者へのヒアリングをもとに、コンサルタントから面接で何に特に気をつけるべきか事前に確認することができますので、不安や疑問に思うことがあれば積極的に聞いてみることをお勧めします。

 

心得その3:どんなに些細な事でも、遠慮なく質問する

採用側としては、先生方に安心して勤務してもらいたいという思いから、診療体制(主に対応してもらう疾患や患者数、他科・他病院との連携、患者急変時の対応)をはじめとして集患対策、設備など様々な説明を行います。

そこで少しでも「あれっ?」と思った点は、必ずその場で聞くようにしてください。雇用者側としては質問がない場合、「問題なく理解していただいている」と肯定的に捉えてしまいます。

冒頭でお伝えした通り、面接を終わった後で度重なる質問を繰り返してしまう場合、「面接時には納得してもらっていたのではないか、何でその時に聞いてくれなかったのか」と結果的に心証を損ねてしまう事があります。

先生ご自身が納得した上で転職を果たすためにも、「こんな細かい事を聞いてもいいのかな」などと思わず、どんどん質問していきましょう。

 

心得その4:待遇交渉で「譲れないこと」はしっかり伝え、確認する

待遇に関する話は、採用側が最後に(これまでの先生の経歴、待遇などを加味しながら)「このくらいでいかがでしょうか」と遠慮がちに話を切り出してくるケースが多いです。(中には院長自ら、「先生、正直なところいくらほしい?」と不躾な質問を投げてきて、周囲を困らせる話も耳に入ってきますが……)。

「お金に関する話をこちらからするのは、みっともない」
と感じられている先生方が時々いらっしゃいます。そして、そういった先生は「特に希望はありません」などと返答されています。

その場合でも勤務内容が大きく変わらない限り、現職(前職)から大きく下がる事はまずありませんし、大学の医局派遣から離れて民間の医療機関に転職する際などでは、大幅に年収がアップする事も少なくありません。

しかし、どうしても守りたい・譲れない希望がある場合は、事前に共通の知人や紹介会社などを通してしっかり伝えておく事が大切です。特に「現在の年収」と「希望する年収」が事前に採用側に伝わっていると、当日の流れがスムーズです。そうした事前の意思疎通を行った上で、面接の場でも必要に応じて、譲れない理由とともに希望を伝え、採用側に理解を求めていくことが大切です。

ご自身の待遇に関する希望が曖昧なままだと、それが原因で先生の希望に届かない待遇が採用側から提示される事もあり得ます。

転職は勤務条件を大きく改善させる絶好の機会でもあります。機会を最大限活かせるよう、面接の場やその前後での条件交渉では、自身の「譲れないこと」を明確にしてしっかり伝えましょう。また、その条件が転職後にきちんと担保されているかどうか、最終的な勤務条件を書面でも確認するようにしましょう。

 

心得その5:面接に相応しい服装も忘れない

いくら「共通の知り合いを通じて」面接の場が設けられたといっても、どんな格好でもいいわけではありません。「お互いが選びあう場」でTPOに則した格好でないと、先生の人柄を誤解され結果的に心証を損ねる事にも繋がりかねません。

一般的にオフィスカジュアルが望ましく、私達はよく「学会参加に準じた格好をお願いします」とお伝えしています。できるだけ、ジャケット着用を心がけましょう。また暑い季節でジャケット着用は厳しいと思われる際も、せめて襟の付いた服装が望ましいと言えます。

※Tシャツやハーフパンツ、サンダル、ピンヒール等、ラフすぎたりお洒落を前面に出した格好は絶対にNGです。

 

病院・クリニック・民間企業それぞれでの面接のポイント

ここでは、医師の転職先として多い、病院、クリニック、民間企業でそれぞれ押さえるべきポイントを挙げさせてもらいます。

病院

様々な医療従事者との面会があり、関連する施設、設備の見学などを行うことが多いため、トータルの所要時間を2時間前後はみていただきたいところです。

また、面接だけでは勤務イメージが付きにくい場合はお試しでの短期間の非常勤勤務を申し出る事をお勧めしています。多くの医療機関では受け入れており、もちろん給与はしっかり発生しますし、しっかり勤務イメージをもてた上で判断できます。

外科系の医師の場合、医療機関によっては試しに手術の助手などをやってみないかと、提案をいただくこともあります。転職前に上席医師のスタイルや他スタッフの連携も把握できるので、機会と都合が許す限りはお試しで勤務することをお勧めします。

クリニック

クリニックへ転職する場合、面接では今後の開業の予定を聞かれる事が多いです。しかし、クリニックに転職を希望している先生が将来、開業志向を持っている場合が多い事は、雇用者側もわかっています。自身の気持ちを曲げてまで、「開業のつもりはありません」と伝える必要はありません。

ただ、「直近(3年以内)」「転職先医療機関の診療圏内」という答えは、絶対に避けましょう。患者を引き抜かれると思われ、著しく心証を損ねる恐れがあります。

民間企業

製薬会社、産業医、保険査定医などに転職する場合は、希望される先生方が多いため採用側優位の「買い手市場」となり、厳しい視点で選考が行われます。何人もの医師が面接を受けて、ふるいにかけられることを覚悟しておく必要があります。

これまで医療機関で決定権の大きかった医師という立場から、採用側企業の一従業員にジョブチェンジするにあたっては、謙虚な姿勢が求められる事は言うまでもありません。また、採用側にアピールする材料として「退職理由」「今後のキャリアプラン」「自己PR」をしっかり整理しておく必要があります。

 

最後に

これまで医師の面接での心得についてお伝えしました。最後に、採用側の本音の声として一つ紹介させていただきます。

「もともと知人や紹介会社を通して、先生方の経歴はわかった上で面接をさせていただいているので、多くの場合、『ぜひうちに来てほしい』というスタンスでこちらは臨んでいます。

ただ、良い悪いではなく、これまで勤務されていた業務とは異なる点もたくさんあると思います。できる限り丁寧に説明するように心がけてはいますが、それでも充分とは言えず、こちらが気づいていない説明しそびれている点があるかもしれません。

お互いに納得の上で働いていただくために、何でも聞いてもらいたいと思っています。

また、待遇に関しては、すでに働いている先生方とのバランスを考慮すると、全ての希望を叶えられる訳ではありませんが、できる限りの“手段”を駆使させてもらっています。事務方と連携を取って別途、住宅手当や赴任手当を付与させてもらったり、先生のご希望に合わせて新しい機材を導入したりと、色々とやりかたはあります。

ただ、直接伝えにくい事もあるかと思います。ぜひ共通の知人や紹介会社を通じて、ご希望をおっしゃっていただきたいと思います。」

勤務をしている最中は、雇用側と面と向かって話す時間や機会はなかなか得られないかもしれません。また、得られたとしてもなかなか雇用側が耳を貸してくれないかもしれません。その意味で、面接という機会は自分の“譲れないもの”を雇用側に伝え、理解してもらう最大のチャンスといえます。

今回お伝えしたことが、先生の「納得のいく転職」の実現にとって少しでも参考になれれば幸いです。

 

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森川 幸司(もりかわ・こうじ)
大手の出版関連企業から転職して株式会社メディウェルに入社後、関東を中心にコンサルタントとして300人以上の医師のキャリア支援に従事する。「自分が先生の立場だったら、家族の立場だったら…」という想いから、「自分事としてとことん本気になる」ということを仕事上の信条とする。
2011年5月、ステージIVの大腸がんとそこから転移した肝臓がんの診断が下り、それ以降は手術と抗がん剤による闘病生活が始まる。肝臓がんの再発や肺への転移なども経験し、入退院を繰り返しながら、現在は管理部門に所属し他のコンサルタントの支援を行なっている。
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